南伊豆下田須崎港などから出船する島周りのキンメ釣りは、本格的な深場釣りが楽しめる。
深場用の大型電動リールに20本バリ仕掛けで狙うというまさにヘビー級の釣り。
ここでは激うまで2kgを超える大型の「メガキンメ」や一撃10枚オーバーなど、キンメファン垂涎のブランドキンメを狙う。
ポイントは新島沖の「トンガリ」と呼ぶ崖の場所がメイン。
取材日は西風の強風が吹いて出船も危ぶまれるような状況。
通常8投のところ6投での早揚がりとなったが、最大6点掛けにメガキンメ交じりと厳しい条件下ではまずまずだった。
下田須崎港の番匠高宮丸ではフルレンタルで挑戦する人や女性のファンも増えており、一人20枚前後は釣れることも多いから気軽に挑戦してほしいと小澤長夫船長は話す。
▲最近は女性のチャンレンジャーも増えている
出典:
「ここのキンメを食ったらほかには釣りに行けない」と、深場釣り師から絶大な人気がある南伊豆のキンメ。
地キンメとも呼ばれるが、釣り人的には新島キンメ、トロキンメのほうがとおりがいい。
とにかく脂の乗りは抜群で、ときにはメガキンメと呼ばれる2kg超の特大サイズが釣れるのも魅力だ。
新島キンメとひと口に言うものの釣り場は広大で、ポイント間の移動に30分近くかかる場所もある。
主なポイントでも「トウフ」、「トンガリ」、「タイラッパ」などその根の形状からきていると思われるものから、「70、80」などGPS以前のロラン時代の数字からきていると思われるものまで数多く、各船とも潮の流れなどの状況に応じて釣り場を決めている。
釣り場の水深は300mから500mほどで、海底形状はほぼ根掛かりのない平たんな場所もあれば、別名「壁」とも呼ばれるほど切り立った急峻なポイント「トンガリ」みたいな場所もある。
一方で外房方面では勝浦~銚子沖にかけてもよい漁場だが、勝浦~銚子沖のキンメ釣り場には残念ながら遊漁船は入れない。
しかし片貝港や大原港から出船する片貝海溝では遊漁船も狙え、以前はアコウ狙いの釣り場だったのだが、ここ数年キンメもけっこう交じるようになった。
最近ではけっこうどころか「キンメが途中で食ってアコウのタナ(底付近)まで仕掛けが落ちない」なんてうれしい悲鳴も聞かれることもあるほど魚が増えている。
ハリ数は20本までレンタルでも挑戦可能
タックル&仕掛けの概略は図のとおりで、本格的な深場仕掛けとなる。
深場ビギナーならば南伊豆エリアのほとんどの船で貸し道具、仕掛けの用意があるのでこれを利用するのが便利。
今回取材した南伊豆下田須崎港の番匠高宮丸の場合、エサ付きの15本バリ仕掛けが1組1100円、20本バリ仕掛けは1500円、深場専用竿&電動リール、ロッドキーパー、エサ、仕掛け8組のオール込みのセット乗船料は3万1000円だ。
仕掛けを自作する人は、遊漁船ではハリ数20本以内、サンマエサ禁止のルールがあるのでご注意を。
最近は以前と違ってハリ数分キンメが付くなんてことが少なくなったので、私は15本バリ仕掛けを使用し、ハリ数の少ない分は枝スの間隔を2m以上と長く取り、20本バリ仕掛けと同じ距離のタナを広く探れるようにしている。
ちなみに枝間2・15m、ハリス68cmで作成すると、50cmの掛け枠に綾掛けでキレイに収まる。
またオマツリして上がってきたときに、自分の仕掛けに食ってきたキンメか判別できるように、ハリのチモトをマニキュアなどで色付けしておくのもおすすめだ。
こうしておけばだれのキンメかすぐに分かる。
船宿仕掛けには事前にエサが付いているが、仕掛け持参なら釣り場到着前に仕掛けのハリにエサを付けておく。
番匠高宮丸の仕掛けにはカツオのハラモや鮭皮が装餌されているが、そのほか定番としてはイカやサバの切り身も食いのいいエサで、最近は青く染めたものが人気だ。
また、ホタルイカの半割も特エサとして使う人もいて、こちらも青染めが効果的との話を聞く。
どのエサも端の中央部にチョン掛けでOKだ。
投入、巻き上げは船長の指示に従う
南伊豆でのキンメ釣りは右舷片舷での釣りとなり、仕掛けの投入、巻き上げは船長の指示に従い順番に行う。
投入はミヨシから。
竿よりもミヨシ側に立ち、掛け枠を右手、オモリは左手で持ち、合図でオモリを落とすとパラパラとエサ付きのハリが海中に沈んでいく。
注意点としては仕掛けの接続時、道糸や掛け枠に絡みがないことを十分に確認しておくことで、投入はビギナーには緊張の瞬間だが、一度経験すればなんということはなく簡単だ。
着底は竿先や糸の出に注意していれば大抵は分かるが、潮が速いときにはごくわずかな変化しか出ないときもあり、これを見逃すと潮に押されて道糸はどんどん出ていってしまうので要注意。
不安な場合は周りの人(とくに自分よりも先に投入した人)に「何mくらいで着底しました?」、「何mくらい出てます?」など聞いて参考にするとよい。
仕掛け着底後の操作も船長の指示に従う。
潮具合やポイントの形状によって「オモリをトントンさせながらアタリを待って」とか「糸を送りながらアタリを……」といった指示が出るのでそれに従う。
基本的には潮が素直ならばオモリトントンでアタリを待ち、アタリが出た時点でオモリを海底にベッタリ着けて糸を送り込んでいく。
ただやみくもに糸を出すのではなく、アタリを聞きながら枝間の分だけ少しずつ糸を送るのがコツで、この巧拙で何枚付けられるかが決まり、釣果に差が出る腕の見せどころ。
番匠高宮丸の小澤長夫船長は、「カワハギだって仕掛けが張っているよりもたるませていたほうがエサを素直に食うでしょ?それと同じ」と説明する。
ようは仕掛けがフワッとたるんだ状態を作り続けるイメージだ。
潮が速いときは着底後にどんどん糸を送りながらアタリを取っていく。
潮がもの凄く速かったり二枚潮だったりするとアタリもほとんど取れないが、そんな場合も構わず糸を送ること。
逆に潮が流れないときには糸を送り込み過ぎると、海底で仕掛けが団子状になり食わなくなるので注意が必要だ。
巻き上げも船長の指示による順番だが、これは潮具合や魚の付き具合でトモからだったりミヨシからだったり、その時どきの状況による。
巻き上げた仕掛けは慣れないうちはとにかく船内にたぐり込んで、1回ごとに新しい仕掛けにするほうが無難。
慣れてくれば空振ったときなどはハリを船ベリに並べて置き、潮回りの時間を利用し掛け枠に巻き直して再利用できるようになる。
なおキンメの口はもろくバレやすい。
しかも水圧変化に強く海面でバレると海底に潜っていってしまうので、隣人同士でタモをアシストする。
このときキンメをタモに入れるのではなく、バレた場合に備えキンメの下にタモを構えるだけでよい。
タモに入れてしまうとハリがタモに絡み回収に手間取る。
ちなみに片貝海溝のキンメ仕掛けも南伊豆とほぼ同様でいいが、ハリ数は10~15本とやや少なめ。
またアコウやアブラボウズの可能性も高いため、ハリスは16号以上が望ましい(アブラボウズ用に一番下バリをハリス30号、ハリは太軸の30号などにしておくのも手)。
南伊豆同様右舷片舷での釣りとなるが、左舷で釣りをする船もある。
また着底後の仕掛け操作も基本的にアタリがあったらそのままのタナで多点掛けを狙うか、あるいは道糸を出しても南伊豆ほど伸ばさず張りながら糸を送っていく程度を指示されることが多い。
いずれの場所も釣り自体はそれほど難易度の高いものではないし、ビギナーも入門しやすくなっているので、ぜひチャレンジを。
1回でどハマリする可能性があるのもこの釣りである。
▲投入は竿のミヨシ側に立って行う
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投入時の必需品
道糸がたわんでブラブラしていると仕掛け投入時に絡むことがある。
これを防止するために洗濯バサミを竿の一番手前のガイド付近に取り付けておき、ヨリ取りリングなどを挟んでおくと道糸が安定する(投入時にはパチン!と自動で外れる)。
とくに風が強いときなどには重宝する便利グッズだ。
▲100均でも材料がそろう
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強風&食い渋りで苦戦も多点掛け&メガキンメ健在!
暮れも押し迫ってくると南伊豆のキンメ船は正月用の魚を求めるグルメファンで賑わいを見せる。
南伊豆下田須崎港の番匠高宮丸も年末は連日満船の人気ぶりだった。
当日は西風で昼前から強くなる予報。
「風が上がってくるのが早いと早揚がりになるかもだけど行ってみましょう」と5時過ぎに出船した。
西風が追い風となって航行中はさほど揺れなかったが、釣り場に着くとやはりけっこう吹いている。
それでもなんとか釣りは可能な状況で、全員の準備が整った後、協定時間を待ってから合図が出て、ミヨシから順に投入が始まった。
水深は450mとのことで着底まで数分、全員が着底を確認し糸フケを取ってアタリを待つ。
しばらくするとアタリが出たらしく「アタったよー!」と船長に合図を送る方もいる。
船長からは「アタリが出たら仕掛けをたるませていく感じで糸送って」と指示が出て、そのまましばらく流し込んだ後、「じゃあトモから順に巻いて」と巻き上げの合図が出る。
この日は慣れたお客さんが多く、お互いに「今、何mまで出てます?」「じゃあ480mになったら巻き始めるので教えてください」と連携を取っている。
深場釣りでのオマツリは付きもの。
仕掛け同士がオマツリすると面倒だが、道糸と仕掛けならばそれほど苦労せずに外していける。
そのため仕掛けの全長分の30mほど差を付けて巻き上げたいのだ。
リールの違いや魚の付き具合でも巻き上げ速度は変わってくるので、巻き上げ途中も隣の人との残り距離の確認も欠かさず行いたい。
今回は巻き上げもスムーズにいって、半数以上の方がキンメの型を見た。
0.6kg級の小型もいたがトモ2番の方が上げたのは2kg近い良型だった。
2投目は着底と同時にアタリが出て、けっこうなアタリ具合の人もいたが、巻き上げてみると全員が1枚ずつで「1枚だけのアタリじゃなかったけどな」と首をかしげる。
▲2kgクラスの大型は脂の乗りがヤバい!
出典:
3投目にクライマックス
3投目は根の頭から狙うのか水深350mとのこと。
「糸を張ってアタリを待って。オモリが浮いたら糸を出して」と指示が出る。
右トモ2番に明確なアタリが出て、船長からは「アタリに合わせて糸を出して」の指示が飛ぶ。
そして巻き上げ。
オモリは切れたようでたぐる仕掛けは沖へと払い出しまるでアコウ釣り状態。
そしてアコウのようには浮かないが赤い影が点々と沖へと続く。
1枚また1枚と回収してお見事6点掛けだった。
4投目は空振り。
5投目はトモ2番、3番で良型のダブル。
そして当日の紅一点、女性キンメ釣り師も荒れた海の中3点掛けと気を吐く。
仕掛けを入れるたびにポツポツとはアタる展開だったが、風はどんどんと増してかなりシケてきた。
「この1投で揚がりましょう」の6投目は、430mの着底後即アタリが出た。
しかもほぼ全員の竿がクンクン!とアタリを伝えている。
期待の巻き上げだったが、上がってきた仕掛けには、二人に小型のキンメが付いていただけ。
「食いが渋いと掛かりどころが悪くバレちゃうんだよねー」と船長も苦笑いだ。
釣果は0.5~2kgを1~12枚と、前日まで連日トップ25~30枚ほどの釣果だったのに比べ厳しいものとなった。
荒れた海にまして潮がまったく流れなかったのがその原因のよう。
アタった後の糸の出し方でも顕著に釣果に差が付いた一日だった。
番匠高宮丸では今後も新島キンメを中心に、式根島沖への遠征キンメも出船する。
深場釣り本番ともいえる時期を迎えるだけに今後に期待したいところだ。
INFORMATION
南伊豆・下田須崎 番匠高宮丸
0558・22・0725
備考=予約乗合、4時半集合。
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隔週刊つり情報(2024年2月1号)※無断複製・転載禁止