昨年の春ヤリ模様を振り返ってみると、ちょうど2月末から3月頭にかけて各地でXデーと呼べるような爆釣状態の日が続いた。
時期的には昨年並みとなるのだろうが、ちょっと様子が違うのは、やけにスルメイカの勢いがあること。
とくにそれが顕著だったのは東京湾口部に当たる洲ノ崎沖や沖ノ瀬。
各船スルメだけでトップは1束オーバー、船上は時ならぬスルメの船上干しで満艦飾といった光景が当たり前のように見られた。
この状況をどう見るか、相模湾のイカ名人・yaccoさんこと小川泰子さんに聞いてみた。
各船2隻出し3隻出しの大盛況。予約は早めに入れよう
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今年はやっぱりスルメが多い!?
「毎年この時期にはスルメ交じりの展開になりますよね?」
yaccoさん(以下y)「例年12月ごろから1月、2月、3月とスルメイカの回遊が見られますが、今年はやや遅れて回遊してきているんじゃないかと思います」
「いつもの年に比べてスルメイカが多いと感じますか?」
y「沖のポイントへ行かない船も、三戸浜沖辺りで束釣りしてた日がありましたから、場所を問わず多いと思います。ただポイントによっては、例えば沖ノ瀬の水深200mより深い所を狙っている船は全般にヤリイカのほうが多い日もあるみたいです」
「洲ノ崎沖にはヤリイカがいないんですかね?」
y「ヤリイカもいるんでしょうけど、今はスルメの活性が高いので先に乗ってきてしまうのかもしれません。ちなみに釣れるのはスルメイカというより、やや小ぶりのニセマイカと呼ぶサイズが多いですね」
「4月もスルメ優勢の傾向が続きますかね?」
y「分かりません。洲ノ崎沖~沖ノ瀬では今後も新たにまとまったスルメの群れが回遊してくるかもしれませんし、回遊してこないかもしれません。ただ、例年のパターンだと今釣れているスルメイカが抜けてしまってもヤリイカは残っていて、数は少ないながらもスルメイカ交じりで4月も釣れ続くと思います」
ヤリ・スルメ両方を視野に入れたタックルと仕掛け
「そんな状況を踏まえた上で、タックルのアドバイスをお願いします」
y「竿は普通のヤリイカ用、スルメイカ用で大丈夫です。リールに関しては、普段ヤリイカに使っているよりも一回り大きなサイズのほうがいいかもしれません。スルメイカを多点掛けする可能性があるためパワーがあったほうがいいですし、釣り場の水深が200m前後と深く、潮の流れが速いことも多いからオマツリも頻発しますので高切れなどに備えてPE3~4号の道糸が500mほど巻けるラインキャパシティがあったほうが安心だからです。最近はPE3号を使う人も多いですが、私は強度を重視してダイワの500番にPE4号を500m巻いています。ワンサイズ下のリールで釣りたい方は、念のため予備のリールを持参しておくといいですね」
yaccoさんがスルメ交じりの時期に使うのはシーボーグ500JP。PE4号を500m巻いてある
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各船の標準オモリは150号
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春のヤリ・スルメ仕掛け例
「肝心の仕掛けについてですが」
y「直結仕掛けとブランコ仕掛けがありますが、イカ釣りに慣れていない方はブランコ仕掛けのほうが確実だと思います。ブランコ仕掛けでも十分多点掛けは期待できます。サバが多いときや、どうしても直結仕掛けでやってみたいという方は、少ないツノ数から始めてみるといいでしょう」
「一番迷うのはプラヅノのサイズですが・・・」
y「これはなかなか難しいところでして。11㎝、14㎝、18㎝、全サイズの仕掛けを用意してくださいとホームページなどに書いている船宿さんもけっこうあります。手っ取り早いのは予約時に確認する、または出船前に船長や常連さんに今は何センチのツノがいいですか?と聞いてみることですね」
「具体的な使い分けはありますか?」
y「ニセイカサイズのスルメイカが多い現在はブランコ仕掛け、直結仕掛けとも14㎝が一番おすすめです。ヤリイカも良型が主体なら14㎝のツノでも乗ってきますし、ブランコ仕掛けの場合はサバが多いときでも飲み込まれにくい。カンナも頑丈な作りになっているので強度面での不安も少なくなります」
「18㎝を使うシーンは?」
y「スルメイカ主体で、新たに回遊してきたフレッシュな群れの場合や、ポイントの水深が深いときなどは18㎝は効果があります。ただ、イカがスレてくると乗りが悪くなってしまうことがあります」
「 11㎝は?」
y「今後ヤリイカメインになってきたら11㎝もいいですね。とくに小型のヤリイカが多いときには14㎝より乗りがいいこともあります。その日、そのときの状況に対応するには、やはりある程度の準備は必要です」
プラヅノ18㎝
スルメ主体に釣れるときは18㎝もあり。ただし条件次第では乗りが悪くなることも。
プラヅノ14㎝
スルメ交じりの季節はオールマイティ。ヤリイカも乗ってくる。ミラー系が効果的とか。
プラヅノ11㎝
ヤリイカ主体になったらやっぱり11㎝。赤白スッテなどを交ぜるのも効果的。
反応の出方と誘いのパターン
「現況はどんな狙い方ですか?」
y「相模湾、三浦半島、東京湾奥から出船するイカ船が主に狙っているのは沖ノ瀬~洲ノ崎沖ですが、ポイントはいくつかあるようで、船数は多いものの密集した大船団とはなっていません。水深は深くて180~200m前後、浅いと130~140m前後から110mくらいまで。今年は例年に比べて潮の流れが緩い日も多いようで、イカの移動も遅いときはじっくり流し込んでいきます。そんなときは何回か再投入できますが、オマツリ防止のため毎回ツノを投入器へしまってからオモリを遠くへ投げ入れてください。反対に潮の流れが速く、イカの移動も速い場合は一流し1回の投入、いわゆる1回旋回となります。イカを乗せるチャンスは1回しかないため、投入に遅れない、投入に失敗しないことが大切になります。投入で仕掛けが引っ掛からないように潮回りの間にハリスが絡んでないか、ツノが投入器にきちんと収まっているか、周囲を確認しておくといいでしょう」
1回旋回のときは合図と同時に素早く投入して、なるべく早く着底させたい
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「スルメとヤリイカを釣り分けることはできますか?」
y「それはちょっと難しいですね。ただ反応の出方、要するに船長のタナの指示でヤリイカなのかスルメなのか、ある程度の推測はできます。例えば底のほう、おおむね下から10mくらいまで探ってという指示の場合はヤリイカ主体、もしくはヤリイカ交じり。もちろん底反応でもスルメばかりということもあります(こんなときはスルメの活性は低いです)。同じ底からの指示でも、底上20~30mくらいまで探るようにと幅広く出される場合があります。こんなときはイカの活性が高いことも多く、スルメだったりヤリイカだったりします。あとは宙層反応の指示。だいたいスルメなんですが、イカの動きが速いときに宙層に反応が出るケースが多いですね」
反応が出る3つのパターン
「指示ダナごとの狙い方の違いは?」
y「底反応のときは、とにかく一度、オモリを底へ着けてから誘っていきます。さっきも言ったように1回旋回のときは、いかに早く着底させるかがキーポイントになることもあります。オモリが底に着いたらブランコ仕掛け、直結仕掛けともに仕掛け全長を考えて、タナの中に仕掛けが入るように上へ上へと誘っていきます。誘い方は、シャクリ上げた竿先をスッと振り下ろしたらリールを巻き、この繰り返しで上へ探っていくのが基本になりますが、直結仕掛けの場合は電動でタダ巻きしたり、巻きながらシャクリを入れたりもします。ヤリイカ主体になったり、底でしか乗らないようなときは、誘い上げずに底でネチネチとシャクリを繰り返すやり方もあります。いずれの場合も、乗りがなければとにかく巻き落とし。巻き落としは最も簡単で有効な誘い方なので、頻繁にやったほうがいいですね。巻き落としをすることでオマツリ防止にもなります」
(左)誘いの基本動作は竿一杯シャクリ上げ・・・(右)ストンと振り下ろすように竿先を下げる
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「宙層反応の狙い方は?」
y「海面から○~○mと宙層反応の指示が出た場合は、指示ダナの上限手前からサミングしながら落とし込んでいく方法と、指示ダナの下限まで一気に下ろしてから誘い上げていく方法の2パターンあります。どちらが有効かはそのときの反応にもよるので船長のアナウンスをよく聞いておきましょう」
「ほかに釣果アップのコツはありますか?」
y「イカの乗り、触りを見逃さないようにすることです。底反応、宙層反応ともにイカの群れが濃いときは落下中の仕掛けが止められたり、フワフワして通常の落下とは違う動きになります。それが分かるとイカがツノに触ったときに合わせることができるので、釣果アップにつながります。落下中、または着底直前の仕掛けの動きの変化を分かりやすくするには、サミングをしっかりやることが大切です。タナ(底)が近くなったらリールのスプールに親指を強めに当て、落下スピードをコントロールします。このときに親指に伝わる感触でイカの触りを察知します。道糸の動きに変化が出ることもあるから、そちらも注意しておいてください」
サミングでイカの触りが取れるようになれば一人前
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巻き上げは中速よりやや速め。ウネリがあるときは体を使ってかわしていこう
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「ありがとうございました、勉強になります」
y「4月もスルメ優勢なのか、ヤリイカ主体にシフトしていくのか。どちらになるかは分かりませんが、どのような状況になってもいいように仕掛けの準備を整えて、反応に応じた狙い方のパターンを覚えておく。そうすれば4月になっても沖イカを十分楽しめると思います」
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隔週刊つり情報(2021年4月15日号)※無断複製・転載禁止