ヨッシーこと吉岡進がエサ、ルアー釣りを問わず、様ざまな釣り物にガチで挑戦していく連載「ツリガチ!」。
第19回は内房勝山沖のティップランエギング。
今シーズンもまずまず順調で、11月中旬に入ってからも0.5~0.8kgを中心に1kg級を交えていい日はトップ10杯に迫る釣果が上がっている。
11月下旬に釣行したのは内房勝山港の勝山かかり釣りセンター。
和田五郎船長が目指した釣り場は勝山沖の水深20~45mで、根周りやカケ上がりなどを狙っていく。
Profile
よしおか すすむ
1982年生まれ。
ヨッシーの愛称で親しまれている。
一つテンヤマダイ、ライト系オフショアルアーを得意とする。
ジャッカルソルトプロスタッフ、シーガーインストラクター。
ティップランエギングの釣り方イメージ
しっかりと底を取ることが大切。
底の取り方は海面にラインを出しつつ餌木を落としていき、ラインの出が止まったら着底となる。
着底したらすぐにリールを巻きながら餌木をシャクる。
シャクリの回数は7~8回が基本。
その後、8~10秒ほど止めてアタリを待つ。
アタリがなければ再着底させて巻きシャクリ。
まずは港前の浅場からスタート。
片舷に並びドテラ流しで広く探っていくが、モーニングチャンスは残念ながら不発に終わる。
勝山沖の水深40~45mのポイントへ移動し再開。
しばらくアタリがない時間が過ぎていく中、ついにヨッシーがアタリをとらえた。
即合わせを入れてフッキングに成功し、値千金となる1kg級のアオリイカが取り込まれた。
終盤、高橋親子のダブルヒットで船上が盛り上がりを見せると、ラストは蒼一郎が1杯追加してフィニッシュ。
シャクリの回数や餌木選びなど様ざまなアプローチで本命を手にしたヨッシー。
詳しくはこのあと!
その刺身はしなやかにしてほどよい歯応え。
かむほどに口中に広がる上品な甘味は、イカの刺身の中でも極上とされる。
「イカの王様」とも称されるアオリイカは、1年で寿命をまっとうする年魚と言われている。
春から夏に生まれるアオリイカの子どもは、9月ごろには「コロッケ」と言われるちびっ子サイズになる。
コロッケは秋の深まりにつれてグングン成長し、遊泳力が高まり、行動範囲が広がる。
そしてハンバーグになり、ステーキになり、ワラジになるのだ。
成長期まっ盛り。
捕食行動は活発で、なおかつ群れを形成している。
つまり、釣りやすい。
「秋はアオリイカの数釣りのシーズン」と言われるゆえんだ。
船から餌木を使ってアオリイカを狙うティップランエギングにおいても、数が釣れ、しかも良型も交じり始める晩秋は、まさにハイシーズンである。
「ふっふっふ……」
「釣れそうだよね……」
「むっふっふっふ……」
11月28日、内房勝山港の勝山かかり釣りセンターに集結したツリガチ取材班の脳内は、完全にトラタヌすなわち取らぬ狸の皮算用状態だった。
今回は、ジャッカル・プロスタッフのヨッシーこと吉岡進さんをリーダーに、釣友のイチロウこと鹿島一郎さん、ライターのタカハシゴー、その息子であり本誌「親子でゴー」連載でもおなじみの高橋蒼一郎の計4名が、アオリイカとのガチで負けられない戦いに挑む。
ヨッシーが、秋深い空を見上げた。
早朝の勝山上空に朝日はなく、重い雲に覆われている。
「悪くはないんだけどね」とつぶやく。
目がいいアオリイカは、空が暗いと警戒心が薄らぐ。
「ただ、暗ければいいってものでもないんだ。アオリイカが餌木を発見してくれないことには、話は始まらないからね……」と、緊張を解かない。
「ティップランは、そんなに難しい釣りじゃない。簡単、と言ってもいいと思う。でも、油断はできないんだよ」
当たりの餌木やカラーを探すのもこの釣りのだいご味
出典:
餌木を落とし、シャクリ、合わせる。 決して難しい釣りではないが……
簡単。でも、油断はできない。
今回のツリガチは、そんなティップランの本質を体現したかのような半日となった。
タックルと釣り方は、ヨッシーが言うとおり、非常に簡単だ。
まずはタックル。
ヨッシーとイチロウが使用しているのは、ジャッカルの一つテンヤ竿だ。
「ほかに、シロギス竿やアジング竿でも代用できる。もちろん専用ロッドがいいけど、手持ちの竿でなんとかなるよ。ちなみに今回のおれは、完全に一つテンヤタックルのまま。この気軽さがいいんだ」
タカハシゴー親子は、今回のティップランにのぞむにあたり専用ロッドを新調した。
今までは一つテンヤ竿で代用していたが、ティップランの面白さにハマり、ついにガチになったのだ。
「正直なところ、一つテンヤ竿でも、全然まかなえていたと思う」とタカハシゴーは言う。
「でも、オレは自分の腕の未熟さをカバーしたいし、蒼一郎は自分のイメージどおりのティップランを目指したい。オレたち親子にとって、ティップランはガチで取り組みたい釣りの一つ。ということで、専用ロッドを用意してみた!」
スピニングリールはシマノの3000番。ヨッシーは0.8号のPEに2.5号のフロロカーボンリーダーを直結し、スナップを介して餌木を付ける。
つまり、糸の先に餌木だけ。
実にシンプルな仕掛けである。
餌木を船下に落とす。
船は、風と潮まかせのドテラ流しだから、着底は少し分かりにくい。
糸が止まった瞬間を見逃すと、糸が出続けてしまう。
あえて海面でPEラインをフケさせ、円を描くように浮かせてやると、糸が止まったかどうかが分かりやすい。
糸の動きを注視して、着底を見極める。
餌木が着底したら、1~2巻きして根掛かりを回避し、数回シャクり、竿先を8~10秒ほどピタッと止める。
その間に、竿先がフッと戻ったり、クンッともたれるような変化が現れれば、それがアタリだ。
ビシッと即合わせして、アオリイカをカンナに引っ掛ける。
「ティップラン」というネーミングから分かるように、とかく竿先に意識を集中させる釣りなのだ。
アタリがなければ餌木を再着底させる。
船が速く流れているときは糸がどんどん斜めになってしまうので、落とし直さずに回収してやり直したほうがいい。
ヨッシーは、「言葉にすると煩雑そうな感じだけど、ようするに餌木を落とし、シャクリ、合わせるだけ。決して難しい釣りじゃないよ」と強調する。
だが、しかし……。
ヨッシーのタックルは一つテンヤ用。餌木は30g、カラーは光量が少ない深場でもアピールするシルエットがはっきり出る赤テープをチョイス
出典:
釣り開始から2時間が経過。 ひたすら餌木をシャクリ続ける
6時に港を離れ、10分後には釣り開始となった。
水深は20~25mほどで、和田五郎船長は根周りやカケ上がりを狙っている。
序盤、餌木の着底も分かりやすかった。「永遠のビギナー」として知られるタカハシゴーでさえ、明らかに着底が分かる。
「これは釣りやすい!」と無邪気に喜ぶタカハシゴー。
しかし、手練れのヨッシーと蒼一郎、そしてイチロウは悩ましげである。
着底が分かりやすいということは、船はほとんど動いていない。
つまり潮が流れていないということであり、恐らくアオリイカの活性は低いのである。
「これは厳しいかもしれない」
不安を打ち破ったのは、釣り開始から15分後、静かな勝山沖に響いた「んっ!」というかけ声とビシッという合わせだった。
イチロウである。
のけぞるような合わせを見せたが、残念ながら空振り。
アオリイカは乗らなかった。
「竿先が戻るようなアタリだったから、アオリイカだとは思うけど……」と、半信半疑である。
最近の内房は、サバフグが非常に多い。
この日も、ヨッシーがたびたびアタリを出すものの、「たぶんサバフグだな……」と首を傾げていたし、蒼一郎はプッツリとPEから切られることがあった。
実際、後にヨッシーがサバフグを仕留めてもいる。
また、五郎船長いわく、「この間はショゴ(カンパチの若魚)が餌木を食ってきたよ。丸飲みだった」とのこと。
餌木は、サバフグやフィッシュイーターたち、つまり魚も刺激しているようだ。
だが、我われツリガチ取材班の狙いは、あくまでもアオリイカである。
ひたすら餌木をシャクリ続ける。
1時間……、2時間……。
時が過ぎていく。魚らしきアタリと、フグとしか思えない糸切られ事案は頻発するも、肝心のアオリイカが姿を見せない。
自らも釣り好きの五郎船長が、「どうもなんねーなー、こりゃ」とボヤきながらも、どこかに潜んでいるはずのアオリイカを求めて、懸命の操船を続ける。
絶対に負けられない戦いだ。
サバフグが邪魔をして、同船者の中には糸を切られた方もいた
出典:
1杯を釣ったうれしさよりも、 状況の渋さが気になるところ
ツリガチ取材班も全力である。
ティップランはシンプルな釣法だが、工夫の余地が多々ある。
シャクリの回数を変えれば、餌木のポジションが変わる。
シャクリを止めてピタッと餌木をポーズさせる層が、ちょうどアオリイカの泳層になれば、チャンスは増えるだろう。
シャクリのスピードやシャクリ幅もポイントだ。
ヨッシーは餌木がほどよくダートするように、ゆっくりめ、かつ小さめのシャクリをしている。
蒼一郎はヒュンヒュンと高らかに音を立てながら、鋭いシャクリだ。
いずれにしても、シャクリのあとにピタリと餌木が止ティップランはシンプルな釣法だが、工夫の余地が多々ある。
シャクリの回数を変えれば、餌木のポジションが変わる。
シャクリを止めてピタッと餌木をポーズさせる層が、ちょうどアオリイカの泳層になれば、チャンスは増えるだろう。
シャクリのスピードやシャクリ幅もポイントだ。
ヨッシーは餌木がほどよくダートするように、ゆっくりめ、かつ小さめのシャクリをしている。
蒼一郎はヒュンヒュンと高らかに音を立てながら、鋭いシャクリだ。
いずれにしても、シャクリのあとにピタリと餌木が止まるように心がけている。
餌木は、カラー違いやラトルの有無など、多くの種類がある。
30gが基本だが、ヘッドシンカーを装着して重さを変えるのもアリだ。
シャクリの回数を変え、シャクリの方法を変え、餌木を替え……。
考えられるだけのトライを4人で繰り広げているから、結果的に、かなりのパターン数で試行錯誤が行われているはずだ。
しかし、勝山沖の海はなかなか応えてくれない。
「……ッ、シャ~!」
満を持して大きな合わせを入れたのは、ヨッシーだ。
いつしか船は、40mからカケ上がるポイントを攻めていた。
ズッシリとした重量感と力強い引きに、「これはアオリイカだと思うよ」と、ヨッシーは確信している。
竿を大きく曲げながら、船から少し離れた海面に茶色っぽい姿を見せたのは、まぎれもなくアオリイカだった。
「やった!」
「すっげえ!」
「マジか!」
本来は数釣りが見込めるハイシーズンだが、こうも渋い状況では1杯が本当に大切だ。
サッカーW杯で日本代表が貴重な1点をもぎ取った瞬間のように、大歓声で船が揺れる。
釣り開始から3時間50分、ついに我われツリガチ取材班の前に姿を見せたアオリイカは、釣り上げられた怒りと困惑から様ざまに色を変えていた。
ガチな美しさを目の当たりにできるのは、釣り人の特権である。
「着底から8シャクリして、餌木を止めたところですぐにアタリが出たんだ」とヨッシー。
「合わせたけど掛からなかったから、余計な糸フケを取っていたら追い抱きしてきた。やる気はあるんだと思うけどね……」
1杯を釣ったうれしさよりも、状況の渋さが気になるヨッシーである。
ヨッシーが釣ったにもかかわらず、だれにもアタリが出ない。
アオリイカは群れていてもおかしくないのだが……。
最初に竿を曲げたのはヨッシー。1kg級のアオリイカを釣り上げた
出典:
待望のアオリイカを釣り上げて喜ぶヨッシーと、船中1杯目が釣れてひと安心する和田五郎船長
出典:
ワールドカップは4年に1度だがティップランはまたすぐできる
12時半ごろ、着底がよく分からずなんとなくシャクっていたタカハシゴーが、「んん~?」と首を傾げた。
「ゴーさん、それイカだよ!」とヨッシーが叫ぶ。
「う、うん、イカかも」と半信半疑でリーリングするタカハシゴーの横で、蒼一郎がビシッと合わせを決める。
ここへきて、まさかのWヒットである。
まずタカハシゴーがハンバーグ級を上げ、直後に蒼一郎が1.3kgのナイスサイズをキャッチ。
メスとオスのペアだったようだ。
着底が分からずにいたタカハシゴー。
たぶん餌木は底付近を漂っていただろう。
そして蒼一郎の餌木にアオリイカが抱きついたのは、根掛かりが外れた瞬間だったそうだ。
ボトムだ。
今日のアオリイカはボトムにいる。
総員、シャクリ回数を3回ほどにまで減らす。
しかし、やはり活性は高くないようで、続かない。
13時半、「最後の流しにしましょうか~」という五郎船長のかけ声の直後、ボトム付近を攻め切った蒼一郎が1杯を追加したが、それまでだった。
結果は、ヨッシー1杯、蒼一郎2杯、タカハシゴー1杯、そして手練れのイチロウがまさかのオデコ。
シブいときのシブさは、魚以上に徹底している。
最後にヨッシーが、厳しかった戦いを振り返る。
「あまりにアタリが少なくて、ヒントがなかったね。普通ならだれかが釣ればバタバタッと続くものだけど、それもなかった。それでも船中4杯だから、まぁなんとか形にはなった……かなあ?(苦笑)繊細なアタリを取って、バシッと掛けた瞬間は『やってやったぞ!』と思えるのがティップランの面白さ。本来はいい時期だし、リベンジしたいね」
4年に1度のW杯と違い、ティップランはまたすぐできる。
1杯を釣ったうれしさよりも、状況の渋さが気になるヨッシーである。
ヨッシーが釣ったにもかかわらず、だれにもアタリが出ない。
アオリイカは群れていてもおかしくないのだが……。
ワールドカップは4年に1度だがティップランはまたすぐできる。
沖揚がり直前にアオリイカを乗せた蒼一郎
出典:
終盤になるとアタリが増えてきた
出典:
船宿インフォメーション
内房勝山港 勝山かかり釣りセンター
0470・55・2675
備考=予約乗合、6時出船。ほかカカリ釣りのクロダイも。
クロダイのカカリ釣りで有名な同宿だが小型船でティップランエギングのほかスーパーライトジギングなども楽しめる
出典:
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隔週刊つり情報(2023年1月1号)※無断複製・転載禁止