ヨッシーこと吉岡進がエサ、ルアー釣りを問わず様ざまな釣り物にガチでチャレンジしていく連載「ツリガチ!」。
今回は外房大原のスーパーライトジギング(以下SLJ)。
30~80gの軽いジグとライトなタックルを使い、好きに巻いたり、シャクったりして自由に楽しむことができるので、近年は女性や子供にも人気。
SLJは、そのときその場所で釣れるすべての魚がターゲットで、何が食ってくるのか分からないところが魅力。
ライトだからといって小物ばかりではなく、10kgオーバーのヒラマサなど大物がヒットする可能性だって十分あるのるのだ。
12月中旬に釣行したのは外房大原港の広布号。
野島幸一船長が向かった釣り場は太東沖の水深25~40m前後。
この海域で釣れるのはマハタ、カサゴ、チカメキントキなどの根魚やヒラマサ、イナダ~ワラサ、カンパチなどの青物、ほかにマダイ、ヒラメ、ガンゾウビラメなど様ざま。
ポイントに到着し、「バンブルズジグTG SLJ」40gをただ巻きするヨッシーにマダイがヒット!
これを皮切りに色いろな魚が釣れ上がる。
今回は、専用ロッドとジグを使い、冬の外房でSLJを堪能したヨッシー。
当日の釣り場は太東沖の水深25~40m前後。片舷に並んでドテラ流で広く探る
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ジグをフワフワさせて誘い、ただ巻きで食わせた
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リフト&フォールで底付近を誘いヒラメをゲット
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タイラバでも釣れる!!
広布号のSLJ乗合はタイラバもOK。
SLJと同じく道糸はPE1.2号を推奨。
小林久美さんはタイラバの速巻きで誘い、マハタ、マダイ、ウッカリカサゴをキャッチ
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タイラバのように落として巻くだけで色いろな魚が釣れるジャッカルのニューアイテム 「TGビンビンスイッチ」を試すと良型のイラが食った
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「ドラグがビャーッと出て、どうにも止まらなかったです。あれはスゴかった!」
大原港を離れた広布号が、外房のナいだ海を進んでいる。
「先日この船のスーパーライトジギングで、ヒラマサのデカいのを掛けたんです」というお客さんの話に、みんなが耳を傾けていた。
まるで囲炉裏端で酒を酌み交わしながらの釣り談義のようだ。
話を聞いている全員が同じように、ヒラマサの強烈な引きをイメージし、その手にリアルな重みを感じている。
妄想のヒラマサを軸にした、釣り人ならではの一体感。
大物の話は、いつだって釣り人の距離を近づける。
野島幸一船長が懸命に船を回して追いかけた。
だがヒラマサはラインをブチ切り、悠々と逃げてしまったそうだ。
「そうなんですかぁ……」
「マジかぁ……」
ため息が出る。
「でも、夢があるよね」
「ロマンだよ」
話を聞いた人たちは、一様に期待に満ちた笑顔だ。
そして自分のタックルを思い浮かべながら「アレにそんなデカいのが掛かっちゃったらどうしよう……」
当日は片舷に並びドテラ流しで探っていった
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大原のSLJは気軽で楽しく、 緊張感と期待感もある。
スーパーライトジギング──SLJは、非常にライトなタックルで楽しむジギングのことだ。
細身の専用ロッド、ジャッカル・バンブルズエクストロSLJは、一見すると頼りなく感じるほどのしなやかさ。
リールはシマノのスピニングなら3000~4000番台、PEラインは1号前後で、リーダーはフロロカーボンの4号がメイン。
使用するジグはタングステンの40~80gが多い。
本格的な青物ジギングは棍こ棒のようなロッドに、スピニングリールはシマノ8000~10000番台の大型。
PE4号、リーダー16号の太糸を使い、ジグは150g前後。
全体的にガッシリズッシリ、である。
外房の青物ジギングは、ヒラマサがメインターゲット。
端から15kg、20kgのモンスターを狙う釣りだから、タックルもゴツくなるのだ。
一方のSLJは「その場、そのときに釣れる魚」がターゲット。
青物根魚なんでもござれのフリーダムさだ。
ジグがコンパクトな分、大小取り交ぜ様ざまな魚が食ってくる。
ただし、「大小」のうち「大」がハンパない。
10月には船長、そして船長の愛息にして小学6年生スーパーアングラー・大威翔くんが、そろって14kg級のヒラマサを上げている。
PEは0.8号が多用されるSLJだが、広布号では1.2号を推奨しているのは、こういうド級が平気で食ってくるからだ。
1.2号で14kgのヒラマサも、かなりしびれる。
船長も150mほどラインを引き出されたそうだ。
すさまじい……。
気軽で楽しいSLJにも、ピリッとした緊張感とドキドキの期待感がある。
それが大原のSLJなのだ。
SLJの釣り方イメージ
基本は底付近をスローワンピッチジャークで誘い、根魚やヒラメなど狙う。
アタリがなければ宙層を1秒間にハンドル1回転のワンピッチジャークで青物を狙う。
マダイはジグをフワフワさせてアピールしてからただ巻きするのが有効。
フォールでアタることもあるのでサミングして糸フケをなるべく出さないようにする。
SLJタックル 大型のヒラマサがヒットすることもあるので、広布号では道糸はPE1.2 号を推奨している
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開始 10 分で不安がる。 今日はダメかも……?
SLJはジャッカル・プロスタッフのヨッシーこと吉岡進さんが得意とする釣りだ。
専用ロッドとジグを自らプロデュースし、全国に愛用者も多い。
夏の外房では、陽気な青物とマダイが乱れ咲いた。
「今日はマハタを釣りたいね」とヨッシー。
「何が釣れるか分かんないし、釣れればなんでもうれしいのがSLJ。おれは今日、マハタを狙ってみようと思うけど、ヒラマサのデカいのがくるかもしれないし、大ダイが出ちゃうかもしれない。ホント、夢があるよ」
太東沖、24mのポイントで釣りが始まったのは午前6時50分のことだ。
静かだ。
聞こえてくるのは、ジャークアクションによりウエもしいエンジン音だけだ。
「……おや?」
ヨッシーが弱よわしく言う。
「……これは……?」
釣友にして当コーナーの専属モデル(?)、イチロウこと鹿島一郎さんが言う。
「……もしや……?」
当コーナーの専属ライター、タカハシゴーが言う。
開始わずか10分で、早くも不安がるツリガチ!スタッフ。
「SLJ楽しいッスね!」
釣友にして当コーナーの若手のホープ、トモキこと板倉友基さんは、不安も何も、初めてのSLJが面白くて仕方ない。
トモキ自身はクロダイのヘチ釣りでその名をはせるガチ釣り人だが、SLJはビギナー。
それでもすんなり「楽しいッス!」と笑えるハードルの低さがSLJの魅力だ。
それにしても開始10分で「今日はダメかも……?」と不安がるヨッシー&ツリガチ!スタッフ。
彼らの忍耐力に問題があるのは確かだが、「何か釣れるはず」というSLJへの期待値の高さも示している。
これがガチジギングだと話はまったく別だ。
「一日シャクリ続けて1本でも釣れればサイコー」というぐらいの心持ちで挑むため、開始わずか10分程度でボヤくなどありえない。
ちょっとでも釣れないとすぐ不安になるSLJと、一日シャクってアタリすらなくても「今日は今日で楽しかったね」と笑えるMッ気の強いガチジギング。
同じ「ジギング」カテゴリーでもキャラクターはかなり異なる。
2流し目、32mダチ。
船中では小さなマダイが上がった。
その数分後に、ヨッシーもマダイを釣る。
「底付近でフワフワとジグを漂わせるようにしてから、ただ巻きしたんだ。 フワフワ、かーらーのー、ただ巻き。アタリがなければ、もう一度フォール。そしてまた、フワフワ、かーらーのー、ただ巻き。ホラ、またアタったよ!」
フワフワは、魚にルアーをアピールする動作だ。
「ん?」とマダイがルアーに気付く。
そしてただ巻きで弱よわしく逃げようとするベイトを演出する。
この作戦が見事にハマった。
水深35mのポイントを流すと、 船中のあちこちでガンゾウビラメがヒット
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途切れることのないラッシュアワー。 釣れる魚が変わり飽きることがない
「いや~、やっぱSLJはガチで楽しいわ!!」
ヨッシーが言う。
「自分で自由自在にアクションをつけられるのがたまんないね。ポイントの状況を読んで、ヒットパターンを見付ける。1尾ならまだしも、連続ヒットで正解だと確信できたときの気持ちよさといったら!」
フワフワからのただ巻きで、タカハシゴーもアタリを出した。
フッキングには至らなかったが、正解であることは確実だ。
「SLJのコツは、魚がいると信じることかな。これはおれの釣り全体のポリシーだけど、まず今ジグを落とした先に魚はいると信じる。釣れないときは『魚がいるのに食わないのは自分の釣り方が合っていないからだ』と考える。そうすると、シャクリにも熱が入って面白くなるでしょ?」
……耳を押さえて痛がっているのはタカハシゴーである。
釣れないと「ココには魚いないんじゃね?」とすぐ諦めモードになる男だ。
だがヨッシーの言葉を聞き、改めて気合を入れた。
何度かの流し変えとポイント移動のあと、あちこちで静かな歓声が上がり、大きく竿が曲がった。
青物ラッシュだ!
ツリガチ!取材班ではまずトモキ。
「たーのしー!」
満面の笑顔で細竿を曲げながら、上がってきたのはサンパク(イナダとワラサの間のサイズを指す、外房での呼称)だ。
イチロウ、タカハシゴーを飛ばして、すかさずヨッシーがイナダを釣る。
「青物はやっぱり早巻き。底をネチネチ誘って根魚を狙い、宙層ではスピーディーなワンピッチジャークで青物を食わせる。一回の投入で二度おいしい、SLJの鉄則だよ」
面白いことに、この日は流すポイントによって釣れる魚が集中していた。
朝イチのマダイ、青物に引き続き、ガンゾウビラメラッシュ、マハタラッシュ、カサゴラッシュ、そして再びのマダイラッシュなどが代わる代わる訪れた。
まるで山手線のように途切れることのないラッシュアワーに、飽きることがない。
根を知り尽くした船長が、どこをどう流すかで、その場にいる魚種がピンポイントで釣れるようだ。
「ホントならもうちょっとまんべんなく釣れるんだけどね~。底潮が冷たいのかな。同じ魚同士で固まってるみたいだね」と野島船長。
だれかが釣れば、自分にもチャンスがある。
広布号は気持ちのいい一体感に包まれる。
赤いのも青いのも釣ったから、 あとは茶色いのがほしいよ~。
ヨッシーはだれかが何かを掛けるたびに「マハタッ!?」と声をあげる。
自分にヒットしたときも「マハタッ!?」。
でも、なかなか釣れない。
「赤いのも青いのも釣ったから、あとは茶色いのがほしいよ~」とヨッシー。
マハタは2kg、3kgの良型が潜んでいる。
そして、マハタの鍋はうまい。
ツリガチ!取材陣では、イチロウが小マハタを釣っている。
「マハタッ!? 違うか」「マハタきたッ!? 違うか」を延々と繰り返すヨッシー。
沖揚がりの時間を迎え、もうサドンデスに突入している。
だれだ。
ビッグマハタを釣るのはだれなんだ。
ズドン!
バンブルズエクストロSLJが、ありえないほどの角度で根元からヒン曲がる。
竿を保っているのはヨッシー……ではなく、なんとタカハシゴーだった。
ここまでガンゾウビラメでほぞをかんでいたタカハシゴーに、ついにビッグマハタらしきビッグヒット……と思った瞬間、バツンと音を立てて1.2号のPEラインが切れてしまった。
腰を抜かして茫然自失のタカハシゴーに代わり、しっかり観察していたヨッシーが説明する。
「ジグをくわえて魚がゆったりと動くのに合わせて、竿もユラリ、ユラリと動いてた。かなりの大物だったと思う。その後に、ズドン! ときたね。 いったん根に潜られたけど、なんとか引っ張り出して、でも竿を変にあおった瞬間にバツンと切れた。原因はハッキリしてる。ドラグの締め過ぎだね」
ヒラマサに逃げられたお客さんの話を聞いていたタカハシゴーはドラグを締め気味にしていたのだが、その加減が分からなかったのである。
「敗因がハッキリしているのでショックはない。次戦頑張る」とコメントし、大原港を去ろうとしたタカハシゴーに、「確かに外房SLJには夢とロマンがあったね……」 ヨッシーがつぶやいた。
「それにしても何年も釣りしてんだからドラグぐらいちゃんと調整しなよ」
「大物掛けたことがないから分かんないんだよ」
「分かんないにもほどがあるよ。せっかくの大チャンスだったのに」
「ドラグ調整してくれなかったヨッシーが悪い」
「それ、逆ギレ」
小づき合うヨッシーとタカハシゴーの間を、真冬とは思えない柔らかな風が吹き抜けていく。
当日はバンブルズジグTGSLJの40gをメインに使った
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フロントはフラットデッキで釣りやすい。船内には予備のタックルを収納できるロッドホルダーがたくさん設置されている
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隔週刊つり情報(2023年2月1号)※無断複製・転載禁止