ライトアジといえば初心者でも手軽に楽しめる船釣りの定番だが、突き詰めれば非常に奥深い釣りでもある。
そんなライトアジで今、話題になっているのが「ライン引き」。
簡単に言うと「釣れた」ではなく「釣った」という感覚を知ることができる釣り方で、それを「攻めのライトアジ」と称して推奨する人たちが集まったのが東京湾ライトアジ研究会だ。
その定例会に同乗して取材したのは8月下旬。
東京湾奥平和島のまる八より出船し川崎沖、横浜沖、中ノ瀬などの水深10~20m前後を探った。
全般に食いの渋い状況ながら手慣れた人がそろっていたため釣果は15~30cm級を一人50尾前後とまずまず。
食い渋りはもちろん高活性時こそ威力を発揮する「ライン引き」。
気になる人は一度試してみては!?
ライン引きは今、東京湾のライトアジで浸透しつつある釣り方
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左からダイワフィールドテスターの高槻慧さん、アジ釣り一筋30年、千葉県佐倉市でアジ料理の専門店「釣りバカ一代」を経営する工藤俊さん、ロッドビルダー「大西釣具工房」を展開する大西了路さん。
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話題のライン引きってなんだ?!
SNSをやっている人なら最近目にしたことは多いだろう「ライン引き」という言葉。
本誌でも7月1日号でその一端を取り上げているが、具体的に今一つ理解できなかったという人のために、今回改めて「ライン引き」の全貌をお伝えしたい。
まず最初に、「東京湾ライトアジ研究会」なる存在。
これはライン引きを提唱する工藤俊さんを会長に、高槻慧さん、大西了路さんがサポートする形で結成されたコミュニティ。
東京湾のライトアジをもっと多くの人に、テクニカルゲームとして楽しんでもらおうというのが大まかな趣旨で、3人が提唱するのが「攻めのライトアジ」。
従来のライトアジはタナを取ってアタリが出るのを待つ、どちらかといえば「待ち」の釣りだったが、積極的にアタリを出して掛けにいくのが「攻め」のライトアジ。
「釣れた」ではなく「釣った」感覚を持てるため、釣果をのばせることはもちろん、ライトアジの新たな楽しみ方の発見にもつながっていく。
その「攻めのライトアジ」は「ライン引き」「食い芯理論」「デッドスロー巻き上げ」などからなり、ライン引きがその核心部分になる。
なお、ライン引きを始めとした釣り方はライトアジ研究会が新たに考え出した釣法ではなく、数を釣る上手な人は昔からやっていた釣り方。
その方法を分かりやすく発信するためにネーミングした、ということである。
ライン引きのメリット
一般的なアジの釣り方の説明では、タナが底上2mだったとすると、仕掛け(コマセカゴ)が着底したら1m巻き上げ、コマセを1~2回振り、さらに50cmほど巻き上げもう一度コマセを振り、50cm巻き上げ2mのタナに合わせる。
こんな説明をされることが多いはず。
コマセの煙幕をボワッ、ボワッと作り出し、その中に仕掛けを入れてアタリを待つイメージだ。
もちろんこの釣り方が間違っているわけでもなく、普通に釣れる。
一方のライン引きは、コマセを底上50cmからまき始め、帯状にまかれたコマセの中をハリスを張りながらタナまで持っていくイメージ。
何が違うのかと言えば、コマセのまき方と仕掛け(ハリス)の状態。
通常の釣り方ではコマセの塊の中にハリスが漂う状態になり、コマセと仕掛けが同調するまでにやや時間がかかり、かつハリスがたわんでいることもあるためアタリが出るまでのタイムラグもある。
場合によってはアジが付けエサを口にしていてもアタリとなって竿先に表れないことがある。
それがライン引きの場合、コマセをまき始めた時点から仕掛けと同調しており、かつハリスが張っているためアタリが出やすく伝わりやすい。
これが最大の利点になる。
アタリが早く出ることで人よりも早く釣り上げられ、いち早く次の投入に移ることができる。
アジ釣りで数をのばすには釣れているときの手返しが一番。
高活性のときはだれが何をやっても釣れるのだから、差が出るのは取り込んだ魚を外し、いかにハリスを絡ませないようにスピーディに再投入できるかということだけだと思っていた。
ところがライン引きは、仕掛けが着底してからコマセをまき、タナを取り、ハリ掛かりさせるまでをも含めて手返しという考え。
1尾をタイムロスなく釣り上げることで全体の手返しがアップするというわけである。
「ライン引きは食い渋ったときにも有効ですが、最も効果的なのは高活性時」という工藤さんの言葉は、そうした意味だったのである。
(左)ハリのフトコロ先端中央へエサがくるように付けるのがコツ。(真ん中)特別な道具や仕掛けがなくてもライン引きはできる。工藤さんは市販仕掛けを使用。(右)工藤さんの竿は自身がプロデュースした大西釣具工房のLTアジ斬・ZAN。
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ライン引きで掛けると上アゴの中心部へハリ掛かりしやすくなるためバラシも減る。
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ライン引きの基本と食い芯理論
では、実際にライン引きの釣り方はどうやるのか。
①仕掛け(コマセカゴ)が着底したら50cm巻き上げ、ハリスが落ち着くまで3~4秒ほど待つ。
②20~50cm幅でコマセを縦(帯状)にまいていく(この動作を「ラインを引く」と表現する)。
③タナに着いたらデッドスローで聞き上げる。
④アタリがなければ再着底させライン引き。これを3回繰り返すのが1セットになる。
①に関しては、ハリスがしっかり海底に落ちるまで待つ。
ハリス全長が2mだとして、50cm巻き上げると1.5mハリスが海底を這っている状態になる。
ここからラインを引き始めることですぐにハリスを張った状態に持ち込めるとともに、ベタ底のタナもリサーチできる。
ライン引きで最も重要となるのが②。
コマセをライン状にまくためには、シャクリ上げた竿先を止めたときにボヨンと跳ねたり、スッと下がらないようにすることが大切。
また、シャクった後の止めの時間もほとんど取らず、連続的にコマセをまいていく。
慣れないと難しいと感じる部分でもあるが、イメージ的には竿先を押し出すようにシャクるといい。
ライン引きはコマセと仕掛けが同調しているだけではなく、コマセの中でゆっくりと仕掛けを引き上げていくことでアタリを感じやすくしている。
③タナに到達してからもデッドスローで動かし続けるのはそのため。
ちなみにアタリは穂先にツツンと出ることもあるが、重さの違い、手感度で取ることが多いという。
いわゆるモタレと言われるような感触を見逃さず、違和感があればスッと合わせていくこともライン引きで結果を出すためには重要な要素。
逆にいうと、アジがエサを口にしただけの微妙な変化を感じ取りやすいのもライン引きの長所になる。
④もライン引きの特徴の一つ。とにかく止めてアタリを待つ時間がほとんどない。
常に仕掛けを動かし続けてアタリを取っていくのがライン引きなのだ。
初めてやるとなかなか思うようにいかないかもしれない。
そこで工藤さんが教えてくれたのが、初心者向けのライン引き。
仕掛けが着底して50cm巻き上げたら、素早くリールのハンドルをクルクルッと1mほど勢いよく回すだけでいい。
これである程度はライン状にコマセがまけるので、あとはスーッと聞き上げてアタリを取る。
まずはこんなやり方からライン引きに慣れていくといいとアドバイスしてくれた。
以上がライン引きの基本的な内容になるが、実はライン引きにはもう一つ別のコマセのまき方がある。
トゥイッチまきと言って、リールのハンドルを小刻みに回しながら小さくシャクっていく方法。
通常のライン引きが全体に長い帯状にコマセをまくイメージに対し、トゥイッチまきは小さなコマセの塊を出しながら縦長の帯を作るイメージ。
高槻さんはこのやり方を多用し、底上30~50cmからトゥイッチまきで一気に2mのタナまで持っていき、デッドスローで聞き上げてアタリを取る釣り方をする。
ほかにも「攻めのライトアジ」を構成する要素に「食い芯」と言われる理論がある。
いわゆる「潮目」とか「潮境」と呼ばれる上層と下層で潮の流れの変わる場所で、コマセを振っているときに微妙に重さの違いを感じる場所があるという。
その潮の流れの違う層より上にはアジは上がっていかないので、食い芯を見つけた場合は、それより上には誘わず、食い芯で止めてアタリを待ったり、食い芯の上下30cmでユラユラさせるとリアクションで食ってくることもあるそうだ。
というように、ライン引き一辺倒ではなく、その日そのときの状況でいち早くアタリの出る方法を探っていくのが攻めのライトアジのスタイル。
ライン引きを始めとしたこの釣り方は、だれでも簡単に楽しめるライトアジを難しくしているという意見もあるし、自分で釣ったという感覚をより強く持ててライトアジがさらに楽しくなったという人もいるだろう。
今回の特集を読んで、果たして皆さんはどう感じられただろうか。
トゥイッチまきを駆使する高槻さん。
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ライン引きを覚えるとライトアジの楽しみ方の幅が広がるはず。
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ONE POINT ADVICE ライン引きの手順
竿先を押し出すようにシャクるのがコツ。
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シャクリ上げた後に竿先が跳ねないように注意。
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聞き上げていくのはハリスを張るためでもある。
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