ヨッシーこと吉岡進がエサ、ルアー釣りを問わず様ざまな釣り物にガチでチャレンジしていく連載「ツリガチ!」。
第11回は外房勝浦のスーパーライトジギング(以下SLJ)。
ライトなタックルと40~80gの軽いジグを使い、巻いたり、シャクったりして好きに楽しむことができるため、女性や子供にも人気で、ジギング入門としてもおすすめ。
SLJのターゲットは釣れる魚。
マダイでも根魚でもなんでもこいだ。
この釣りで大切なのはジグの着底が分かること。
これが分からないとひたすらラインが出ていってしまうから、そんなときは重いジグを使えばいい。
3月下旬に釣行したのは外房勝浦興津港の第五庄之助丸。
秋葉庄之助船長が向かった釣り場は興津沖の水深30~55m前後。
この海域で釣れるのはマハタ、アカハタ、カサゴ、メバル、チカメキントキなどの根魚やマダイ、ヒラメ、青物など様ざま。
ポイントに到着し、40gのジグをリフト&フォールさせるヨッシーにカサゴがヒット!
これを皮切りに船中のあちこちでカサゴやメバル、マハタ、アカハタなど釣れ、さらにヨッシーが当日最大2.5kgのマハタを上げる。
今回は専用ロッドとジグを使い、春の外房でSLJを堪能したヨッシー。
▲「これはデカいよ」と言って時間をかけて慎重にヤリトリする
出典:
Profile
よしおか すすむ
1982年生まれ。
ヨッシーの愛称で親しまれている。
一つテンヤマダイ、ライト系オフショアルアーを得意とする。
ジャッカルソルトプロスタッフ、シーガーインストラクター。
SLJタックル
フルソリッドのSLJ専用ロッドならしっかり曲げてヤリトリを楽しむことができる。
スピニングとベイトの両方あると理想。
SLJの釣り方イメージ
根魚を狙う場合は底付近でスローなワンピッチジャークで誘ったり、リフト&フォールがおすすめ。
青物がいるときは宙層でワンピッチジャーク、マダイにはタダ巻きが有効。
フォールや着底直後に食ってくることもあるので投入時も集中しよう。
船下でアタリがなければジグを遠投して斜めに引いて広く探るといい。
外房・興津沖の海に、真紅のマダイが弾けた。
4.5kg、3.7kg、3.4kg、そして2.2kg。
4枚もの素晴らしき良型マダイは、すべて外房勝浦興津港・第五庄之助丸のSLJ、スーパーライトジギングでの釣果である。
春らしい穏やかな陽気の下、イワシの群れの中でマダイが炸裂したのは、我われツリガチ取材班が訪れる……前日だった。
前日に、好釣果出ガチ……。
ちなみに「炸裂」は、秋葉庄之助船長の口癖である。
そしてこの「炸裂」こそが、SLJの魅力を存分に表している。
では、当日は……?
炸裂したのか、どうなのか……?
3月22日、強い北風と雨粒が容赦なく襲いかかるタフコンディションの中、第五庄之助丸に乗り込んだ。
前日の陽気はどこかに消え失せ、信じられないほど寒い。
「防寒着、もうしまおうかと思ってたんスよ」と苦笑いするのは、ヨッシーの釣友であり当企画のマスコットキャラクター、イチロウこと鹿島一郎さんだ。
ヨッシーも、ライターのタカハシゴーもみんなブルブルと震えている。
寒さのせいばかりではない。
武者震いも(ちょっとだけ)含まれている。
「今日も何かが炸裂するかもしれない」という期待は高いのだ。
根周りを攻める庄之助丸のSLJには、いつ、何が飛び出すか分からないビックリ箱のようなワクワク感がある。
だが、それ以上の不安があったのも事実だ。
外房は強い北向きの風雨に見舞われ前日より気温が一気に下がっていた。
庄之助式のアナウンスは、海底のイメージが3Dになる。
春はいつだって、ジェットコースターのように激しくウネリながらやってくる。
上がって、下がって、もがきながら強引に長い冬を終わらせようとする。
我われが庄之助丸を訪れたのは、ちょうど谷にあたる日だった。
冷たい雨としぶきが船を打つ。
我われの武器は、大海原を自由に泳ぐ魚に立ち向かうにはあまりにも小さな、40~80g程度のジグ。
そして、庄之助船長のアナウンスだ。
一度でも庄之助丸に乗った人は、庄之助船長のアナウンスのとりこになる。
ヨッシーも、そのひとりだ。
過去に何度か経験し、そのスゴさにシビレている。
「これガチなんだけど、3Dで海底が見えるんだ」と、ヨッシーは言う。
「興津沖の根は荒く、激しい。そびえ立つ壁みたいな根もある。でも、庄之助船長のアナウンスを聞いていると、海底の様子が手に取るように分かるんだ。情報をもらえるのは、釣る側としては最高にありがたい。自分なりの釣りの組み立てができるからね。ブルブル」
寒さに震えながらも、庄之助船長のアナウンスの素晴らしさを熱弁するヨッシーである。
「コンピラダシのタカネです」
「興津沖のテラダシを流してみましょう」など、根の名前をひとつひとつ教えてくれる庄之助船長。
まるで観光ガイドだ。
「根の名前を漢字でどう書くか?分かんないからカタカナにしといてください」と笑う。
海の男たちの間で受け継がれてきた名前である。
漢字なんかどうだっていい。
ただ庄之助船長は、数多くの根を正確に把握している。
それだけで十分だ。
「高~い根のキワから流し込んでいきます。水深は30mから一気に上がっていきます。底のほうに薄~くイワシの反応がありますね。右後ろから左前の潮が0.8ノット。ちょっと流れ始めてますね。根掛かりに注意してやってみてください」
これは一例だが、庄之助式アナウンスは毎度こういった具合だ。本当に、毎度だ。
釣りをしている間中、状況が変化するたびに流れるていねいなアナウンスは、丹念にして精緻だ。
口調は柔らかい。
そして魚群探知機から必要な情報だけを適切に「抜粋・編集」して、知るべき状況を知らせてくれる。
だからストンと耳に入ってきて、スッとイメージが湧く。
名アナウンサーによるラジオでのスポーツ実況のようなものだ。
映像のあるテレビよりも、こと細かに情景が思い浮かぶ。
あとは、我われ釣り人の頑張り次第だ。
たとえ、どんなに寒くても。
たとえ、指がかじかんで動かなくても……。
▲タダ巻きに反応したチカメキントキ
出典:
厳しいコンディションでさえ笑顔の絶えない庄之助丸
釣り始めてすぐ、「んあっ」と声を上げたのはタカハシゴーだった。
しっかりと竿が曲がっている。
慎重に巻き上げると、小ぶりながら緋色が美しいアカハタが顔を出した。
鉛色の空とのコントラストが鮮やかだ。
「60gのバンブルズジグTG SLJが着底した瞬間、ドン!と食ってきた。いわゆる着ドンだったよ」
若干興奮気味だが、彼にとって最初で最後の1尾とならなければいいが……。
水温が下がり、状況はタフだ。
それでも魚の顔を見られるのが、SLJの面白さである。
ジグを落とした先にタイミングよく魚がいれば、着ドンで食ってくることも多い。
庄之助丸が攻める興津沖の根周りでは、カサゴやアカハタに比較的この着ドンパターンが目立つ。
永遠の初心者・タカハシゴーにもチャンスが訪れるというわけだ。
ヨッシーは、SLJの基本として「まずはしっかりジグを着底させること」だと言う。
「着底が分かりにくければ、無理に軽いジグを使わず、重めのジグを選んでしっかり着底させる。これがSLJのスタートラインだよ。ここで、底がどうなっているかを詳しく教えてくれる庄之助さんのアナウンスが生きる。根が荒いなら早め・強めのサミングでブレーキをかけて根掛かりを回避するし、砂地ならあまり気にしなくても大丈夫。いずれにしてもジグの着底と同時に食ってくる着ドンも多い釣りだから、着底の瞬間にはしっかり集中する。そして底付近はネチネチと攻めて根魚を狙い、宙層はワンピッチジャークで青物を狙うんだ」
にんまりと笑っているのは、イチロウだ。
さっきのタカハシゴーより大きく竿が曲がっている。
なんだ?
いったい何が掛かったんだ?
SLJは、そのとき、その場所にいる魚がターゲット、というフリーダムな釣りである。
たまたま前日に良型マダイが炸裂したから、我われとしてもなんとなくマダイを狙っているが、ハッキリ言って釣れればなんでもうれしく、面白い。
その名のとおり、SLJはタックルもスーパーライトである。
面々が使用している竿、バンブルズ エクストロSLJは細身でしなやかによく曲がり、しかも強い。
かわいい根魚でもかなりの引き味を楽しませてくれる一方で、ワラサクラスの青物も難なく取り回すことができる。
イチロウが雨に打たれながらもにんまりとした笑みで釣り上げたのは、コンパクトながら立派なマハタだった。
ヨッシーがカサゴ、お客さんがカサゴ、続けてヨッシーがイサキ、お客さんがキントキと、ポツリポツリと魚が顔を出す。
右トモに釣り座を構えている大曽根康弘さんは、足繁く庄之助丸に通う常連さんだ。
「ジグで魚をだますのが楽しいんですよ。エサ釣りとは違う、ジグならではの誘いの楽しさっていうのかな」と、冷たい雨を感じさせない穏やかな口調で静かな微笑みを浮かべる。
大曽根さんのタルの中には、すでにたくさんの根魚が入っていた。
「多いときで年50回」と毎週のように通い詰めているだけあって、確実に外房SLJを自分のモノにしている。
そして大曽根さんには、釣果以上に惹ひかれるものがあり、都内から興津の海にやってくる。
「庄之助丸のアットホームな雰囲気が大好きなんです。庄之助船長、おかみの良江さん、そして息子の誠二郎くん。3人のコンビネーションが最高」
苛酷なコンディションでさえ笑顔の絶えない庄之助丸は、確かに通うだけの価値がある。
あと、今日という日を完成させるために必要なのは、ドラマだ。
SLJの名手、ヨッシーはブルブルと震えている。
移動中はほとんど意識がないような状態だ。
大丈夫だろうか……。
(上)着底後の巻き始めにアカハタがゴン!(下)1シャクリ、ハンドル2分の1回転で誘い、底上2mでマハタがヒット
出典:
的確な情報提供と、それに基づく的確な戦略が見事に合致した
ヨッシーには戦略があった。
SLJは着ドンばかりではない。
非常に戦略的に楽しむこともできるゲームなのだ。
冷たい風雨にやられながらもヨッシーの頭はフル回転し、庄之助船長のアナウンスから得られる情報をもとに作戦を練っていたのである。
この日の序盤、庄之助船長は徹底的にイワシの群れを追った。
追いまくった。
1回投入したら「すいません、イワシ抜けちゃいました。上げてください、移動します」ということもしばしばあった。
ヨッシーは、そこに勝機を見出していた「アナウンスで、ちゃんとイワシがいることが分かっていた。
しかも庄之助船長はイワシが宙層にいるのか、底にいるのかまで詳しく教えてくれる。
底までイワシがいるときは、大きなチャンスだと思ってたんだ。
こういうとき、ターゲットはイワシに狂っている可能性が高い。
だからジグのアクションはいつもより強めにした。
イワシを食っているターゲットは、波動が大きめのジグに興味を示すことが多いからね」
ヨッシーは、庄之助船長のアナウンスからもうひとつ読んでいた。
それは潮の向きだ。
「おれは左ミヨシにいたけど、潮は右トモから左ミヨシに向かって流れている、ということだった。つまりおれがいたのは潮下。右舷のお客さんが落としたジグをすでに見ている魚に、口を使わせなくちゃいけない。だったら、リアクションバイトを誘うしかない。だからそれまでの60gから80gに替えて、フォールスピードを上げたんだよ」
重めのジグに、いつもより強いシャクリを入れるヨッシー。
バンブルズTG SLJが5mほど底を切ったところで、ドスンッ、とアタリがきた。
すかさず合わせるヨッシー。
ズシンッ……!
ヨッシーの竿が大きな弧を描いた。
間違いない、大物だ!
いかにも重おもしい。
「狙いどおりだよ! でも、引きが変だな。重さのわりにあまり引かない。ヒラメ?掛かりどころがよくないのか……?」と、慎重にヤリトリしている。
今日のコンディションでは、これ以上ない絶好のチャンスだ。
バレるな。
バレるな……。
だれもが寒さも雨も忘れていた。
短い時間さえ、恐ろしく長く感じられる。
緊張する。
ユラリ、と茶色い魚体が見えてきた。
海面を割ったのは、2.5kgの良型マハタだった。
エラから下腹にかけて、ハリが掛かっている。
確かに際どかった。
「やった~!」
ガマンの時間が一気に打ち破られた。
まさに炸裂。
ヨッシーが高だかと拳を突き上げる。
寒さにブルブル震えていたのと同一人物とは思えない。
船全体が大きな喝采に包まれた。
落として、巻けば釣れる。
スーパーライトなタックルで、体への負担も少ない。
これがSLJの魅力だ。
ハードルは低く、だれにでもチャンスがある。
だがこの日、庄之助船長とヨッシーが見せてくれたのは、的確な情報提供と、それに基づく的確な戦略が見事に合致した、ハイレベルなSLJだ。
炸裂したのは、二人のプロフェッショナリズムだった。
▲当日はバンブルズ ジグTG SLJが活躍。根魚はゴールド系のカラーに反応がよかった
出典:
▲マハタを釣り上げてテンションが高まるヨッシー。同船する皆さんから祝福された
出典:
船宿インフォメーション
外房勝浦興津港 第五庄之助丸
0470-76-0510
備考=午前船6時、午後船12時出船。
イワシ泳がせのマハタ五目へも出船
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隔週刊つり情報(2022年5月1号)※無断複製・転載禁止