東京湾で餌木の釣りに続いてテンヤのスミイカがスタートした。
この釣りはシャコを付けたテンヤに乗せてシャクって掛ける伝統的な釣法で、その魅力は極先調子の専用竿を使い、ズシン!とくる乗りで、この衝撃に魅了されるファンも多い。
釣り場は中ノ瀬の水深20m前後が中心。
型はコロッケサイズと呼ばれる小型は少なく、250~300g前後を中心に500gに迫る良型交じりでトップ10杯前後とまずまず。
浅場で釣れるシーズン初期はテンヤのスミイカ入門にもうってつけ。
このチャンスにぜひともチャレンジしていただきたい。
釣り場は中ノ瀬の水深20m前後
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当日は3~4杯の人が多かった
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アベレージは250~300g
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秋の深まりとともに東京湾のスミイカシーズンが始まる。
スミイカ(標準和名コウイカ)には、餌木とテンヤの二通りの釣り方があるが、テンヤにシャコエサを付けて釣るテンヤスミイカは、最も伝統的な釣法で、コアなファンも多い。
テンヤスミイカの何が楽しいのだろうか?と多くの釣り人に尋ねると、「乗った瞬間の衝撃」という答えが返ってくる。
シャクり上げた竿をガツンと止めるスミイカの重量感は、根掛かりしたときの無機的な感触とも、マダコを乗せたときの粘着質な感触とも違う、イカを乗せたときしか味わえない快感だ。
それを知ってしまうと、冷たい季節風の吹く船上で、黙々とシャクりを繰り返すことも苦にならないから不思議なものだ。
10月に中ノ瀬や木更津沖でスタートするスミイカ釣りは、水温の下降につれて竹岡沖、鴨居沖、下浦沖とポイントが広がり、年明け2月いっぱいくらいまでが釣期となる。
水深は初期は15mの浅場から始まり、盛期には40~50mが中心になるが、ときには70mの場所を攻めることもある。
東京湾のスミイカは一潮ごとにサイズアップしていく
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取り込みは静かに海面からスミイカを持ち上げテンヤをつかみにいく
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極先調子の専用竿がテンヤをシャクリやすく乗りの衝撃を受け止める
この釣りは、なんといっても専用竿が使いやすい。
極めて先調子で胴がしっかりと作られた竿は、イカが乗ったときの衝撃をガッチリと受け止めてくれる。
代用の竿としては硬調のカワハギ竿や軟調のヤリイカ竿が使えないこともないが、専用竿の使い勝手には及ばない。
リールは小型両軸にPE1.5~2号を150m以上巻いておく。
先糸にフロロカーボン4号を2~3m結ぶ。
投入は船下に落としてもよいが、浅場の釣りではキャストして広く探る釣り方も有効なので、スピニングリールを愛用する人も多い。
いずれもドラグはきつめに締めて、糸が出ないように調節しておく。
テンヤは20号と25号を用意しておけばいい。
浅場と深場で重さを使い分ける人もいれば、シーズン中は25号で通す人もいる。
テンヤはオモリ部分を蛍光グリーン、蛍光ピンクや白で塗られたものや、ハリが黒く塗られたものが市販されているが、自分で好みの色に塗る人も多い。
どの色がいいかは、各自のこだわりが出るところだ。
テンヤの上40㎝のところから、枝スを出してスッテを付ける。
スッテはイカを寄せるから付けたほうがよいという人や、テンヤの細かな動きを邪魔するから付けないという人など、好みが分かれるところだ。
ベテランほどスッテを付けない傾向が見られるが、スッテのほうに乗りがいい日もあるので、用意しておくに越したことはないだろう。
エサは生きたシャコで、付け方は尾羽根の先端をハサミでV字に切り、切り口からテンヤに付いている串を差し込む。
串の先が頭に届くまで差し込んだら、輪ゴムを使って頭の固い所をテンヤに縛る。
初めての人は、船長に付けてもらうといいだろう。
ここ数年で流行しつつあるのが、シャコを厚さ1~1.5mmほどの透明ビニールで覆ってテンヤに縛る方法だ。
これはサバフグにシャコをかじられるのを防ぐために効果的とか。
イカの乗りも遜色ないようなので、試してみたいアイテムだと言える。
サバフグ対策用にシャコを透明ビニールで覆う
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釣り方の基本はステイとシャクリ。スミイカが乗るまで繰り返す
図1に釣り方の概要を示す。
基本的には、テンヤを底に着けて動かさずに3~10秒の待ちを入れたあと、糸フケを取ってから鋭くシャクる。
イカが乗っていなければ、ゆっくりと再び底までテンヤを落とす。
これの繰り返しになる。
イカが乗ると、シャクった竿が止められるので、そのままリールを巻き、徐々に竿先を下げて水平に戻し、たるませないように巻き上げる。
海面に出てきたら、ゆっくりと抜き上げる。
イカが大型だったり、掛かりどころが悪いときはタモ入れを頼もう。
スミイカをテンヤから外すときは、イカの甲側(色が濃いほう)から、目の後ろを挟んでつかめば墨を吐かれることはない。
スミイカを入れるオケにはあらかじめ持参したロープ付きスカリをかぶせておき、ハリを外したらその中にゆっくりと置く(投げ込むと墨をまき散らすことがあるので注意)。
沖揚がり前になったらロープ付きスカリに入れたスミイカを海中に下ろして墨を洗い落としておくと、家に戻ってからの料理が楽になる。
なお、スカリがないときは直にオケに入れておけばいい。
スミイカは傷みにくいと言われるが、気温が高い日はビニール袋に入れ、氷を効かせたクーラーにしまって持ち帰ろう。
その際、スミイカの甲の先にある突起をハサミで切っておき、ビニール袋に穴が開かないようにしよう。
シャクリのフォームを覚えて、竿の動きをテンヤに伝える
この釣りではシャクリは重要だ。
テンヤのシャクり方の一例を図2に示す。
利き手をリールの前方に置き、もう一方の手はリールに添えて竿先を水平または水平からやや上向きにするのが、テンヤスミイカ独特の構えだ。
この構えから、利き手を引きつけて竿先を45度の位置まで弾くように、鋭くシャクる。
これによりテンヤは海底から跳ね上がるような動きになる。
このようにテンヤスミイカは非常にシンプルな釣り方だが、シャクる力加減によって乗りのよしあしが分かれるのが、この釣りの奥の深いところだ。
隣の人には乗ってくるのに自分は乗らない、ということも当たり前に起こる。
この釣りで大事なことは、イカが乗る「間」を見つけることだ(図3参照)。
そのためには、止めの時間、シャクリの強さとシャクリの幅を変えながら、そのときのイカの活性に合った「間」を見つけることが、釣果アップにつながる。
スミイカの活性、潮の流れ、水深、釣り場などによって、そのときにベストな「間」は変わってくるのだ。
最適な「間」を発見したら、連チャンで乗ってくることも珍しくない。
とく注意したいテンヤの操作をあげておく。
それは、テンヤをゆっくり落とす、しっかり止める、シャクリ幅を大きくしない、という3点だ。
テンヤをゆっくり落とすのには、海底でテンヤがひっくり返らないようにするほかにも、落ちるテンヤをイカにアピールする効果がある。
スミイカはゴソゴソと動き続けるエサよりも、動と静をキビキビと繰り返すエサによく反応するといわれている。
そのためにもテンヤをしっかりと止めておくことは大切だ。
また、シャクリ幅が大きいと、サバフグに狙われやすくなる。
サバフグはスミイカよりも上層にいて、テンヤが底から大きく浮き上がるとそれを狙ってくる。
「小さくシャープにシャクって、ソフトに落とす」ことを心がけよう。
周りの人に乗って自分には乗らないときは、気持ちが焦ってテンヤの動かし方に無意識に力が入ってしまうので気をつけたい。
(左)取り込みは静かに抜き上げてテンヤをつかむ (右)親指と人差し指で頭部の付け根をつかみテンヤを外す
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専用竿で竿の動きをテンヤに伝えることができるフォームと竿の操作法を身に付けたい
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テンヤスミイカの魅力
テンヤスミイカは奥が深い釣りではあるが、決して難しい釣りではない。
時には愚直に、時には無心でシャクり続けることが好結果につながる釣りでもある。
根気よくテンヤをシャクり続けよう。
スミイカの乗りは突然にやってくる。
釣り人はその不意打ちに魅了される。
繰り返しになるが、乗りの瞬間の衝撃こそがテンヤスミイカの快感であると思う。
時代を超えて愛され続けている独特の釣趣、テンヤスミイカの魅力にどっぷりとハマっていただきたい。
シャクリが合えばはテンヤにしっかりと抱き付いてくる
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船宿information
東京湾奥鶴見 新明丸
090・4600・1225
▼料金=スミイカ乗合一人9500円(エサ3匹付き)
▼備考=予約乗合、7時半出船、マゴチ、フグへも出船。
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隔週刊つり情報(2022年12月1号)※無断複製・転載禁止