茨城県鹿島沖のヤリイカが水深70m台の浅場で釣れ始めた。
鹿島港出船では、それまで釣り場は港から南下するカンネコの水深130m前後が中心だったが、2月28日の取材日は前日に好反応が見られた北側のポイントにヤリイカ船が集結。
早朝は水深70m台でご覧の良型ヤリイカが乗り乗りモード。
乗りが一段落したその後は水深80~90m台を転々と流して胴長30~45cm級主体にトップ29杯とまずまず。
今のところ群れの移動が速いためオモリ150号を使用しているが、今後さらに浅いポイントにヤリイカの群れが回遊してくれば鹿島沖ならではのライトタックルでも楽しめるようになる。
当地の春ヤリ本番はこれからだ!
はじめに ヤリイカが良型主体の今こそビギナーが始めるチャンス
現在、各地で盛期を迎えているヤリイカ。
相模湾エリアではすでに初秋に開幕して久しいが、南房~外房、茨城エリアにかけてはこれからが本番だ。
中でも茨城エリアは釣れるイカが良型主体で乗りが明確なうえ、釣り場の水深も比較的浅いことからビギナーが始めるのにも最適だろう。
今回取材した鹿島港出船で狙ったのは鹿島沖水深70~90mほどで、釣れるヤリイカは胴長40cm前後の大型メイン。
このサイズになると繊細なアタリを取って掛けていくという釣りではなく、掛かれば竿先を大きく揺らし竿を持つ手にもズッシリと重みが伝わってくるので、初心者でもイカの乗りを見逃すことはない。
さらにイカが大型なので腕も太く丈夫なためバラシも少ない。
これがビギナーにもおすすめできる大きなポイントだ。
これからの時期は水深50m付近の浅場まで群れが回遊してさらに釣りやすくなる。
おそらく、初挑戦でもイカを乗せるのはそれほど難しくないだろう。
ただし、一つ問題があるとすればそれは「取り込み」だ。
ヤリイカ仕掛けはプラヅノと呼ぶイカヅノを5本程度使用するが、基本の手順が分からないとスムーズに取り込めない。
プラヅノのカンナを自分の手に刺してしまったり、イカの潮鉄砲を食らったり、長い仕掛けを手前マツリさせてしまうなど様ざまなトラブルが起こり「イカ釣りは難しい」となってしまう。
逆に、取り込みさえクリアできれば楽しいイカ釣りライフが待っている。
そこで今回は取り込みのキモをメインに解説していこう。
なお、今回はヤリイカ釣りとしているが、取り込みの手順はスルメイカなども同じなので、これを覚えておけばどちらの釣りでも安心だ。
▲多点掛けの重量は相当なもの
出典:
▲日が高くなってから、いわゆる着乗りで多点掛けする一幕も
出典:
釣り座のセッティング ロッドキーパーと投入器の間を1mほど取ろう
ヤリイカ釣りは、釣り座のセッティングとポジショニングが非常に重要な釣りである。
釣りをしていて「やりづらいな」、「なんだか窮屈だな」、「この姿勢だと腰が痛くなりそう」など、ストレスを感じるようでは釣果にも響いてくる。
まずは快適に釣れる釣り座をセッティングしよう。
釣り座のセッティングの大前提として、船首側に竿、船尾側に仕掛けを置く、というのがある。
スパンカーを立てて船首側から風を受けるので、竿などに仕掛けが絡まないように風下に仕掛け=「投入器」を配置するのが基本になる。
乗船する人数が決まり、自分の場所が確定したらロッドキーパーと投入器を置く。
この間がパーソナルスペースとなるので、取り込みの動作が窮屈にならないように1mほど間隔を取る。
釣れたイカを入れるオケは、自分が釣りをするときに邪魔と感じない場所に置こう。
海水循環ホースの位置が決まっているので、必ずしもベストの位置になるとは限らないが、できるだけ足元にオケを置かないようにしたほうがいい。
仕掛けは、釣り場が近い場合は出船前に投入器にセッティングしてもいいが、遠い場合は航行時に投入器に入れた仕掛け(プラヅノ)が振動や風で飛び出してしまうことがあるので釣り場に着いてから準備しよう。
いずれの場合も、仕掛けをパッケージから出したら幹糸についた折りグセを引っ張ってのばしておこう。
折りグセがついたまま投入器に入れると、幹糸が投入器にしっかり収まらず手前マツリの原因になる。
すべてのプラヅノを入れたら投入器を両手で持ち上げて左右に揺すり、幹糸もきれいに投入器に収める。
このとき、船のデッキにドンドンとぶつけると投入器が壊れてしまうことがあるのでNG。
必ず持ち上げて揺するようにしよう。
走行中は道糸をロッドキーパーの糸止めに留めておく。
後述する取り込み時には、道糸と仕掛けの間に小型のヨリ取りリングを介しておくとめちゃくちゃ重宝する。
これがあると、糸止めに道糸を固定しなくても、ヨリ取りリングが重しになり仕掛けを安定させられる。
ヨリ取りリングや中オモリは、釣れるイカが小型のときなどはアタリが分かりにくくなるので外したほうがいいが、目下は良型主体なので付けていても乗りは明確。
今回はヨリ取りリングを使う前提で話を進めていく。
▲(上)滑り止めと指の保護を兼ねる「指サック」は沖イカ釣りの便利アイテム (下)ヨリ取りリングは潮流の抵抗を受けにくい小型タイプのイカ用がおすすめ
出典:
釣り方のポイント 底付近だけでなく高めのタナも探るべし
船長はイカの反応を見つけて投入のアナウンスを出す。
船長の合図があったら素早く投入できるようにしておく。
投入時はオモリを正面に軽く投げ入れるが、このとき竿を持ち、オモリを投げる方向から竿先を離すと竿に仕掛けが絡むのを防げる。
今回取材した鹿島港・豊丸の出頭洋幸船長によると、「最近はイカの反応が浮いています。底ばかりじゃ乗らないですよ」とのこと。
実際、この日は水深80mのポイントで40m上で乗ってくることも。
中層でも釣れているということを頭に入れておこう。
着底したら糸フケを取り、聞き上げて着乗りがあるかを確認し、乗りがなければ誘いに移行する。
竿を大きく持ち上げ、シュッと振り下ろして誘う。
竿を水平よりもやや下げた姿勢で待ち、アタリがあれば軽く持ち上げて合わせる。
こうして合わせを入れると巻き上げ中にバレにくい。
底付近で3回ほど誘いを繰り返したら、1~2mずつ上げて最低でも10m上まで探ってみる。
かなり上のタナで乗るときは、底から誘い続けるのは大変なので、巻き上げ速度が30段階の電動リールであれば7~8くらいの速度でゆっくり巻き上げて探る。
途中で竿先がガクガクしたり跳ね上がるような動きを見せたらイカが乗った合図だ。
一連の誘いを行い乗りがない場合は、一気に20~30m巻き上げ再着底させて誘いを繰り返す。
それでも自分だけ乗らない場合は、水深の半分くらい巻き上げてから落とす。
いずれの場合も、乗りを確認したらすぐに電動巻き上げをせず、そのまま10mほどゆっくり手で巻き上げて追い乗りを狙う。
大型が2杯も乗ればかなりの重量感があるはず。
手持ちで船の揺れをかわしながら電動の中速で巻き上げよう。
利き手に合わせた釣り座の選択
前述したとおり、イカ船はスパンカーを立てて船首側から風を受けるので、船首側に竿(ロッドキーパー)、船尾側に投入器を置くと仕掛けが竿などに絡みにくい。
風が強い日などは、取り込みで船ベリに対して半身に構えるとき、風を背にして立つほうが絡みにくいうえ、取り込みの動作は、利き手が船の内側にくるほうがスムーズに行える。
つまり利き手が右手の人は右舷、左手の人は左舷の釣り座が釣りやすい。
しかし、希望どおりの釣り座に入れないこともある。
例えば右利きの人が左舷の釣り座になったとき、右舷と同じように取り込みたい場合、船首側に投入器、船尾側に竿をセッティングすればいいのだが、風が強い日は仕掛けが絡みやすいうえ、混み具合や船のルールなどで両舷とも投入器は釣り座の船尾側に置かなければいけない場合もあるので事前に確認しよう。
ここからは、今回のメインテーマの「取り込み方」。
ブランコ仕掛けと直結仕掛け、それぞれ解説する。
ロッドキーパーと投入器の間に立ち、電動リールのカウンターが残り20mを切ったあたりでそっと竿をロッドキーパーにかけ、モーターが減速して停止位置が近づいたら手巻きでアシストする。
ヨリ取りリングが見えたら(竿先からヨリ取りリングまで2mくらいが目安)、ゆっくり竿を立てヨリ取りリングをつかんで船ベリの内側に垂らしておく。
こうするとヨリ取りリングの重みで仕掛けが落ち着き、スムーズに取り込める。
しかし、慣れていない人は道糸を巻き過ぎて、ヨリ取りリングがつかめなかったり、船ベリの内側に届かないことも。
そのままヨリ取りリングを竿先にブラブラさせて取り込むとかえって手前マツリの原因になる。
そうしたトラブルの防止策として、自分が使っている竿と同じ程度の長さのリーダーを道糸と仕掛けの間に介しておくといい。
リーダーを竿先の手前まで巻き上げると、ピッタリの位置でヨリ取りリングをつかめる。
ここまでの手順はブランコ仕掛け、直結仕掛けとも共通だ。
①ブランコ仕掛けの取り込み
(A) ヨリ取りリングをつかんで船ベリの内側に垂らしたら幹糸を利き手でつかみ、船の内側に大きく引き上げてもう一方の手で枝スのやや手前をしっかりつかむ。
(B) 続いて最初のツノを利き手でつかみ、もう一方の手の上で幹糸を滑らせながらツノを大きく引き上げ、枝スのやや手前をしっかりつかむ。
(C) ツノを投入器に収め、空いた利き手でツノをつかんで大きく引き上げ、もう一方の手で枝スのやや手前をしっかりつかむ。
この(A)(B)(C)を繰り返し、オモリまで回収する。
イカが付いたツノが上がってきたら、慣れた人はその都度イカを外してツノを投入器に収めてもいいが、外すときイカをつかむと手がヌルヌルになり滑りやすいので、初心者には以下の方法がおすすめ。
・イカが付いたツノが上がってきたら外さず、枝スの少し上の幹糸を持って引き上げ、座席の上に置く。
・次のツノにイカがいなければ座席に置いたツノを投入器に収めるための穴を開けておき、次の穴にツノを収める。
これを繰り返してオモリまで取り込んだら、座席に置いたツノからイカを外して投入器に収める。
手返しはやや遅くなるが、仕掛けを絡ませずにスムーズに取り込める。
取り込み時のアドバイス
①船ベリに対して半身に構える船ベリに対して、やや半身になるようにして立つと、つかんだツノを引き上げる動作がスムーズになる。
②取り込み時は船ベリの外側にできるだけ顔を出さないイカが付いてるかな?なんて海面をのぞくと強烈な潮鉄砲を顔に食らう。
これにビックリして手を滑らせてツノのカンナを指に刺してしまうことも。
③すべての動作はゆっくり大きく多点掛けしているのが分かると慌ててしまうものだが、わざとゆっくり取り込むくらいのつもりで、大きな動作を心がけよう。
イカが付いていないときの回収も、同じように心がけてやれば練習になる。
サバが多いときの対処法
ヤリイカ釣りにサバは付き物で、サバが多いと釣りにならないことも。
ヤリイカに用いるプラヅノはサバにとっても好物に見えるようで、落下中のブランコ仕掛けにサバが食い付くこともしばしば。
またサバにつかまらず仕掛けが底まで下りてイカが乗っても、巻き上げ中にイカが付いていないツノにサバが食い付き、グルグル走り回ってイカが外れたりオマツリを引き起こすなど、この釣りでは大変迷惑な存在になっている。
そんなサバが多いときの対処法を紹介する。
①ツノ数を減らす
5本ヅノ仕掛けなら3本にしてみる。
こうすることで落下スピードが速くなり、アピール度も少なくなるので、多少はサバに食われにくくなる。
②プラヅノ18cmの仕掛けに替えてみる
スルメに用いるプラヅノ18cmのブランコ仕掛けに替えてみる。
18cmのプラヅノは太く長いため、サバが食っても飲み込まれにくいうえ、目下はヤリイカが大型なのでこの仕掛けでも乗ってくる。
1組用意しておこう。
③直結仕掛けを使う
もう何をやってもサバだらけ、ブランコ仕掛けがみんなダメになっちゃう。
そんなときはプラヅノの上下を幹糸でつないだ直線構造を持ちサバにツノを飲まれない直結仕掛けを使うしかない。
しかし直結仕掛けは、その構造から仕掛けが下がるとイカが外れやすいため取り込みの難易度が高めだが、ツノ数が3~4本なら意外となんとかなる。
②直結仕掛けの取り込み
電動の中速で巻き上げ、残り20mを切ったらロッドキーパーにそっと竿をかける。
モーターが減速して完全に停止する前に手巻きでアシストし、ヨリ取りリングが見えたら竿を立て、リングをつかみ船ベリの内側に垂らす。
最初に利き手でツノをつかみ、もう一方の手の中で幹糸を滑らせながらツノを大きく引き上げ、次のツノのやや手前をしっかりつかみ、利き手のツノを座席の上に落とし、空いた手で次のツノをつかむ。
仕掛けが緩むとイカが外れてしまうので、この一連の動作を繰り返し、どんどんたぐり座席の上に置く。
イカが付いたツノは空のツノと離して置くと絡みにくい。
オモリまで上げたら、座席に置いた仕掛けをほぐしながら1本ずつツノをゆっくり下ろしていく。
ツノに付いたイカは自然に外れる。
イカが乗っていないときは、投入器にツノを収めながら取り込もう。
ヤリイカは5月の連休ごろまでロングシーズン。
慣れていない人でも取り込みをマスターすればきっと満足のいく釣果が得られるはずだ。
▲直結仕掛けを投入器に収めるときはプラヅノのカンナを上向きにして穴に入れる
出典:
★ここでは道糸と仕掛けの間にリーダーを介した取り込み方を紹介。直結仕掛けは取り込み中に仕掛けが緩むとイカが外れてしまうので、慣れないうちはどんどんたぐってしまおう。
出典:
船宿information
茨城県鹿島港 豊丸
090-8685-9389
備考=ほかヒラメ、フグ、一つテンヤへも出船
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隔週刊つり情報(2023年4月1号)※無断複製・転載禁止