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[ツリガチ!(第10回)]東京湾のシーバスジギング

隔週刊つり情報編集部

ヨッシーこと吉岡進がエサ、ルアー釣りを問わず、様ざまな釣り物にガチでチャレンジしていく当連載。

第10回はヨッシーが得意とする東京湾のシーバスジギング。

2月下旬、エサ釣りのほか各種ルアー釣りも受け付けている東京湾奥千葉市寒川港の守山丸より出船した。

金子輝人船長が向かったのは東京湾アクアラインの風の塔周辺、水深25m前後。

当日は北風が強く、風裏のポイントを狙うとのこと。

船下にジグを投入するヨッシーだが数投して反応がないため、アンダーハンドキャストでストラクチャーの際狙いに切り替えると、すんなり1本目をキャッチする。

釣行の写真

イエー!船中1本目!

釣行の写真

▲アンダーハンドキャストでジグをストラクチャーの際に投入

Profile

よしおか すすむ

1982年生まれ。

ヨッシーの愛称で親しまれている。

一つテンヤマダイ、ライト系オフショアルアーを得意とする。

ジャッカルソルトプロスタッフ、シーガーインストラクター。

シーバスジギングタックル

専用ロッドがおすすめだが、全長1.8m前後、60~80gのジグを背負えるライトもしくはスーパーライトジギング、タチウオジギング用でもOK。

フォールを繰り返す釣りなので、クラッチを切るだけでジグを落とせるベイトリールが便利。

▲ヨッシーの愛用ルアーは 「シーバスアンチョビメタル」「ラスパティーン」の60~80g

続いて向かったのは、京浜シーバース周辺の水深30m前後。

到着するとすでにルアー船がいて、シーバスが取り込まれているのが見えた。

ここでシーバスの捕食スイッチが入り、ダブル、トリプルヒットと盛り上がる。

ところがバラしてしまうと警戒心が高まるのか、急にアタリが遠のいてしまった。

口を使わなくなったシーバスに対し、誘い方を変えながら挑んだヨッシー。

▲ダブルヒットもよくあった

スピニングタックルでも遊べる

浅場のポイントではスピニングタックルにスピンテールジグやバイブレーション、ジグヘッドリグなどのルアーをセットしてキャスティングで楽しむこともできる。

キャスティング用のルアーはジグに比べて軽く、ジギングの方とオマツリすることもあるので船長に確認してから使おう。

シーバスジギングの釣り方

海底までジグを落として5m巻き上げて、また落とす。

この繰り返しでOK。

底付近で群れているシーバスに対して巻き上げでジグを追わせ、ジグがヒラッと落ちたときに食わせる。

巻き上げでも食ってくるので巻く速度を早くしたり、遅くしたりしてシーバスが反応するスピードを探る。

「シーバスジギングだね」

「シーバスジギングだよ」

「癒やしの釣りだね」

「癒やしの釣りだ」

「でも……」

「なにこの風……」

「寒いね……」

「冷たいね……」

「厳しそうだね……」

2月24日、朝5時。

東京湾奥千葉市寒川港は守山丸の船着き場に集合した我われツリガチ取材班は、10m近くの強い北風に見舞われていた。

この港は、都市の奇跡だ。

ショッピングモールが連なり、国道357号線とJR京葉線がすぐそばを走るような場所。

スーパー銭湯の脇を抜けると、ぽっかりと存在する港。

ツリガチ取材班とは顔なじみの守山丸・金子輝人船長である。

船長を交え、朝からひとしきりゲラゲラと笑い話を繰り広げ、場の空気が暖まる。

風は冷たくても、こんなふうに楽しければそれでいいのだ。

これでシーバスが釣れればなおよし、なのだが、ここのところ釣果の浮き沈みが激しい。

「シーバスは癒やしの釣り」我われツリガチ取材班の間には、そんな不文律がある。

癒やしの釣り。

つまり、「よほどのことがない限り、シーバスは釣れてくれるかわいいヤツ」ということだ。

だが、釣行前日、守山丸は出船していなかったものの、ほかのシーバス船の釣果には「0~」という厳しい表記があった。

「よほどのことがない限り……ってことは、よほどのことがあればシーバスも釣れないときがあるんだよね……」と、ヨッシーこと吉岡進さん。

北風による波しぶきを浴びないようデッキ上部の特等席にデーンと座りながら、不穏なことをつぶやく。

「今日は、よほどの日かもしれない。だってコレ、シケだよ」

白波を蹴立て、巧みにウネリを避けながら守山丸は西へと進んでいた。

金子船長は、東京湾を突っ切り、川崎側に向かっている。

風が強く、行けるポイントが限られているのだ。

遠くの空は見事に晴れ渡っていたが、我われの間には暗雲が垂れ込めていた。

釣行の写真

▲東扇島沖の京浜シーバースもシーバスジギングの好ポイント

シーバスをバラすと、群れが散る。暗雲は、より色濃くなった。

小1時間走って到着したのは、アクアトンネルの換気塔、風の塔だった。

どこからどう見てもシーバスが着いていそうなストラクチャー周りだ。

釣れる……!

北風が体を奥底から冷やし、指先を痛めつけるが、そんなことを気にする我われツリガチ取材班ではない。

「寒いよ~」

「指いてえよ~」と弱音を吐きまくりながら、ジグを投入する。

水深25m前後。

使用するジグは60~80グラ……。

「あっ……!」

状況とタックルを説明するかしないかのうちに弱よわしい声をあげ、竿を曲げているのはライターのタカハシゴーだ。

1投目が着底し、巻き上げ始めた直後のアタリに、おどおどしている。

心の準備ができていなかったのだ。

しっかりと竿にシーバスの重みが乗ったにもかかわらず、バラしてしまった。

そのすぐ後に、イチロウこと鹿島一郎さんにもヒット!

だが、やはりバラシ……。

「群れが散っちゃうから、なるべくバラさないでね~」と金子船長が笑いながらアナウンスする。

だが、メガネの奥の目は笑っていなかった。

「シーバスは、バラすと群れが散っちゃうんですよ、ホントに。リリースしても同じですね。たぶん、シーバスの間で情報がやりとりされてるんですよ。ヤバイですよ、シーバス(笑)」

シーバスをバラすと、群れが散る。

これは都市伝説のように言い伝えられている事象だ。

金子船長いわく、魚群探知機やソナーで確認すると、バラシやリリース発生直後にスーッと群れが消えてしまうことが、本当にしばしば起こるそうだ。

「意外と繊細なんですよ、シーバスは。だからウチの船ではリリースもポイントから離れたときだけでお願いしてます。リリースのためにいったんストラクチャーから遠ざかるタイミングを作ってるので、そのときか、移動時にリリースしてもらうようにしてます」

我われツリガチ取材班が震え上がったのは、北風のせいではない。

そんな話を聞く前に、すでに2本をバラしてしまったのである。

暗雲は、より色濃くなった。シーバスよ、おれたちを癒してくれ……。

祈りながらジグを投入する。

シーバスジギングの基本は、フォールで食わせることだ。着底したら素早く巻き上げ、落とす。

着底。巻き上げ。

落とす。

この繰り返しだ。

「たいていはフォールで食ってくる。巻きで追わせて、落として食わせる、というイメージ。だからシーバスジギング専用のジャッカル・シーバスアンチョビメタルはリアウエイトで、フォールスピードを重視した形状になってるんだよ」とヨッシー。

だが、シーバスは思いのほか反応してくれない。

緩衝工(船舶の衝突から風の塔を守る、三角形の構造物)の周りを、金子船長が攻める。

我われ釣り人は、できるだけストラクチャーの際にジグをキャストし、着底、巻き上げ、フォールを繰り返す。

釣行の写真

▲アタリがきたら竿を立ててフッキングし、テンションを緩めずに巻き上げる

東京湾は、世界一のストック量と言われるシーバスパラダイス。

潮がぶつかっているあたりはいい感じで波が立っていて、いかにも釣れそうだ。

ヨッシーとタカハシゴーは三角形の角から右側を、イチロウとトモキは左側を探る。

トモキ──板倉友基さんは、例によって「シーバスジギング、初めてなんですぅ」なんてかわいいことを言っているが、今回も間違いなくその優しい笑顔でシーバスを虜にするだろう。

と、きたきた、タカハシゴーの船中1本目を皮切りに、バタバタッと釣れ始めた!

「バラすなよ、バラすなよ!」は、決してダチョウ倶楽部的なフリではない。

決して高活性とは言えない厳しい状況下で、群れを散らさないように懸命だ。

「どうすればバレないんですか?」と金子船長に聞くと、「どうすれば……?う、うーん、シーバスっていうのはねえ、バレやすい魚なんですよ……」と遠い目で答える。

エラ洗いでも知られるように、シーバスはよく暴れる魚だ。

その分、引きが強くてダイナミックなおもしろさを味わえるが、反面、どうしてもバレやすい。

ハリ掛かりした場所によっては、パワフルに暴れ回るうちに口切れしてしまうこともある。

「まぁ、シーバスが掛かってから強引に巻き上げようとすると、バラす率は高いみたいだね」と金子船長。

逆に、ていねいに巻けばバラシ率を抑えられる。

取材班はひととおりシーバスキャッチに成功したが、なぜかヨッシーに運がない。

アタリは多く検知しているが、ヒットに結びつかないのだ。

「ま、釣れるよ」

ヨッシーはあわてることなく、のんびりと構えている。

これがシーバスジギングのいいところだ。

「癒し」というほど簡単ではないときでも、きっと釣れるはずだと希望を持てる。

なにしろ東京湾は、世界一のシーバスストック量と言われているほどのパラダイスなのだ。

そして、それを証明するかのようにヨッシーもしっかりとシーバスをキャッチ。

「かわいいヤツだ……」と言いつつ、ホッとため息を吐いたのだった。

金子船長の「吉岡くん、よかったじゃん」というアナウンスに笑いが湧いた。

東京湾のシーバスジギングは、ランガンスタイルだ。

食いが落ち着いたところを見計らい、次つぎにポイントを変えていく。

しかしこの日は北風に見舞われている。

「風がなければなぁ……。もっと色んなポイントを回れるのに……」と言いつつ、懸命の操船を続ける金子船長である。

男気の人だ。

その熱意は、ツリガチ取材班にもしっかりと伝わる。

ルアーへの反応は、確かによくない。

冬場はストラクチャー周りで群れが固まるのが東京湾シーバスの習性だが、少なくとも今日は、大きな群れに当たらない。

アタリは多いし、たまにスイッチが入ったかのようにバタバタッとジグにアタックしてくるときもある。

「バラさないでよ~」というアナウンスに若干おびえながらも、楽しい。

シーバスは引きが強いファイターだ。

かなりの引きに「こっ、これは大物か……?」とドキドキしていると、意外に小型だったりする。

60cmを超えてくると、ちょっとした「ファイト」という様相を呈してくる。

それが「巻いて落として」を繰り返すだけでイージーに味わえてしまう。

冬の寒い時期にもかかわらず東京湾のシーバスジギング船がにぎわうのも分かる。

釣行の写真

▲巻き上げからのフォールでバイトしてきた

当日のルアー船で見付けた東京湾のシーバス釣りで〇〇しがちなシーン

何も考えなくても戦略を立ててもどちらも正解なシーバスジギング

気を吐いたのはイチロウだった。

ここのところ、釣果でタカハシゴーに敗北しガチだったイチロウが、今回は完全にパターンをつかんでいる。

竿を曲げてはタカハシゴーにニンマリと笑いかけ、プレッシャーをかける。

ジワジワと差を広げていく。

そう、これもシーバスジギングのおもしろさだ。

簡単に釣れるのは間違いないが、そのなかでもしっかりと差がつく。

イチロウはヨッシーさえ置き去りにして、今や東京湾のヒーローである。

ちょっと風が弱まったと見るや分厚いジャケットを脱ぎ捨て、身軽になるとさらに釣果をのばしていく。

「早い段階で、『今日はゆっくりな動きがいいんだな』と分かったんです」とイチロウ。

11本の見事な竿頭で、文字どおりのヒーローインタビューである。

「しかも、僕にはフォールでのアタリはほとんどなくて、全部巻きでした。ゆっくりと一定速で巻く。タイラバみたいな釣りでしたね」

タカハシゴーは5本、初体験のトモキも同数、そしてヨッシーは色いろな釣り方にトライしての8本だった。

「入れ掛かりってほどではなかったけど、楽しめたよね。今日は巻きとフォールでアタリが半々。

巻きで追いかけてくるけど食い切れず、フォールで掛かるっていうケースが多かったような気がする。

投入のたびに巻きスピードに変化を与えて、シーバスを飽きさせないのがコツだったかな」

おもしろかったのは、ヨッシーが試したジャッカル・ビッグバッカー ワグシャッドだ。

28gのヘッドにワーム(シャッドテール)をセットした、本来は陸っぱり用のスイムベイトである。

「ウチはフリースタイル。色いろやってみて」という金子船長のお言葉に甘えてのトライだが、お客さんでも事前に「こういうルアーを使ってみたいんだけど」と問い合わせれば基本的になんでもOKだそう。

「おっ、金子船長、まさに太っ腹だね」とヨッシー。

「横に泳ぐ軽いジグにココンッと食ってきて、バシッと合わせが決まったときのおもしろさは、ジグとはまた違うもの。

チャンスがあったらぜひ試してほしいな」。

なんだかんだで、我われツリガチ取材班4名で計29本。

しっかりとした釣果を出せた。

「何も考えなくても釣れてくれるのがよかったです」とトモキ。

「戦略立てて釣るのが楽しいよね」とヨッシー。

コメントは正反対ながら、どちらも正解なのだった。

釣行の写真

▲当日は50~60cm前後のシーバス が多かった

船宿インフォメーション

東京湾奥千葉市寒川港

守山丸

043-312-2640

備考=6時出船。

ルアータチウオ、ライトアジ、夜メバル&カサゴへも出船。

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