カモシ釣りは、かつては職漁で行われていた釣法だ。
昭和の時代、竿は頑丈で硬く、リールのドラグ性能も悪かったときは、10kgクラスのヒラマサを取るのは大変だったという。
ヒラマサの疾走を強引に止めようとすればハリスを20号以上と太くしなければならないが、その太さだと食ってこない。
細いハリス(といっても10号前後)で大物を獲るために考え出されたのが、伸びのあるナイロンラインと遊動式テンビンの組み合わせだった。まずは仕掛け図を見ていただければ、カモシ仕掛けの異色さが分かると思う。
仕掛けの細部については、後ほど詳しく説明したい。
カモシ釣り基本タックル
カモシ釣りのシーズンは、春から秋になる。春は乗っ込みの大ダイ狙いのほか、春マサと呼ばれる2~4kgクラスの群れが入り、数が出る時期でもある。
夏場は乗っ込みが一段落したマダイが主役となり、秋からはヒラマサの本格シーズンを迎えるのが例年のパターンだ。
ポイントは勝浦~御宿沖にかけての水深40~60m前後で、海底は険しい根が無数に点在している。これらの根に着く小魚を狙ってヒラマサやワラサの青物が回遊するほか、マダイ、マハタも多く生息し
ている。
季節を問わず10kgを超える大型ヒラマサが食う可能性は常にあるので、太ハリスと3㎜径のクッションゴムは常備しておくようにする。
今シーズンはヒラマサの魚影が濃く、5月から乗合を開始した勝浦興津港の第二沖合丸では、全員がヒラマサの顔を見る日や、トップで7本を上げた日があった。
ヒラマサは8.2kg、マダイは6.3kgと大型も顔を出している。
この調子だと6月の春ヒラマサ後半戦だけでなく、夏~秋のシーズンにも期待できそうだ。
タックルは青物用でOK・カモシテンビンとカモシ袋はレンタル可能
竿
あらためてタックルと仕掛けを詳しく見ていこう。
竿は全長2m前後、粘りのある6 :4調子が使いやすい。
カモシ釣り専用竿のほか、青物用ワンピースロッドなどがよいだろう。
リール
リールは、道糸がナイロンラインの場合は20号が200m、PEラインの場合は5号が300m以上巻ける サイズがよい。
かつてはペンやフィンノールなどのトローリングリールを使う人が多かったが、今は電動リールを使う人のほうが多いようだ。
シマノなら3000番、ダイワなら500番あたりがよいだろう。
つまり、竿とリールはワラサ用のタックルなどで対応できるわけだ。
現在のタックルは、竿は粘りが強く、リールのドラグも高性能なので、道糸はあえてナイロンラインのクッション効果を狙う必要はなく、PEラインで十分に使えるが、それでも昔ながらのカモシ釣りの釣趣を楽しみたいという人は、ナイロン20号に5ヒロ(7.5m)ごとの目印を編み付けたものをリールに巻いておこう。
カモシテンビン&カモシ袋
カモシテンビンはこの釣りの最も特徴的なアイテムだ。
現在の関東の釣りで、遊動式テンビンが必須なのはカモシ釣りだけだろう。
道糸とクッションゴムの間は、リング付きの中糸(渋糸)で接続され、オモリもまたタラシ糸を用いてテンビンの下部にぶら下げる。
オモリの脇に木綿製のカモシ袋を付け、この袋にサンマミンチを詰める。
カモシテンビンやカモシ袋などの専用アイテムは、船で借りたり購入したりできるので、初めての人は船長に確認してみよう。
カモシ袋は水の抵抗を大きく受けるため、ハリスを固定すると大型魚に走られた場合にハリス切れを起こす原因となる。
このために遊動式が用いられている。
ハリスが引っ張られてもカモシ袋の抵抗を受けずに道糸が引っ張られ、竿先にダイレクトに引きが伝わる仕組みだ。
仕掛け
クッションゴムの太さは、ハリスの太さに合わせる。
ハリス4~6㎜号なら2㎜径、それ以上なら3㎜径がよいだろう。
ハリスの太さと長さはマダイ狙い、ヒラマサ狙いによって変わる。
マダイ狙いは4~5号を10m、ヒラマサ狙いは8号以上を6m、どちらも狙う場合には8号8m、という具合だ。
カモシ釣りでは海面からのタナは皆で合わせるが、ハリスの太さ長さはある程度自由にしてよい。
ハリは好みが分かれるところだが、ヒラマサ狙いにはヒラマサ12号前後、マダイ狙いにはイセアマ10号前後、グレ8号前後を使う人が多い。
いずれのハリも丈夫なタイプを選びたい。
竿とリール
取材日はカモシ専用竿のほか、ワラサなど青物用の電動リールタックルで釣る人が多かった
出典:
電動リールはPE5号程度を巻いた中型電動でOK
出典:
レバードラグタイプの中型両軸
カモシ釣りのベテランは、5ヒロごとに目印を付けたナイロンラインを巻いたレバードラグタイプの中型両軸を使っていた
出典:
カモシ袋の口金調整(コマセの出方の調整)
付けエサはサンマのぶつ切り・大型ヒラマサの特エサはイカ
付けエサはサンマのぶつ切りが船に用意されている。
中骨を外して、身から皮へとハリを刺し抜き、折り返して皮から身に抜く。
皮の銀色の部分を内側に隠すのは、コマセのサンマミンチと同化させるためと言われている。
ハリをサンマの身に埋めて隠すように付けるのが、マダイには効果的だ。
また、ヒラマサ狙いの場合には、短冊状に開いたサンマの身を、目立つように2つチョン掛けにする方法もある。
基本はサンマエサだが、大型ヒラマサに効果的な特エサがイカだ。
カモシ釣りに通う人は、ほとんどと言ってよいほどイカを持参してくる。
それはスルメだったりヤリイカだったり、短冊だったりゲソだったりと、各自好みは分かれる。
コマセのサンマミンチは、冷凍サンマをミートチョッパーで挽いたものを使う。
アジ釣りで使うイワシミンチに似たコマセだが、カモシ釣りでは海水を混ぜて軟らかく溶いて使う。
粒が残るくらいに軽く混ぜるのがコツで、ペースト状になるのは混ぜすぎだ。
緩くしすぎると後戻りが効かないので、一気に全部のコマセを溶かずに、釣りをしつつコマセの出具合を見ながら少しずつ溶かしていくようにする。
コマセの出方は混ぜる海水の量で調節できる。
緩く溶けば溶くほど出やすくなるが、あまり緩く溶きすぎると、タナに下ろした最初のひと振りでコマセが全部出てしまうので具合がよくない。
仕掛けを上げたときに、少し残っているくらいの溶き方がちょうどいい。
さらにコマセの出方は、カモシ袋の口金を曲げることで微調節できる。
への字に曲げればコマセは出にくくなり、反対に曲げれば出やすくなる。
溶いたコマセは専用のポンプを使ってカモシ袋に詰める。
コマセを詰めて、エサをハリに刺したら準備は完了だ。
ドラグ調節を今一度確認して、投入合図を待とう。
コマセと付けエサ
サンマミンチを海水でほどよく溶いたコマセを専用のポンプを使ってカモシ袋に詰める
出典:
付けエサは、サンマのぶつ切りの中骨を取り、身を二つ折りにしてハリに刺す
出典:
食いが渋いときは、中骨を取ったサンマの身を2つチョン掛けしてもいい
出典:
コマセを詰め直すときも、竿先の手前までテンビンを巻き上げるとカモシ袋がつかみやすい
出典:
コマセを2~3回振り出しタナに合わせて置き竿で待つ
船長は海面からのタナを指示する。
第二沖合丸の和佐間陽一船長の場合、「30m、20ヒロ」というように、メートルとヒロの両方で教えてくれるので、道糸がPEラインの人も目印付きナイロンラインの人も、どちらにも分かりやすい。
まずはテンビンを先に入れ、ハリスを送っていって最後にハリを落とすのはコマセダイの投入方法と一緒だ。
指示ダナからさらにハリス分落とす。
指示ダナが30mでハリス6mならば、36mまで落とすという具合だ。
コマセの振り方は図を参照してほしい。
カモシ釣りの釣り方イメージ
竿をゆっくりあおって仕掛けを持ち上げたところで、ストンと竿先を海面まで下ろす。
ここで上に持ち上げられたカモシ袋は反転し、下を向く。
このときに袋の口からコマセがパラッと出る。
オモリが落ちたら3mほど巻き上げる。
そして竿を持ち上げて、落とす。
これを2~3回繰り返しながら指示ダナに合わせる。
アタリは置き竿にして待てばよいが、ヒラマサの活性が高いときには、タナに合わせた途端に食ってくることもある。
合わせは基本的に向こう合わせでよい。
アタリが小さい場合は、竿を持ち上げて聞き合わせを入れてやり、十分な重みが伝わったところでヤリトリに入る。
ヒラマサは大型になるとハリ掛かり直後に一気に道糸を引き出し疾走する。
ドラグは事前にハリスの強度に合わせてしっかり調節しておこう。
魚が止まったら休ませずに巻き上げるようにする。
カモシ釣りでヒラマサを掛けたときは、取り込み方も独特だ。
テンビンとオモリは船の中やコマセオケには入れないということを覚えておいてほしい。
竿先にテンビンがくるまで道糸を巻き取り、キーパーにセットしてから竿を起こしてハリスを手にする。
テンビンを放し、竿先にぶら下げた状態でハリスをたぐるのがカモシ釣りの取り込み方だ。
ヒラマサはハリスを手にしてからも強い突っ込みをみせる。
このとき、テンビンやオモリを船の中に入れてしまうと、魚が走ったときに糸を送り出せずバラシの原因になってしまう。
ゆえに、テンビンは竿先にぶら下げた状態にしてハリスをたぐり、魚が走ったときはハリスを放せば、竿の弾力とドラグで引きをいなすことができる。
ヒラマサが海面に見えたら、円を描くように泳がせながらハリスを徐々にたぐってタモまで誘導する。
首尾よく大ダモにヒラマサがスッポリと入った間の感動は、一度経験したら忘れられないものになるだろう。
取り込みのイメージ
釣り船予約サイト「釣割」のスタッフがオススメする釣り船はこちら!
【外房(千葉県)ヒラマサ船】人気ランキング
【外房(千葉県)ヒラマサ船】価格ランキング
隔週刊つり情報(2022年7月1日号)※無断複製・転載禁止