熱烈なファンが多いヒラメ。
東伊豆から茨城県沖にかけて、釣期は違えど解禁を迎えればこぞって乗合船が出船する。
その中で、ここ数年注目を集めているのが福島県の四倉~富岡沖エリアだ。
注目の理由は、
①アベレージサイズは3~4kg。
6~8kgの特大サイズもコンスタントに出る。
②そんなサイズの大判ビラメがトップ10枚以上釣れることも珍しくない。
③メバル類、ソイ類、カサゴ、イシナギ、ホウボウなどゲストも多彩。
といった具合に、サイズ、数、多彩なゲストと、どれを比べてもほかのエリアの基準を大きく上回るポテンシャルの高さにある。
本誌提携船宿では四倉港の弘明丸と富岡港の正栄丸が乗合船を受け付けており、毎年7月ごろよりスタート、翌年明けくらいまで楽しめる。
トップシーズンは旧盆明け(8月中旬)から10月にかけて。
前述のとおりトップが10枚を超える日も珍しくないうえ、昨年は3kg超えを一人で30枚以上釣った日もあったというから驚きだ。
主な釣り場は魚礁周り。根掛かりに注意しながら底から2~3mのタナを探る
出典:
ワンランク太めの仕掛けで6~8kg級の大判に挑む
当地のヒラメ釣りのタックルは、図のとおり一般的なヒラメ釣りと同じ胴つき1本バリスタイル。
主に魚礁周りを狙うことから、ヒット後に潜られてしまうこともしばしばあり、大判ビラメのほかイシナギなどのビッグゲストがヒットすることも。
それらを考慮し、仕掛けは自作するのであればハリスは一般的な6号ではなく、8~10号とし、ハリも親バリ、孫バリともにイセアマ15~17号など、ひと回り太めのスペックに仕上げるほうが望ましい。
標準オモリは50号なので竿はライトヒラメ用でもOKだ。
ただし注意したい点は道糸の太さ。
使用するハリスは特大サイズを見据えて8~10号だ。
それに対し道糸がライトスペックの1.5号ではアンバランス。
根掛かりすれば道糸が切れてしまう。
したがって道糸はPE3号が適しているといえる。
ポイントの水深は20~60m前後なので、リールは道糸が200m以上巻いてあれば小型両軸または小型電動など好みでよい。
途中でメバルやソイ類も狙ってみたい、ということであれば手返し効率を考慮して電動リールがおすすめだ。
海底から36mまで隆起する反応が魚礁。底から3mほどの高さがある
出典:
仕掛け &エサ
(左)ヒラメ仕掛けは大型に備えてハリス8~10号を推奨(右)メバル仕掛けは市販のサビキタイプでもいい
出典:
おすすめの仕掛けはこちら!
(上)イワシエサの付け方は、親バリは下アゴから上アゴにハリを抜く口掛け、孫バリは根掛かりしにくい背掛けがおすすめ(左下)当日は新鮮なイワシを持参する人が多かった(右下)冷凍イワシは出船前に船で購入できる
出典:
四倉沖のヒラメ五目仕掛け
エサはできるだけ新鮮なイワシを!
当地では千葉県や茨城県中南部エリアのように生きイワシの供給システムが整っていないため、エサは生または冷凍のマイワシ、いわゆる死にエサを使う。
大きさは20cm前後の大羽サイズ。
各自鮮魚店などで購入し持参するシステムとなっているが、取材した弘明丸では乗船時に1パック10匹入りの冷凍マイワシが500円で購入でき、2パックもあれば一日分として十分足りる。
基本的には死んだエサでヒラメを釣る、これが当地のヒラメ釣りの最大の特徴。
言い換えれば、それだけヒラメの魚影が濃いということだ。
先述した、一人で30枚以上という驚異的な釣果も冷凍マイワシをエサに使ってのこと。
信じがたいが本当の話である。
もちろん可能であれば生きエサ(アジなど)を持参するのもありだ。
また、タイミングよくイワシの回遊が見られるとエサ用に釣るときもあるので、イワシ用のサビキ仕掛けもバッグの中に忍ばせておこう。
しかしながら、入れ食いシーズンともなれば生きエサにも死にエサにも関係なくアタックしてくるので、まずは新鮮なマイワシを確保することに努力したい。
(上)筆者は生きアジを持参した (下)生きアジエサの付け方は親バリを背掛け、孫バリはフリーでいい
出典:
誘い上げでエサをアピール・保険のつもりの生きエサが奏功
7月23日、早朝4時半。
四倉港・弘明丸の乗船場に集まった釣り人は私を含め9人。
直前の情報によると刺し網にはヒラメがたくさん掛かっているが、なぜか釣りではあまり上がっていないようだ。
食い渋り時に有効なエサはやはり生きエサだ。
前日、南伊豆のキンメ釣りからの帰路途中に小田原の釣具店で生きアジを購入し、当日持ち込んでみた。
右舷に5人、左舷に4人の配席となり4時50分に出船。
最初のポイントは港を出てからわずか10分。
水深25mほどの魚礁周りからスタート。
ちなみに四倉沖を中心としたこの海域には大小多数の魚礁が入れられており、その数は200を超えるそうだ。
親バリをイワシの下アゴから刺して上アゴの硬い部分に抜き、孫バリは背ビレの後ろ側に浅く刺して、大判ビラメの宝庫の海底へ送り込む。
ヒラメの活性が高ければ置き竿にしているだけでも食ってくるが、基本はヒラメにアピールするようにエサを動かすことだ。
着底したら、まずは1m底を切る(ヒラメは落ちてくるエサに反応を示すので、このときにアタリが出ることが多い)。
エサが落ち着いたところでゆっくりと1m誘い上げ、止め数秒待ち、道糸を巻き取りながら竿先を下げる。
これを繰り返して3~4m誘い上げたら、仕掛けを底まで落とし込み、再び誘い上げていく。
アタリの出方は、大半がいきなりガツガツガツと大きく竿を絞り込んでくる。
ヒラメ40と言うが、それは飲み込みに時間がかかる生きエサの場合。
死にエサの場合はくわえたエサが暴れるわけではないので、飲み込むのも早い。
したがって一呼吸置いたくらいのタイミングで竿全体を引き上げるように合わせを入れればよい。
後は大判ビラメがバンバンヒットしてくる釣況をレポートできればよかったのだが、当日もまだヒラメのスイッチは入らなかった。
そこで、持参した生きアジを投入。
すると、着底してタナを2m切った直後にガンッ、ガツガツッと強いアタリで竿が引き込まれた。
竿を起こすとグワンッグワンッとヒラを打つような重量感のある抵抗が伝わってくる。
ヒラメは頭を上に向けると大暴れするので、強引なポンピングはNG。
ジワリジワリと底から浮かせたら、あとは一定のテンションでゆっくりと巻き上げることが大事だ。
途中何度か道糸を引き出される抵抗を見せたが、ようやく褐色の魚体が見えてきた。
しかもデカい!
常連の戸田さんの差し出すタモに収まったヒラメは76cm、5.5kg。
やったー!と喜びをあらわにしたいところだが、当地のヒラメ釣りをよく知る皆さん、羨望というより、まぁ普通だね、といった表情。
四倉アベレージ恐るべし。
生きエサパワーか!とほくそ笑んだが、生きエサでもその後のアタリは遠く、2発目のアタリがきたのは3時間後。
ヒラメとはまた違う強トルクの引き。
魚礁に入られてしまい、万事休すかと思われたが、しばしの駆け引きで引き出すことができ3.8kgのイシナギをゲット。
ハリスを10号にしていてよかった。
「ここの魚礁は高いから、イシナギが掛かってもたいてい潜られてバレちゃうんだけど、よくまあ上がったなぁ」と船長。
出船前にヒラメの釣況がまだ本格的ではないと聞いていたため、メバル狙いに転じた左舷の常連さんたち。
こちらはヒラメとは対照的に活性が高く、流し変えるたびに型のよいオキメバル(ウスメバル)がズラズラ~ッと入れ食い状態だ。
胴の間の戸田さんに至ってはメバルだけで80尾くらいの釣果。
オマケに最近はめっきり姿を見ることが減ったアイナメの1.6kgもゲット。
トモ側の二田さん、木村さんは釣具店で売っている中羽サイズの冷凍イワシを下バリに付けてソイ類を連発。
お二人ともソイ類だけで10尾以上ゲットしたようだ。
一方、ヒラメ一筋のメンバーは、私が生きエサで3kg級を追釣しただけ。
死にエサで狙っていた方がたは、たまにソイがヒットするもののヒラメからのラブコールは届くことはなかった。
ミヨシの佐藤さんも、「四倉のヒラメは長年通っていますが、ボウズは今日が初めてですよ」と完敗宣言。
当日の釣果は私が釣った2枚のみだったが、いよいよスイッチが入ったのか、翌週末は7kgを頭にトップ8枚、船中50枚の釣果。
もちろん死にエサでの結果だ。
入れ食いモードに突入すれば船中100枚超えもあり得る異次元の海。
これまでにないヒラメ釣りを体験してみてはいかがだろう。
3kg級が四倉沖の平均サイズ
出典:
四倉沖のヒラメ釣りイメージ
四倉流ヒラメ五目プラスαのお楽しみ
四倉沖はヒラメはもとより根魚の魚影もすこぶる濃い海域。
状況でメバル狙いに転じるのも面白い。
メバルは枝ス2~3号、幹糸4~5号の胴つき仕掛けを使う。
市販品であれば同じ仕様のサビキ仕掛けでもOK。
エサは幅7㎜くらい、長さ5~6cmにカットしたサバの切り身。
下バリにカタクチイワシや中羽イワシを付ければソイ類が掛かる確率がアップする。
その場合は下バリの枝スを4~5号と太めにしておくとよい。
弘明丸では、オマツリが頻発するような潮況でなければ自由に楽しめる。
ヒラメの釣果がもう十分なとき、それとは逆に激シブのとき、お土産確保の策としてメバル仕掛けの準備をしておいても損はない。
それが当地のヒラメ五目の楽しみ方でもある。
当日はオキメバルのほかソイやアイナメも交じった
出典:
(左)エサはサバの切り身(右)メバル専門で狙えば70~80尾は釣れる
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隔週刊つり情報(2022年9月1日号)※無断複製・転載禁止