昭和の時代からマダイ釣りの本場として鳴らしてきた外房大原は、大ダイ狙いの釣り師が集まる関東有数の釣り場だ。
かつてはビシマと呼ばれる手釣り道具が使われていたが、大原のビシマといえば竹岡の手バネと並び、エビでタイを釣る伝統的な釣りと言われる。
その伝統は現在にも生きており、スピニングタックルに極細ラインと軽いテンヤを使った一つテンヤ釣法として受け継がれている。
シンプルな道具でマダイのパワフルな引きを楽しめる、というのが一つテンヤマダイの魅力だが、とくに夏から秋にかけてはアタリが活発で、水深の浅い場所を狙うことが多い、一つテンヤ入門に好適な時期だと言える。
大原から始まった一つテンヤは多くの釣り人に気軽にマダイ釣りを楽しめるようにした。
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専用竿にスピニングリールの組み合わせが基本
竿は全長2.1~2.4m前後の一つテンヤ専用竿が使いやすい。
専用竿は穂先が軟らかく、食い上げの小さいアタリもとらえてくれる。
リールはスピニングの3000番前後にPE0.6~0.8号を100m以上巻いておく。
リーダーはフロロカーボンの3号を3mほど結ぶ。
リーダーに直接テンヤを結んでもいいが、極小サイズのサルカンを介してリーダーよりやや細めのハリス(フロロカーボン2.5号)を50cmほどつなげておくと、根掛かりした場合に道糸とリーダーの結び目が切れるのを減らすことができる。
テンヤの号数の選択は悩むところだが、着底が分かる範囲でなるべく軽いものを使うのが基本だ。
最初は4号テンヤで開始し、潮が速かったり二枚潮気味で底が取りにくいときには6号以上、潮が素直に流れているときは2号というように重さを替える。
取材した富士丸の坂下隆一船長は、「軽いテンヤのほうがアタリが分かりやすい。
重すぎるテンヤだとアタリが出ないことがある」という。
軽重いくつかの種類のテンヤを用意していくようにしよう。
ドラグが頼りの釣りでもあるのでなるべく高性能なリールを使いたい。
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テンヤの色によっても食いが変わることがある。
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テンヤの色にもこだわりたい
テンヤはオモリとハリが一体化したものが古くから使われているが、近年は遊動式テンヤを使う人も多い。
エサの動きがいいので魚の活性が高いときには食いがよく、ハリ掛かりした魚が首を振ったときもハリが外れにくいというメリットがある。
対して昔ながらの親バリが固定されたテンヤは海中でエビの姿勢がよく、警戒心の強い魚に効果的と言われている。
テンヤの色にもこだわりたいところだ。
もちろん無塗装のテンヤでもマダイは食うが、時には夜光色がよかったり、赤金のメタリックカラーやホログラムシートのようにキラキラと輝く色がよかったりする。
色違いのテンヤを持参し、当日の当たりカラーを探すのも、この釣りの楽しさの一つだろう。
エサは冷凍のサルエビを使う。
出船前に各自に1パック配られるが、溶かしたあとはパックごとクーラーに入れておき、鮮度を保つようにする。
とくに夏場はエビが傷みやすく、暑い中を放っておくとエビの身がグズグズになり、頭が取れやすくなる。
エサをしっかり管理することも釣果アップにつながる。
大原沖はその真沖を中心に大陸棚が広がり、北は太東沖、南は岩船沖とマダイポイントは数多い。
航程は20~60分と、季節やその日の潮流によって差があるが、夏場は30分前後の近場が多く、水深は10~20mになる。
(左上)浅場といえどもテンヤは2~8号前後まで幅広く用意しておきたい。(左下)夏場はエサの保管にも気を遣いたい。(右)オーソドックスな固定式テンヤ。最近は遊動テンヤが人気。
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2通りのタナ取りを使い分けるのがコツ
一つテンヤマダイは、ポイント上を潮に乗せて船を流していく釣り方で、潮が速ければパラシュートアンカーを入れることがある。
船長の投入合図が出たら仕掛けを真下に落とす。
スルスルと出ていく道糸が止まったらテンヤが着底した合図だが、風が強かったり潮が速かったりする日は一瞬、道糸の出が止まっても、またスルスルと出ていってしまうので、糸が止まった瞬間を見逃さないように注意しよう。
水深は船長が教えてくれるので、道糸の色とマークを見てそろそろ着底だというときはとくに集中したい。
テンヤが着底したら、すぐにリールのベイルを戻し、ハンドルを巻きながら竿を起こしてテンヤを浮かせる。
これは、テンヤが底を引きずらないようにするためだ。
大原沖のマダイポイントは根が点在している場所がほとんどで、テンヤが底を引きずると根掛かりのリスクが高まる。
すぐにテンヤを浮かせれば、よほど荒い根でない限り根掛かりは防ぎやすい。
とくに夏から秋にかけて浅場の根周りを流す場合や、カジメ場を流す場合は、2投目からは海面からタナを取る方法も有効だ。
最初に取ったタナで道糸のマークを記憶しておき、2投目からはテンヤを底まで落とさずに海面からタナを取る。
これは根がきつい場所ではとくに効果的だ。
また、軽くキャストして、最初に取ったタナで道糸を止め、テンヤをカーブフォールさせてやるのも、広く探れる点で有効だ。
水深が変わっていく場合は船長からアナウンスがあるので、その場合は底からまたタナを取って記憶し直すようにする。
夏場はカジメ場を流すことが多い。
このときは、モゾモゾッとテンヤが何かにこすれるような感じが竿先に伝わってくることがある。
カジメは海底から1~2mの高さにのびている海藻で、テンヤがカジメに当たるとエサが崩れたり、ハリが引っ掛かったりする。
その場合にはタナをカジメよりも高く、底から2m以上浮かせてやる。
基本のタナ取りは底からで、まずは着底を見逃さないこと。
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タナの取り直しが重要
タナの取り直しは、一つテンヤ釣りの中で最も気を遣うところだ。
軽いテンヤは、船が潮に乗って流れるにつれ、上へ上へと吹き上げられていく。海底から1mのタナで待っていたのが、数分後には海底から3mに浮いていたりする。
このため、しばらくアタリを待った後はタナの取り直しが必要になる。
潮がほどよく流れていれば、最初に取ったタナより1~2mくらい余分に道糸を出せば着底するだろう。
このときは再度底から1m、というようにタナを取り直せばよい。
難しいのは、タナを取り直すと道糸がどんどん出ていって、底に着いたかどうかが分からなくなるときだ。
目安として、最初に取ったタナよりも5m以上道糸が出ていくようなら、いったん仕掛けを上げてから投入し直すのがいいだろう。
そして、投入のたびにタナが分からなくなり、投入し直しが続くようなら、テンヤを重くしてやる。
どうしても外れない根掛かりは竿と道糸を一直線にして引っ張ってみる。
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誘いの基本は3パターン
タナを取ったら誘いに移る。
一つテンヤの誘いの基本は誘い上げ、落とし込み、止めの3通りだ。
とくに夏場の浅い場所の魚はテンヤの動きに反応がいい場合が多いので、誘い上げと落とし込みを繰り返すのがいいだろう。
誘う速度は道糸のテンションを保ったままのゆっくりのほか、エビが跳ねるイメージでキュッとシャクったり、竿先を急に下げてストンと落としたりするのも魚の活性が高いときには有効だ。
これらの誘いを織り交ぜて、魚にアピールする。
とくに潮が動かないときほどテンヤを動かすことが効果的と覚えておこう。
とはいえ、常にテンヤを動かしっぱなしにするのではなく、止めを入れるのも大切だ。
テンヤを止めた瞬間、あるいは止めて数秒後にアタリがくることも多い。
ベテランはこれを「食う『間』を与える」と表現する。
また潮が速い場合は竿を止めてもテンヤは潮で流れているので、あまり大きく誘わないほうがいいときもある。
誘い方を変えて、その日の当たりパターンを見つけよう。
マダイのアタリは千差万別だ。
竿先を一気にひったくることもあれば、竿先のテンションが抜ける食い上げのアタリもある。
仕掛けを落とす途中で食い付いて、底に着いたかどうか分からない状態で、入れ直そうとしたらマダイが食っていた、なんてこともある。
とにかく違和感があったら即合わせしよう。
ハリ掛かりしたマダイは、断続的な激しい抵抗を見せる。
竿の角度は一定に保ち、魚が引っ張ったときにはリールを巻く手を止め、魚が止まったらリールを巻く、の繰り返しで徐々に魚を浮かせていく。
夏の浅場は小型が多い、などといって油断してはいけない。
マダイはいつの時期でも、どんな水深でも大物が食ってくる可能性はあるので、常に対応しておきたい。
今回取材に伺った富士丸でも、取材日の翌々日には4.2kgの大型が上がっている。
ドラグ設定は随時確認するようにしよう。
海面まで魚がきたら、500gまでの小型なら抜き上げてもいいが、1kg以上の魚は船長か隣の人にタモ入れしてもらう。
台風の襲来時を除けば、夏場の大原は穏やかな南風が吹き、釣りに好適な日が続く。
エンジンを止めて波の音を聞きながら大海原を流すこの釣りは夏はとりわけ快適であるが、熱中症に十分に注意して一つテンヤマダイを楽しんでいただきたい。
アタリがあったらとにかく即合わせが基本。
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隔週刊つり情報(2022年9月1日号)※無断複製・転載禁止