今シーズンの相模湾のキハダは好不調を繰り返しつつも、出船すれば湾内のどこかで必ず群れが見つかるほど魚影が濃い。
9月中旬、小坪港の洋征丸にて2日間に渡った取材日も早朝から群れを追って投入を繰り返す展開が続き、初日は8kg級のキメジ、2日目は28kgのキハダを取り込んだ。
「釣れたキハダの胃の中にはコマセのオキアミが入っているのに、反応がゾロゾロ船下を通ってもヒットが少ないのは、付けエサを見切っているとしか思えない。
ヒットに結び付けるポイントは、ていねいなエサ付けです」とは高木洋征船長のアドバイス。
例年10月は、オキアミの味を覚えたキハダの群れが船に着くようになり、じっくり船を流し込んで狙うスタイルで荒食いが始まる絶好期。
本編では流し込みで効果的な仕掛けや釣り方を紹介する。
(詳細は49ページからの第3特集参照)
★シーズン後半は、船を流してコマセでキハダを寄せて狙う〝流し込み〟の釣りで荒食いが始まる絶好期。
今回は釣行レポートとともに、流し込み釣りの要点を紹介しよう。
相模湾のコマセキハダ追跡リサーチのため小坪港の洋征丸を訪れたのは9月11日。
洋征丸では釣り人の技量やグループ人数を考慮し、船長が釣り座を指定するシステム。
したがって釣り座確保に躍起になることもなく、集合時間までに受付を済ませればよい。
受付で釣り座を確認し船に乗り込めば、釣り座にはコマセと付けエサのオキアミ、タオルが置かれており、貸し道具を申し込んだ人の席にはロッドキーパーに竿&リールまでもがスタンバイされる。
沖で見かける洋征丸はいつも大勢の釣り客が乗船しているが、こういった細かい気配り、サービスが人気の理由でもあるのだろう。
ということで当日も満員御礼。6時少し前に出船となった。
ここ数日は相模湾中央部の沖ノ山周辺で群れが見られていたようだが、当日は北東風が強いこともあり、西へ進路を向けた。
反応があるとの情報で向かった先は二宮沖の瀬ノ海。
西から東から続々とキハダ狙いの船が集結し、20隻ほどの船団が形成された。
ソナーに映し出された反応の動きを読み、進行方向へ先回りしたところで、「どうぞ。カツオ20m、マグロ30n、エビングは50mからやってみてください」の指示ダナでスタートとなった。
反応の動きは速いようで、ショートピッチでの打ち返しが繰り返される。
しかし、今年何度か釣行されている方ならお分かりかと思うが、何度も船下をゾロゾロと激アツ反応が通過するものの相変わらずアタリは遠く、周囲を見渡してもヒットを知らせる回転灯を点ける僚船もない。
群れの動きがスローに!?ヒットの連鎖に高まる期待
正午を過ぎたころから反応の動きが徐々に遅くなってきたようで、旋回ピッチも長くなり、追っかけから流し込みに近いような状況になってきた。
すると隣を流していた僚船の回転灯が点いた。
キハダがヒットしたようだ。
青物は最初の1本が口を使うとほかの魚も一斉に捕食を始めるといわれるが、これがスイッチとなったのか、回転灯を点ける船が1隻、また1隻と増えてきた。
しかし、ツキが回ってこないのか、アタリが出ないまま本船はラストの流しを迎える。
「食いそうだけどなぁ。アタらないかなぁ」と船長の念がこもったようなアナウンスの直後、「きたよー!」
左ミヨシの鈴木さんの竿に待望のアタリ。
すぐさま船長が操舵リモコン片手に釣り座までサポートに駆けつける。
「うちの貸し道具は手巻きですけど、初心者さんであろうと掛けてくれたら絶対に獲らせますよ」。
帰港後の雑談で船長が言っていた言葉だが、魚の引き具合を見ながら竿の構え方やドラグの調節、巻き上げスピードを的確にアドバイスしてくれるので、初めてキハダをヒットさせた人でも戸惑うことなくヤリトリができる。
鈴木さんは経験者で電動タックルを使用しており、慎重に巻き上げ取り込んだ獲物は8.4kgのキメジ。
当日の状況においては貴重な1本を引き当てた仕掛けはハリス24号8mだ。
「よし、もう1回やってみよう」
勝機が見えたのか延長トライ宣言。
そして投入してすぐに大ドモの阿部さんにヒット。
走りっぷりからこれは紛れもなくキハダのようだ。
船長が投入したマグロリングも効いて順調に巻き上げてきたが、なんと残りわずかなところで痛恨のハリ外れ・・・。
このままでは終われない。
ということで2日後の13日に再度の乗船。
当日は人数も少なかったことあり私も右トモ2番席で竿を出させていただいた。
後半戦のコマセキハダ・カツオ仕掛け例
沖揚がり間近のワンチャンス28kg級ゲット!
航行することおよそ1時間。
沖ノ山の周辺で船団が形成され、タナ40mでスタート。
速いピッチの追っかけ釣りの展開だが、だれにアタってもおかしくないような反応が何度も船下を通っていく。
しかし、相変わらずハリが付いたオキアミには食い付いてくれない。
「ガッツリ反応が入ってるんだけどなぁ」と首をかしげる船長。
状況が変わったのはやはり正午近くになってから。
これまで1~2分ピッチの打ち返しだったのが、反応の動きが落ち着いたのか、流すピッチが3~5分と長くなり、魚が口を使いだしたのか、回転灯を点ける僚船がチラホラ見え始めた。
すると舳先でメタルジグを振っていた野沢さんの竿にヒット。
2kgのカツオがキャッチされた。
今年のカツオはプレミア物。
写真に収めるのも今年初である。
同時にアタリが到来したのは右ミヨシ1番の林さんの竿。
引き込みからしてキハダに間違いない。
ところが林さん、電動リールでありながら電源コードを忘れてしまい、手巻きでのファイト。
電動リールでの手巻き上げは分が悪いが、すぐさま船長が横にきてサポート。
リングが投入されキハダをじっくり弱らせたところで、ウインチファイトに切り替え一定の速度で巻き上げていく。
ウインチはポンピング巻き上げのような豪快さはないが、キハダが不自然に暴れることが少ないのでサメにロックオンされるリスクが軽減されるといわれている。
セカンドランで200m近く引き出されたラインもジリジリと距離が縮まりビシが上がってきた。
すかさず船長がハリスをたぐり、常連の外川さんがタモを差し出す。
あうんの呼吸ともいえるような連携プレーで無事取り込まれたキハダは28kg。
林さんのTシャツの背中にプリントされた〝マグロ釣りたい〟の思いが通じた1本だ。
林さんの仕掛けはハリス24号6m。
エサは丸掛け。
この日長めの仕掛けを使用していた私を含むほかの人たちにはアタリは訪れなかったので、やはり追っかけ釣りのときは短めのハリスのほうが有効のようだ。
オキアミエサの付け方が明暗を分ける!?
時合は一瞬だったようで、14時近くまで反応を追いかけたものの、その後船中ヒットはなく沖揚がりを迎えた。
「いやぁ、魚はめちゃくちゃいるんですけど、今年のキハダは難し過ぎます」と高木船長。
このコメント、ほかの船長衆も口をそろえて言うが、それほど今年のキハダは一筋縄ではいかない。
「釣れたキハダの胃の中にはオキアミがしっかり入っているものもいます。それでもヒットしないということはハリが付いたエサを見切っているとしか考えられないですよ」と船長。
ハリが付いたエサを見切っているとすれば、いかにエサのオキアミをきれいに付けるかがポイントになる。
そのためにはやはりオキアミの鮮度が大事。
添加剤を加え、身を締めるなどの工夫もいいだろう。
いずれにせよ氷が入ったクーラーの中に保管し、形、鮮度がよいものを小出しに使うことだ。
取材時はまだ追っかけ釣りの展開だったが、その後の18日には船を流し込みコマセでキハダを寄せて狙う展開でもヒットが連発したとのこと。
本誌が発売される10月にはおそらく流し込みがメインとなっていると思われる。
その場合はエサ付けだけでなく、コマセワークも重要。
コマセの目的は魚を寄せるという意味もあるが、付けエサを食わせるためのカムフラージュでもある。
しっかりとコマセの帯を作り、その帯の中に付けエサを落とし込んでいくことだ。
気になるカツオの模様は!?
今年はプレミア扱いされるほどのカツオだが、取材後に大きな群れが確認されたとの情報を得た。
その日はカツオがシラスに夢中だったためコマセ釣りの船はノーヒットに終わったようだが、そのカツオがオキアミに好反応を見せるのも時間の問題と思われる。
出船後の前半にカツオのお土産を確保し、後半じっくりキハダを狙う。
そんな理想的な展開になることに期待したい。
シーズン後半の戻りガ ツオは食味も極上
出典:
図1・筆者のコマセワーク
アタリを出させるコマセワークと鉢スタンドリングの効能
図1は流し込み釣りでの私のコマセワークだ。
ポイントは2回目にコマセを振ったときに潮の抵抗でエサ崩れしないようにハリスをたるませた状態でコマセを振ること。
そしてビシを指示ダナより3~5m上まで巻き上げ、コマセの帯の中に少しずつ付けエサを落とし込んでいくイメージで、指で道糸を引き出しながらビシを指示ダナまで下げていく。
ご参考までに。
さて、秋の深まりとともに期待されるのがキハダのサイズアップ。
50kg以上、ときに80kgを超えるモンスターが釣れ上がるのも例年終盤の時期だ。
40kg級であればガチンコ勝負でものの数分で巻き上げてしまう強者も大勢いるが、そんなスタミナもパワーもテクニックも持ち合わせていない私は、ヒットしたら走るだけ走らせ距離を取り、マグロリングで弱らせてから巻き上げていくスタイル。
魚が元気なうちはスタンディングでヤリトリするが、リングが効いて弱ってきたら電動ウインチで一気に巻き上げていく。
あくまで私の経験から思うことだが、ポンピングをしながらの巻き上げはキハダが不自然に動き、サメにロックオンされがち。
またキハダの元気があり余っている早い時点での取り込みは大型ほど手間取りバラす確率も高くなる。
マグロリングを用意している船が増えているとおり、サメ対策とモンスター対策を兼ねたリングの使用は有効といえよう。
ちなみに私が使用しているリングは園芸用の鉢スタンドを代用したもの。
リングがダブルになっている形状はエラと胸ビレの両方の動きを封じ込める効果がある。
自由が効かなくなったキハダは仮死状態で上がってくることも。
そのためか、私がこの鉢スタンドリングと電動ウインチ巻き上げのスタイルにした年以降から今日までの6シーズンは、1回バラシがあったものの、サメ被害はゼロで掛けたキハダは無傷でキャッチしている。
また、ファイトタイムもリングを使っていない場合と比べ約半分に短縮することができている。
船に持ち込むと時折失笑されることもあるが、今ではこの鉢スタンドリングは私のキハダ釣りにおいては手放せないアイテムとなっている。
今シーズンのキハダの群れはめちゃくちゃ濃厚。
コマセ釣りの荒食いが本誌発売前に始まっている可能性は高い。
ヒットから取り込みまでの戦略例
左が自作の「鉢スタンドリング」、右が市販のマグロリグ
出典:
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隔週刊つり情報(2022年10月15日号)※無断複製・転載禁止