深海釣りの人気魚キンメダイは、沖釣りを始めたからにはいつかはチャレンジしたい憧れのターゲットの一つ。
そのキンメ釣りには大きく分けて2通りのスタイルがある。
一つは、250~350号ほどのオモリと5~10本バリ仕掛けを用いたライト系のスタイル。
もう一つは、最大20本バリ仕掛けと鉄筋オモリ2kgを用いた本格的な深海スタイル。
今回紹介するのは、初心者でも楽しめる相模湾~三浦半島西部エリアから出船するライト系のキンメ釣り。
相模湾小坪港の太郎丸、葉山あぶずり港の長三朗丸、愛正丸、三崎海外港の伊三郎丸が乗合船を出しており、それぞれキンメ・ムツ五目、根魚五目、ライト深海と看板は異なるが、どれもキンメやムツなど深海のおいしい魚を釣らせてくれる。
主な釣り場は城ケ島沖~沖ノ瀬の水300~400m、28~40cm級のキンメを主体に30~35cm前後のクロムツ(ムツ)、ギンメダイ、スミヤキ(クロシビカマス)などが交じり、1月からは丸まる太って脂が乗ったサバも釣れるようになる。
そんなライト系のキンメ釣りに興味津々なのが編集部の黒澤。
「キンメ釣りをやってみたいのですが、初めてなので重いオモリとハリ数の多い仕掛けの扱いが不安です。私のようなタックルもなければ釣り方も分からない深海釣り初心者でも問題なく楽しめますか?」と言う。
それならばとキンメ・ムツ五目乗合で出船する相模湾小坪港・太郎丸の高橋良至船長に相談してみると、「大丈夫です。うちでは初心者大歓迎、貸し道具で楽しんでもらっています。クーラー一つ持って遊びにきてください」と心強い返事をいただけたので、チャレンジさせてみることにした。
ここではキンメ釣りにチャレンジした黒澤が高橋船長に教わったタックルの使い方やエサ付け、釣り方のコツなどを紹介しよう。
初めての深海釣りならフルレンタルがおすすめ
ライト系のキンメ釣りで使うタックルは、竿は全長2m前後、オモリ250~300号を背負える深海竿やキハダ対応の青物用など。
リールはPE8号の道糸を800m以上巻いた大型電動リール。
ちなみに深場釣りの道具をそろえようとすると10万円以上の出費となるので、初心者はもちろん、年に一度くらいの釣行であればレンタルタックルの利用が断然おすすめだ。
太郎丸では竿、リール、ロッドキーパー、マグネット板、オモリ(船宿標準250号、速潮時300~350号、紛失時は有償)のフルレンタルに仕掛け1組が付いて2000円。
予約時に申し込んでおけば、出船前に船長が釣り座にタックル一式をセットしておいてくれる。
仕掛けは胴つき5~10本バリ。
太郎丸の船宿仕掛けは幹糸14~18号、枝ス10号、ムツバリ17号の6本バリと8本バリの2種類。
自分が扱えそうなハリ数のものを選べばいいが、初めてなら5~6本バリの仕掛けがおすすめだ。
ひどいオマツリさえしなければ何回でも使い回せるので、修復不可能な状態になったときは船にも用意があるので買い足せばいい。
持参しておきたいのはクーラーボックス、オマツリしたときに枝スを切るためのハサミ、歯の鋭い魚が掛かったときに口からハリを外すペンチ、取り込み時のケガを軽減する指サック。
これらがあれば快適に釣りを楽しむことができる。
深海釣りを楽しむうえで押さえておきたい3項目
キンメ釣りは船長の合図と同時に投入できなかったときは、オマツリしてしまうため1回休みとなる。
そのため投入に遅れないよう出船前と投入前に準備を終えておく。
出船前の準備はロッドキーパーの糸止めに下から道糸を止めておく。
このほうが投入時、スムーズに道糸が外れてトラブルも軽減する。
続いて仕掛けを道糸側のサルカンに接続してハリをマグネット板に並べていく。
オモリを付けたら転がらないようにタオルの上などに置いておく。
釣り場に着いたら投入の準備を行う。
まずはエサ付け。
船宿支給のエサは幅1cm、長さ10cmほどのサバの切り身。
付け方はチョン掛けで、外れにくくするために皮側から切り身の端の中央にハリを刺す。
エサを付けたらマグネット板に等間隔に並べ、並べ終えたら道糸が竿先に絡んでいないか確認。
また、投入時のトラブルを避けるため足元に物を置かないようにする。
キンメ釣りは投入から巻き上げまでロッドキーパーに竿をセットしたまま行うのが基本となる。
投入はミヨシから順番に行うので、オモリを持って仕掛けが足に絡まらないようにマグネット板の端に立ち、自分の番を待つ。
「次の方どうぞ!」と投入の合図があったらオモリを軽く投げ入れる。
図のように船を後進させながら順番に投入することで仕掛けが扇状に広がりオマツリしない。
オモリを放り投げたら、仕掛けがすべて海中に入るのを確認してからロッド側へ移動し、リールのクラッチを切る。
このとき投入前にクラッチを切るとバックラッシュしやすいので注意。
投入直後はスプールを指で軽く押さえておき、道糸がスムーズに出るようになったら指を放す。
深海釣りは着底が分からなければ始まらない。
着底を知るために大事なポイントは①全員の投入が終わると船長から水深がアナウンスされるので覚えておくこと、②実際の水深より道糸が出るのでリールのカウンターを見て、アナウンスされた水深になったら再びスプールを親指で軽く押さえて道糸が入っていく海面をよく見ておくこと。
道糸の出が止まったり、道糸がたるんだら着底だ。初めてで着底が分からないと思ったら船長に聞いてみよう。
アタっても巻き上げないこと
釣り方は図のように仕掛けが着底したら糸フケを取り、まずは底ダチを確認する。
道糸が立ったらマーカーを目印に5m巻き上げてアタリを待つ。
キンメダイの反応は底から10~20m上に出ることが多い。
太郎丸の6本バリ仕掛けは全長が約12mなので、オモリを底から5m浮かせればタナの半分以上をカバーできることになる。
竿先を見ていると、小刻みにたたかれることがある。
それがアタリ。
ただしアタっても船長から指示がない限り仕掛けを動かさず追い食いを待つ。
船長から指示があるのは、水深がだんだん浅くなったり、深みへ落ちていったりする急な崖のような場所を探るとき。
浅くなるときは、「少しずつ浅くなります。アタってるはハンドルを10回巻いてください。アタリがない方はそのまま待ってください」というアナウンスがある。
根掛かりするとハリ掛かりした魚ごとロストしてしまうので、巻き上げて根をかわすのだ。
逆に深くなるときは、「だんだん深くなります。2分に1回くらいタナを取り直してください」というアナウンスがある。
そのまま待ち続けると仕掛けがタナから外れてしまうので、再着底させてしっかりタナを取り直す。
黒澤が最も緊張したというのが投入。回数を重ねるごとに慣れてスムーズにできるようになった
出典:
巻き上げは船長の指示で行う 何が釣れるか想像するのが深海釣りの面白さ
巻き上げは片舷ずつ一斉に行い、船長から、「右(左)舷の方から巻き上げてください。(しばらくしてから)続いて左(右)舷の方も巻き上げてください」という指示がある。
太郎丸では巻き上げ時のオマツリを軽減させるため、魚が掛かっていてもいなくてもリールの巻き上げ速度は中速と決まっている。
レンタルタックルの方には分かりやすいよう、「18(18の巻き上げ速度という意味)で巻いて」と指示がある。
巻き上げは8~10分くらいかかるのでこの時間を利用して、取り込んだ魚を入れるタルに海水をくんで足元に準備しておく。
このタルは取り込みが終わったら再投入の邪魔にならない所に置いておこう。
キンメ釣りではヤリトリを楽しむというよりも、巻き上げを待つ間に、何点掛かっているのか、もしくは何が掛かっているだろうと想像するのが楽しい。
取り込みは、仕掛けが上がったら竿を立て、道糸をつかんでロッドキーパーの糸止めに掛けてから幹糸をたぐる。
ハリはマグネット板のリール側から順番に並べていくが、仕掛けを絡ませないようにするため1本回収するごとに一歩ずつトモ側へ移動。
慌てず、ゆっくりていねいに行おう。
キンメは取り込み時のバラシも多いので、魚が掛かっているときは船長や隣の方がタモでサポートしてくれる。
釣り上げたキンメは足元などに置くと暴れて仕掛けが絡まるので、先ほど用意したタルにいったん入れておき、仕掛けをすべて回収してからハリを外そう。
また、取り込んだ仕掛けがヨレている場合は、仕掛けをいったん海へ下ろし、オモリの重さで幹糸が張った状態にしてから枝スのヨリを取りながら再び回収してマグネット板にハリを並べていく。
このときヨリを取るにはサルカンの上部をつかみ、もう片方の手でハリをつかんで枝スを引っ張る。
取材した相模湾小坪港の太郎丸を始め、近年はほとんどの船宿でレンタルタックルを完備してあるから、深海釣り未経験者でも入門しやすくなっている。
昔はマニアな釣魚だった冬のキンメダイ。
釣ったことがないという皆さん、レンタルタックルでチャレンジしてみませんか。
「自分、キンメダイ釣りってやったことないんですけど、初めてだと難しいですよね?」
今回の第2特集はこのようなヤリトリから始まった。
「それならちょうどいいから近田と一緒にチャレンジしてみたら。小坪港の太郎丸はフルレンタルでやらせてくれるし船長もていねいに教えてくれるぞ」と加藤編集長からの提案で今回の取材釣行となった。
12月下旬、近田記者とともに相模湾小坪港の太郎丸へ。
キンメ釣りというとどうしても初心者には難しいイメージがある。
しっかりと船長から学んで釣ることができるのか不安でいっぱいだ。
船着き場に向かうとすでにタックル一式が釣り座にセットされた状態で高橋良至船長が待っていた。
さっそく船長に釣り方や仕掛けの投入方法をレクチャーしていただき、私を含む6名を左舷に乗せて6時半に港を離れる。
船は1時間ほど走って沖ノ瀬の水深320mのポイントに到着。
すぐにエサ付けを済ませたのでいつでも仕掛けを投入できる状態だ。
ミヨシのほうから順番に仕掛けが投入され、いよいよ私の番。
船長から「次の方どうぞー」とアナウンスがあり気合を入れて1投目を投げ入れる。
若干モタつきながらも、無事に仕掛けが絡むこともなく投入を終える。
ここで失敗したらどうしようかと思ったがとりあえずひと安心だ。
水深300m以上の底ダチがちゃんと分かるか心配だったが、しっかり仕掛けが着底したことを確認し、船長からのレクチャーどおり糸フケを取って5m巻き上げたところでアタリを待つ。
少しずつ浅くなり底に着いたらまた5m巻き上げ、深くなるようであれば2分間隔で底ダチを確認しつつ待つようにとのこと。
ここまでの流れは思っていたよりも難しくない。
深場釣り初心者の私でも船長のレクチャーのおかげで案外なんとかなっている気がする。
やがて船長の合図で巻き上げ開始。
私は残念ながら空振り、しかしミヨシのお客さんがキンメを3点掛けで取り込んだ。
私もキンメの多点掛けでドヤ顔を披露したいところだが、現実はうまくいかない。
多点掛けも楽しみのひとつ
出典:
常連さんに良型キンメ
続く2投目。
投入もうまく決まり、指示ダナに合わせて待っていると、波の上下動とは違う動きが竿先に伝わる。
巻き上げ開始の合図を待って巻き上げてくると何やら白い魚が2尾掛かっていた。
正体はギンメダイ。
当然ながら初めて釣った魚なので船長においしいか聞いてみると、「ギンメダイも脂が乗って塩焼きや煮つけにするとうまい魚だよ」と教えてくれた。
当然ながらそそくさとキープ。
キンメではなかったが、いずれは本命も掛かるだろうと思っていると続く3投目は空振り。
4投目にいいアタリが出たが正体はマサバ。
よく肥えた個体だったので血抜きを済ませてキープするが、その後の投入も私は空振りばかり。
釣り方は船長からのレクチャーどおりなので間違いはないはずだが、どうしてだろう。
周りでは良型のムツやスミヤキ(クロシビカマス)、トウジンといった〝The深海釣り〟のゲストがポツポツ上がっている。
肝心のキンメが釣れないため、11時になったところで船長はさらに深い400mダチへと移動する。
移動後の1投目、ミヨシのお客さんにこの日最大の40cmのフウセンキンメが上がり、私と近田記者は「こんなのいるんだね~」と大興奮。
しかしその後の追加はなく13時半過ぎに沖揚がり。
釣果は28~40cm級のキンメをトップ6枚。
ゲストにはクロムツとギンメダイが2~3尾、トウジン、スミヤキ、サバなどが交じった。
初挑戦の私はギンメダイ2尾とマサバ1尾の釣果に終わったが、大変ありがたいことに左舷トモのお客さんからトウジン、キンメダイをいただいた。
「今日は潮の加減もあまりよくなかったけど、いい日にはもっとキンメもムツも釣れるからまた遊びにきてね」という親切で優しい船長の一言に、再訪することを誓った。
最初のヒットはギンメダイ2尾だった
出典:
深場のマサバはたっぷりと脂を蓄えとても美味
出典:
NFORMATION
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隔週刊つり情報(2023年2月1号)※無断複製・転載禁止