タチウオ、マダイ、トラフグときたら、5月以降の最注目ターゲットはズバリ「マダコ」だ。
東日本最大のマダコ釣り場・東京湾の口開けは今年も富津から。
4月29日、大型連休とともに幕を開けた。
解禁当日は南西強風の荒天で早揚がりながら、釣れ具合はご覧のとおり。
川崎丸では最大3.5kgを筆頭に35人で69杯が釣り上げられた。
ここ数年の開幕と比較すれば、型が大きく、ポイントに濃密にマダコが着いている印象。
石井広一船長も「ここ10年で最高かもしれない」と好感触だ。
ちなみに当日は第二海堡や周辺の風裏を探っただけでこの釣果。
年末まで続くであろう東京湾マダコ2023シーズン、好調を期待しないほうが無理というものだ。
(左)当日めでたい初タコを釣り上げた亀島さんは7杯を釣りトップ(右)2.3kgを始め釣れるたびに大型。女性大歓迎モードでした
出典:
謎である。
わずか1m、いや、海中では50cmも仕掛けが離れていないかもしれないのに、片や大ダコ含め5杯も6杯も釣れて、片や何も釣れない。
急速に進歩するAIが人間社会に影響を与える現在、船釣りも理論と釣具が進歩して久しいが、やはり面白さの源泉にあるのは不確実性、つまり謎であることを思い知らされる。
第二海堡で徒競走?
富津のマダコ釣りは例年、大型連休の始まりとともに解禁する。
今年は4月29日の土曜日。
富津港の川崎丸では今年も予約受付開始早々に定数に達し、当日は55人が2隻に分乗、ていねいなレクチャーの後に出船した。
6時、いつものように第二海堡周りから探っていく。
数年前の大規模改修以来、解禁のころは今イチ数が釣れない印象を持っていたのだが、今年はちょっと様子が違った。
根周りを狙う海堡ではテンヤは投げずに真下に下ろし、糸が斜めになったら入れ替えるのが基本だ。
石井広一船長のアナウンスで第2川崎丸の両舷に30本の手釣り糸が立つと、やにわに右胴の間の方が大きくたぐり始めた。
これはバレてしまったものの、すぐに左胴の間、右胴の間で合わせ、たぐり、バラシが続き、ついに船中1杯目が上がった。
こんなにバレるかな?と思ったのは最初だけ。
その後は右で左で、前で後ろでマダコが続けて上がる。
そのたび仲乗りの北川さんがタモを持ってダッシュし網袋とオケを届けるのだが、同時にマダコが乗って間に合わないときは石井船長が操舵室から駆けつける。
私はそれに合わせて写真を撮らせていただき、ときにコメントを聞いてメモするのだが、この日の朝ほど慌ただしいのは過去数回もない。
北川さんと2人、船上を徒競走のように(安全に配慮しながら)駆けては戻る、を繰り返し、メモを見れば8時の時点で船中30杯を超えていて、3分の2の人がマダコを手にしている。
いやはや、うれしい誤算。
これなら誌面も、今年のマダコ釣りも先行きが明るい。
同行してくれている三石忍、友人の上野恵子さん、山口正之さん、増本誠司さんの4人も、3人がマダコを手にした。
ん、だれか1人、釣っていないぞ。
(左)朝イチで釣っておいてよかった~!(中央)当日は三石忍と上野恵子さんが参戦。忍が写っていないということは……(右)お隣の好調に遅れることなくキャッチ
出典:
知っ得!おいしいマダコを手にするために必要なことは?
手釣りのマダコはだれにでもチャンスがあるし、オデコのリスクもある。
ある意味これほど公平な釣りも珍しいのだが、1杯は持ち帰りたい。
そのための条件をあげてみよう。
①出船前のレクチャーを聞いておく(何回やっていても基本の一部を忘れているもの)。
②席にこだわりすぎない(胴の間で大当たりが出る)
③それでも釣れなかった場合は沖揚がり時に「おみやげ」マダコチケットを受け取り、交換する(川崎丸の場合)。
Tackle Guide
道具はすべて船で貸し出しあり。
根掛かりでテンヤを紛失した場合に備えて受付時に「テンヤ紛失代チケット」(3枚綴り2000円)を購入しておこう。
余った場合は次回も使えるし清算も可能。
実質1個1000円のテンヤなので断然お得だ。
渡りダコと「謎」全開
この時点では三石忍も私もいたって楽観的だった。
南西の強風だからミヨシは揺れが大きく釣りにくいものの、いずれ釣れると信じていた。
忍の背後、左ミヨシの方も泰然自若としていて、私と知床半島の動物撮影や北海道ツーリングの話をしながら(つまり世間話に付き合っていただきました)釣れないねえと笑っている。
南西風は一向に収まらず強さを増している。
僚船は南沖の実績ポイントをリサーチするために走っていく。
我われの乗る第2川崎丸はこの後、風裏になる場所を探っていくのだが、これが見事にはまった。
流すたびだれかが大きく合わせ、重そうにたぐると500~800gほどのレギュラーサイズが上がる。
その合間に1kg、2kgの大ダコが出現、時間の経過とともに大ダコ出現率が高まっていく。
その中にあって胴の間の成島さんが釣り上げた3.5kgは、目の上にツノがある「渡り」と思しき個体で、右トモ寄りの女性が釣り上げた2.3kgも同じ特徴を持っていた。
水産学では常磐から渡りダコが南下して東京湾に入り資源量に影響を与えていると言われている。
であれば、今年は(も)、東京湾のマダコは好調なのではないか。
思わず期待してしまう事象だった。
事象といえばもう一つ、マダコが釣れ続く船上で、好調であればあるほど必ず起きる「なぜか隣が釣れない現象」が、この日も起きていた。
前出の成島さんが左胴の間で大ダコばかり6杯を釣るそのお隣さんだけは、どうやっても釣れないのだ。
その方は常連さんでマダコ釣りにも慣れていて、何も変わったところがないのにだ。
同じく、右大ドモで5杯以上釣っている隣の友人は、バラシのみで釣れない。
左隣の女性は掛けるたびに大ダコ、そのお隣はワームを使って好調、そのさらに隣は朝の1流しで3杯も釣っているのに……。
前日夜7時に一番乗りで札を取った熱心なファンに、マダコはなんとひどい仕打ちをするのか。
そして三石忍である。
彼女が手も足も出なくなる釣りは、手釣りのマダコぐらい。
同じく左ミヨシの方も釣れず。
つまり四隅のうち前2席が釣れなかった。
誤解なきように記すけれど、ミヨシが好調な日は多々ある。
そんなこんなの悲喜こもごもの解禁日は、強風のため1時間早く11時に沖揚がり。
それでも船中69杯、2隻合わせると111杯の好結果だ。
注目すべき、というか、私が素敵だと思うのは、その釣果が一握りの上級者によってもたらされたものではない、ということだ。
よく考えてほしい。
初めての人でも夢を抱けて、大ベテランや名人でも釣れないかもしれない釣りが今、どれだけ残されているだろうか。
その意味を心から理解できているのは、この日オデコでも笑って帰ることができた人たち。
心から、お疲れ様でしたとお伝えしたい。
(左)ベテランも手堅く1杯(中央)驚きと感動の人生初タコ(右)終盤、諦めかけたころに歓喜の1杯!
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(左)なぜか不調のミヨシ寄りで貴重な1杯(中央)見て、釣れてビックリの初タコでした(右)釣れぬ……と思っていたところに立派なオスのタコ
出典:
船宿information
内房富津港 川崎丸
0439・87・2902
備考=予約乗合。
ほかマゴチ乗合へも出船
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隔週刊つり情報(2023年6月1号)※無断複製・転載禁止