乗っ込みの大型アオリが浅場に回ってきた。
ここでは早くも2㎏級が釣れだした相模湾の餌木シャクリ船でビッグサイズを手にするツボ、さらに超浅場に突っ込むアオリを狙うボートエギングの要点をまとめてみる。
相模湾腰越港の蒼信丸では3月から数多くの2㎏オーバーが浮上している。
「乗っ込み第一陣でしょう。例年より1カ月早いですね」と関塚船長。
主因は高めに推移する海水温の影響だろうが、とにかくアオリイカファンとしては見逃せない状況なので早めに出かけたほうが幸運に恵まれそうだ。
蒼信丸の釣り方は10~12号の中オモリを使う餌木シャクリ(餌木のシャクリ釣りの通称)。
これから6月にかけてはほぼ毎年2~3㎏級、ときに4㎏級も飛び出すこの釣法のキーポイントをチェックしてみよう。
中オモリで道糸を立て、アオリイカの着き場をピンポイントで攻めていく
出典:
【SECT.1】春~初夏の餌木シャクリ
タックルと仕掛け
ロングロッドの有効性
小型両軸リールにPE1.5~2号を100mくらい巻いた、両軸タックルを使用。
これ以上道糸を細くするとマーカーが見づらくなり、ご同輩の老眼世代はタナ取りに苦労するので避けたほうがいい。
竿は汎用性が高い2メートル前後、7:3~6:4調子のゲームロッドで対応できるほか、3m前後のアオリイカ専用ロングロッドもある。
現場で確認するかぎり、餌木シャクリファンは後者のロングロッドを圧倒的に好むようだ。
ロングロッドのメリットの一つは、てこの原理(支点・力点・作用点)。
手元のシャクリ幅が小さめでも竿先の振れ幅は大きくなって、餌木がしっかり動いてくれる。
もう一つは、アオリイカが警戒するであろう船影(船の直下)から、餌木が少し遠ざかること。
水深15m前後の浅場を流すこともある乗っ込みアオリのシーズンに、このリーチ差はかなり有効と思える。
蒼信丸の仕掛けは10~12号の中オモリにハリス4~5号4m、餌木はノーマルタイプの3.5~4号をセットする。
加えて関塚船長は「餌木をつなぐスナップが大きすぎると、アオリの乗りが悪い」と言うから、餌木専用スナップのS~Mサイズなどをチョイスするといい。
中オモリ式のアオリイカタックル&仕掛け(蒼信丸の例)
(左)軽量&コンパクトな小型両軸リールでシャクリ疲れを軽減(右)移動時や取り込みに重宝するY字の竿掛け
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アオリ専用のロングロッド。細身軽量なので片手でシャクることができる
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シャクリの要点
激しい動きは逆効果?
餌木シャクリの手順は非常にシンプルで、それゆえに心地がいい。
道糸のマーカーを数えて、まずは中オモリを指示ダナまで下ろす。
餌木が沈んでハリスが張ったら鋭くシャクり、すぐに竿先を振り下ろして餌木を沈める。
そして再びシャクる。
この操作を6~8秒置きにキュッ、キュッと繰り返していく。
注意点は「14・・・17・・・15・・・」という具合に、海底の起伏に合わせて刻こくと変わるタナのアナウンスを聞き逃さないこと。
それに合わせて道糸を出し入れして調整しないと、タナぼけや根掛かりでチャンスを逃してしまう。
また、今回の取材ではシャクリの強さと間の取り方について考えさせられる場面があった。
大半の方がビシッ!ビシッ!と強くシャープにシャクる中、その半分くらいの力加減でゆったりシャクり、合間の待ちを12~15秒も取っている釣り人がいたのである。
乗り渋った当日の状況下で1㎏級を2杯上げてトップになったその人は、左舷ミヨシの広瀬さん。
餌木シャクリ歴20年という広瀬さんは「乗っ込みシーズンは、緩めにシャクって待ち時間を長めに取ることが多い」と言う。
餌木を激しく機敏に動かして反応するのは食欲旺盛な秋の若イカ。
成熟した春の大型には、逆に警戒されることがあるのかもしれない。
もちろん活性が高いか低いかで状況は変わってくるので絶対とは言えないけれど、シャクリ方がヘロヘロで餌木の動きも緩慢な初心者に当日一番のジャンボアオリが乗ってくるケースはよくある話。
鋭くシャクって反応がなければ、やや弱めにシャクって合間のステイ時間を長めにしてみる・・・。
引き出しの一つとして試す価値はありそうだ。
中オモリの餌木シャクリ・基本と浅場対策
疲れたときはテンヤスミイカ風の握り方でシャクると、かなり楽ちん
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緩めのシャクリでアオリを乗せていた広瀬さん
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餌木のセレクト
腹色は保護色を念頭に
昔も今も明確な答えがないのが、餌木のカラーセレクト。
ここ数年は色に加えてケイムラ発光タイプや、イカが好む波長の光を発するタイプなども登場してわれら釣り人を迷わせる。
定番カラーはピンク、オレンジ、オリーブ、ブラウン、パープルなど。
これら数色をローテーションして、よく乗る色を探していく。
先ほどの広瀬さんや、おなじくベテランの金井さんに使い分けを聞いてみると、釣りスタート時は派手な色合のピンクやオレンジでアオリイカの反応を見て、日が高くなるにつれてブラウンやオリーブなどのナチュラル系のカラーに切り替えていくそうだ。
これに腹色(下地)を加味して使用する餌木を考えていくと、この釣りはさらに奥深く楽しめる。
腹色を選択するときのキーポイントは、背景に溶け込む保護色。
例えば下写真は餌木を下から見上げて、背景は曇天や濁り潮のやや薄暗い海面と仮定した状態。
左からゴールド、マーブル、レッド、スケルトン(透明ボディ)で、暗い背景に溶け込んで最も目立たないのはレッドとなる。
逆に考えれば、晴天や澄み潮で海面がとても明るいときはゴールドが背景に同調する保護色カラーというわけだ。
それで必ず釣れるわけではないものの、指標があるとカラーセレクトの迷いは軽減。運よくビッグサイズが乗れば、うれしさも倍増する。
腹色の見え方比較。左からゴールド、マーブル、レッド、スケルトン。背景が暗いとレッドが保護色カラーとなる
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【SECT.2】ボートで攻める超浅場
どんどん移動してアオリの着き場を探す
産卵期のアオリイカは水深5~10mのごく浅い根周りまで突っ込んでくる。
この水深帯は餌木シャクリやティップランなどの大型船では浅すぎて攻めづらく、陸っぱりからエギングするにも手が届きにくい穴場だ。
そんなポイントを直撃できるのがボート釣り。
これから6月いっぱいまでが狙い目のシーズンとなり、内房や三浦半島の西岸、そして伊豆半島にあるレンタルボート店にボートエギンガーたちが足繁く通う。
好ポイントになるのは前記した水深帯の磯際や藻場の周り、沈み根など。
手こぎボートであればアンカリングし、エギング用のスピニングタックルでアオリイカが着きそうな根周りに向かって餌木をキャストする。
まずは1杯、に出遭うためのキーポイントは何はともあれ場所選び。
1カ所で30~40分粘ってアタリがなければアンカーを上げ、50mくらい移動して再びアンカリング。
こうしてキャストエギングを繰り返し、ベストポイントを探し当てていく。
ボートを移動し水深5~10mの磯周りを転々と探る
2㎏を超すアオリは、水深5~10mの浅場で青物のように横走りする
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根掛かりを避けるボートエギングのコツ
浅い根周りのキャストエギングは、どうしても根掛かりしやすい。
外れないときは移動可能なボートの利点を生かし、餌木の直上までこぎ進んで道糸を引っ張ると外れる。
とはいえ、ときに高切れを招く根掛かりのリスクは避けたいから、次のような下準備を行うといい。
①餌木を打ち込むエリアを定め、その直上にボートを仮止め(アンカリング)する。
②餌木を海面に落とし、竿をあおって道糸を送り出しながら「何秒で着底するか」をカウント(海中に吸い込まれる道糸が止まれば着底のサイン)。
③続いて2~3段シャクリのイメージでキュッ、キュッと竿をあおって餌木を跳ね上げ、再着底するまでの秒数をカウントする。
これで下準備は完了。
そこから風上へ30~40mくらいボートを移動させてアンカリングし、キャストエギングの本番開始だ。
②が「20秒」、③が「6秒」と仮定して話を進めてみよう。
餌木をポイントにキャストしたらフリーフォールで着底寸前の「19秒」までカウントダウン。すかさず糸フケを巻き取ってキュッ、キュッと2~3回巻きシャクリして餌木を跳ね上げたら「5秒間」テンションフォール。
後はこの繰り返しで手前まで誘って、餌木を打ち直す。
要するに餌木が着底する手前でシャクリを入れて、底付近のタナをトレースしながら根掛かりを回避していくわけである。
参考までに機動力のあるエンジン付きボートであれば、流し釣りのティップランエギングも可能。
ただし30g前後のティップラン専用餌木は、水深10m前後の浅場攻めには向かない。
重すぎて底を引きずるケースが増え、根掛かりが頻発するからだ。
こうした浅場で楽しむときはノーマルタイプの餌木のヘッドに1号前後のナス型オモリをプラスして、ギリギリ底が取れるくらいに調整する。
巻きシャクリして再着底させるときもゆっくりフォールして滞空時間が長くなり、根掛かりが軽減するはずだ。
とはいえ、浅場のティップランは道糸の微かなフケ具合で着底が分かる、手練れのエギンガー向け。
ビギナーが手を出すと根掛かり連発の憂き目に遭うから注意してほしい。
ボートのキャストエギングタックル
ボート釣りのキャストエギング
ドラグが軽く滑るくらいに設定してシャクると、手首が疲れにくい
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浅場でティップランを楽しむときは、ノーマルな餌木にオモリ1号前後を追加。スナップに付ければOK
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隔週刊つり情報(2021年5月1日号)※無断複製・転載禁止