関東周辺のアオリイカ乗合は「ティップランエギング」と「中オモリ式」の二通りがある。
ここで紹介するティップランエギングは、PE0.6~0.8号の道糸と2.5~3号のリーダーの先に30~40gの専用餌木を付け、底ダチを取ってシャクり、アオリイカのアタリを見て合わせて掛ける釣り。
今年は10月より内房富浦や三浦半島東部、南部にてスタート。
下旬には内房勝山、三浦半島西部、相模湾でも開幕した。
先行するエリアでは順調な乗りを見せていて、取材した三浦半島宮川港の二宮丸では城ケ島~剣崎沖の水深25m前後を狙い0.3~0.8kg級がトップ10杯前後、好日には20杯以上と好調な釣れ具合。
迎える11月は狙う水深も浅く、育ち盛りのアオリイカが餌木へ好反応を示す好期。
本編では「聞き誘い釣り」を駆使する中村勇生さんに聞いたティップランエギングのタックルや釣りなどを紹介する。
▲ドテラ流しで片舷に並んで釣るティップランはほとんど席の優劣なく釣れる
出典:
ティップランは、餌木で底ダチを取り、穂先(ティップ)に出るアタリを視認して掛ける釣り。
船は横流しで釣り人は片舷に並ぶため席の優劣はほとんどなく、釣果の差はほぼ腕の差と言っていい。
今回中村さんに教わったのは「聞き誘い」釣り。
どんな釣り方なのかを理解するには、まずはティップランの基本を知っておく必要がある。
基本的な釣り方は図のとおり。
餌木が海底に着いたら巻きシャクリを5~6回行いステイ。
シャクリの動きでイカに餌木をアピールし、止めたときに抱き付かせるイメージ。
このとき餌木を動かさないことが大切で、餌木が上下したり横振れするとイカが警戒して触ってこないと言われている。
ところが、中村流の「聞き誘い」は止めたあとに竿で餌木を引っ張り上げて動かしてしまう。
ティップランの釣り方としては基本から外れているが、中村さんはこれまで聞き誘い釣りで好釣果を上げ続けており、今では聞き誘い釣りをティップラン釣法の一つとして組み入れている人も少なくない。
▲アベレージは0.3~0.5kg前後
出典:
タックルはティップラン専用竿餌木は重いほうがいい
中村さんのタックルは竿がラグゼ・EGTRX。
取材時に使用したのはS65M+-solidで、バットパワーはありながらも穂先は繊細なタイプが聞き誘い釣りには向いているとのこと。
リールは軽量な小型スピニングで、餌木の回収が楽に行えるハイギアタイプ。
ラインはPE0.6号の道糸に2.5号2mのリーダーがベースで、根掛かりが多い場合はPE0.8号にリーダー3号と太くする。
餌木はヤマシタの「エギ王TR」27gもしくはラトル入りの「エギ王TRサーチ」30g。
聞き誘いでは餌木を引っ張り上げるため、餌木の重さがアタリの出方を大きく左右することは少ない。
重いほうがしっかりと潮に乗って動かしやすくなる。
重さ調整用のシンカーは基本的に15gをプラス。
餌木を引いたときに重いと感じれば10gへ、軽いと感じたら20g、30gと重くしていく。
たとえば取材した三浦半島宮川港の二宮丸では目下のところ剣崎沖の水深25m前後を狙っているが、このポイントは潮が速いときがあるので40gのシンカーは必須となる。
餌木のカラーセレクトに関しては、朝イチはラトル入りのオレピンケイムラからスタートするという。
派手なカラーでまずは活性の高いイカがいるのかリサーチ。
日中で潮が澄んでいるときはナチュラル系の金テープが有効になるといい、日中でも潮が濁っているときは赤テープや紫テープなどアピール力の強いカラーを使う。
餌木のシルエットがはっきり出てイカが餌木を見つけやすくなるそうだ。
聞き誘い釣りは4回シャクって止め
ここからは具体的な聞き誘い釣りを説明していく。
底ダチを取るのは基本の釣り方と同じ。
餌木を投入したら道糸のフケを出しながら餌木を沈めていく。
このとき道糸を出し過ぎないよう気を付けよう。
竿であおって道糸を出したらリールのスプールを押さえて道糸が張る前にまた竿をあおって道糸を出していく。
餌木が着底すると糸がフケたままになるので、リールのベイルを戻して素早くハンドルを数回転させて道糸を張る。
これで餌木が海底から少し浮き上がり、根掛かり防止になる。
ここから巻きシャクリでイカがいるであろう層まで餌木をシャクリ上げてアピールする。
通常は6回前後になるが、聞き誘いの場合はそれよりもやや少なめの4回くらい。
誘い幅を考慮してイカがいるであろう層のやや下でピタリと止める。
このとき、上を向いていた餌木がシンカーの重さでカクンと頭を下げるので、それを確認してから聞き上げる。
シャクリの動きと誘いの間に「静」と「動」のメリハリをつけることでイカにリアクションバイトさせるイメージだ。
シャクったあと止めの間を入れずに聞き上げると、中村さんの経験上アタリはほとんど出なくなるという。
聞き上げは水平へ向けた竿先を竿一杯まで立てる。
この間わずか約2~3秒。
早過ぎるのではと思えるくらいだ。
以上が聞き誘い釣りの一連の流れになる。
アタリは聞き上げ中に竿先を引っ張るように出る。
通常の釣り方では竿先を押さえ込むほかフワッと持ち上げたり、道糸が震えるようなアタリもあるが、餌木を引っ張り上げている聞き誘い釣りでは、ほとんど竿先を引き込むようなアタリしか出ないという。
アタリが見えたら即合わせ。
テンションが張っているだけにイカが違和感を察知して餌木を放すのも早いため、しっかり合わせないと掛かりにくい。
聞き上げている間はいつでもアタリが出るという意識を持っていると掛け遅れを減らすことができる。
聞き誘い釣りを2セット繰り返してアタリがなければ回収して再投入する。
この繰り返し。
聞き誘い釣りをするうえでも、イカを乗せるときは安定した餌木の姿勢をキープすることが大切。
通常の釣り方でシャクリの後にステイさせるときと同じで、餌木が不安定に動いているとイカが触ってこない。
安定させるコツは二つ。
一つは、聞き上げるスピードを速くすること。
最初はやはりイカが乗るかどうか不安なため、ゆっくりになりがち。
しかしそれでは、逆に餌木がブレやすくなる。
もう一つは、竿を強く握り過ぎないこと。
力が入り過ぎて動きのブレにつながる。
聞き誘い釣りのもう一つのポイントが誘い幅。
前述のように水平へ向けた竿先を竿一杯まで。
竿を立て過ぎるとアタリがあったときに合わせしろを取れないので、慣れないうちはこれくらいでいい。
だが中村さんの釣り方を見ていると、反り返るまで聞き上げている。
これは、誘い幅が長いほうがイカが触りやすくなるからという。
ただし、誘い切ったところでアタリが出てしまうと竿で合わせることができないためリールで巻き合わせている。
そのため中村さんは聞き上げるときに常にハンドルを握っている。
そのほか応用テクニックとしては、周囲のスペースに余裕があるときは竿を真上だけでなく、横に引くことも。
こうすると餌木は一定の層を横方向に引っ張られるように動く。
聞き上げる方向を変えてみて、イカが餌木のどの動きに反応するかを見極めているという。
聞き誘い釣りはティップラン釣法の誘いの一つで、万能ではないと中村さんは言う。
しかしアタリの分かりやすさ、合わせて掛けたという満足感をより感じられるのもこの釣り。
慣れるまでは難しい面もあるかもしれないが、ティップラン釣法の引き出しの一つとして、聞き誘い釣りにトライしていただきたい。
▲聞き誘い釣りで5杯をキャッチ
出典:
INFORMATION
三浦半島・宮川港 二宮丸
090・8813・6049
備考=予約乗合、5時集合。
仕立ほか平日リクエスト乗合受付
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隔週刊つり情報(2023年11月15号)※無断複製・転載禁止