ヨッシーこと吉岡進がエサ、ルアー釣りを問わず、様ざまな釣り物にガチでチャレンジしていく連載「ツリガチ!」。
第17回は東京湾のルアー青物。
キャスティングでサワラを主体にイナダやタチウオなどが釣れており、出船軒数も増えている人気の釣りである。
9月下旬に釣行したのは東京湾奥横浜の渡辺釣船店。
当宿のルアー青物乗合はキャスティングをメインに状況によりジギングでワラサを狙うスタイルで出船。
金子大士船長が向かったのは、ベイト(小型のカタクチイワシなど)の反応が多く見られる横浜~富津沖の水深15~30m前後。
トリヤマがあったりサワラが跳ねていればナブラ撃ちでエキサイティングな釣りが楽しめるのだが、この日はサワラの群れが沈んでいたため、魚探に映るベイトの反応を探してドテラ流しで広く探っていく。
1流し目、45gのブレード付きジグを早巻きしていた右胴の間の方が5kgのサワラを釣り上げて幸先のいいスタートを切る。
今回はテールスピンジグ「バンブルズ バイトビーンズ TGサワラSpecial」という新たな武器を手にキャスト&リトリーブを繰り返し、タチウオやイナダを釣り上げるヨッシー。
果たしてサワラを釣り上げることができたのか?
Profile
よしおか すすむ
1982年生まれ。
ヨッシーの愛称で親しまれている。
一つテンヤマダイ、ライト系オフショアルアーを得意とする。
ジャッカルソルトプロスタッフ、シーガーインストラクター。
テールスピンジグをキャストして早巻きでイナダをキャッチ
出典:
ドテラ流しのサワラの釣り方
ドテラ流しでは、正面から風が当たる側とその反対側で釣り方が少し異なる。
正面から風が当たる場合は、ルアーを底まで沈めている間、道糸がどんどん出ていくので、探れる範囲が広い。
そのため着底したら早巻きで中層まで探り、再着底させて早巻きする(図内A)。
風を背に受ける側は、できるだけジグを遠くにキャスト、着底したら海面まで早巻きする(図内B)。
このワクワク感、ドキドキ感はなんだろう。
何か出る。何かが起こる。いつかきっと、すごい魚が飛び出してくる──。
今回、我われツリガチ取材班が乗り込んだのは、東京湾奥横浜・渡辺釣船店のルアー青物船。
メインターゲットは、サワラ。
いかつい「悪役顔」とノコギリのような鋭い歯、そして最後の最後まで諦めることがない、アグレッシブなファイターである。
ギャンブル性も高い。
ナブラが立ち、狂ったようにベイトを追い回しているときは、このモンスターは積極的にルアーを追い、船上では複数の竿が同時にひん曲がり、大にぎわいになることもある。
かと思えば、しんと静まり返ったナギの海で、いきなりガツンと食ってくる。
法則性があるようで、つかみどころがなく、しまいにはなんの感触もないままリーダーをかみ切って泳ぎ去ったりもする。
神出鬼没の大胆不敵さ。
いったんフッキングしたときの引きの強さ。
そして、食べたときのうまさ。
多くの釣り人をとりこにするサワラなのである。
釣ったときの満足感は、ガチだ。
渡辺釣船店のルアー青物船は、その名称が示すとおり、ワラサなど、東京湾の食物連鎖で上位に立つフィッシュイーターを全般に狙う。
しかしメインはやはりサワラ。
一発に賭ける釣りだ。
初めてサワラを釣り上げて大満足の池澤さん。ヒットルアーは40gのテールスピンジグ
出典:
東京湾のモンスターが吠えた。 早くも大本命のサワラが !?
午前7時に船が岸を離れると、金子大士船長からていねいなアナウンスが入る。
船上での注意事項からゴミの捨て方まで、きめ細やかだ。
「サワラは、シラスや5~6cmぐらいのベイトを食べているようです。ベイトの反応を探しながら行きますね」という言葉に、テンションが上がる。
ジャッカル・プロスタッフのヨッシーこと吉岡進さんも、いつも以上に入念にタックルの準備をしている。
「2、3週間前にサワラ狙いの船に乗ったんだけど、アタリ一発で終わったんだ(笑)。今はまだ水深30mほどのポイントを攻めることが多いから、正直、タナに当てるのが難しいんだ。水深はそこそこあって、サワラは表層から10数mは泳いでいる可能性があるからね……。 もう少しシーズンが進めば浅場の釣りになる。15m前後のポイントになれば、ボトムからトップまで探るのは容易なんだけど。今はちょっと難しいのは確かだ」
それでも、可能性はある。
港を離れてから20分後、船がスピードを落として釣りが始まると、いきなり東京湾のモンスターが吠えた。
なんと釣り開始からわずか5分後、右胴の間のお客さんの竿が強く激しく引き絞られた。
「あの暴れっぷり、あれはガチでサワラだね!」と、右ミヨシのヨッシーも興奮気味で注目している。
落ち着いたヤリトリと、金子船長の的確なタモ入れでネットインしたのは、なんと5kgの良型サワラだった。
突然の、強烈な一撃。
「サワラはいる!」とボルテージは上がる一方で、少ないチャンスが早くも訪れてしまったようで、不安もよぎる。
その10分後。
「きたよ!」
ヨッシーの鋭い叫び声が、その不安を吹き飛ばした。
ツリガチ取材班のイチロウこと鹿島一郎さん、トモキこと板倉友基さん、そしてライターのタカハシゴーが、ヨッシーの竿先に注目する。
サワラか?
早くも大本命のサワラが──!?
右胴の間の山口さんが1流し目で5kgのサワラをキャッチ
出典:
ブレード付きルアーを投げて早く巻くだけでサワラが釣れる
ヨッシーがキャストしているルアーは、ジャッカルから10月に発売されたバイトビーンズTGサワラSpecial40g。
カラーは超UVシルバーだ。
「着水してから10カウントして沈ませ、タダ巻きを始めたらすぐにドン!ときたよ。でも……、サワラじゃないかもしれない」
上がってきたのはタチウオだった。
東京湾のルアー青物船ではよく釣れる定番の魚だ。
「いやぁ、フッキングした瞬間はサワラかと思ってドキドキしちゃったよ」とヨッシー。
「サワラほど引かないから、途中で『アレ』って(笑)。でも、うれしい1本。とりあえず魚の顔が見られたからね」
ヨッシーの1本を皮切りに、船内にはナイスサイズのタチウオが上がり始めた。
「タチウオとサワラを釣り分けることは、なかなか難しいよね。とりあえず、サワラ狙いの釣りを続けるしかない」
「サワラ狙いの釣り」は、それほど難しいことではない。
ヨッシーがタチウオを釣ったやり方──ルアーをキャストして、10カウント沈め、タダ巻きをする。これの繰り返しだ。
「東京湾のサワラゲームは、方法論がだいぶしっかりと確立してきてるんだ。今の時期はベイトが小さいから、バイトビーンズのようなコンパクトなフォルムのルアーと、小型ブレードの組み合わせが定番で、タダ巻きが一番よく釣れるとされている。基本は早巻き。回収でヒットすることも多いから、かなりの早巻きでもいいと思う。ただ、金子船長いわく、その中でもポーズを入れたり、ジャークを入れたりして、イレギュラーな動きが発生した瞬間に食ってくることも多いらしい。まあ、日によって正解は違うから、色いろやってみるしかないんだよね」とヨッシー。
それでも、最近のサワラゲームは決して難しくないと言う。
「個人的な印象だけど、ブレードが普及してからサワラゲームが身近になった気がする」
金子船長もこれに同意する。
「ジギングで狙ってたころはやっぱり腕の差があったんだけど、ブレード付きルアーのタダ巻きが普及してから一気にハードルが下がったよね」と金子船長。
投げてタダ巻きするだけ。
意識せずに巻いているとルアーは浮き上がってくるが、サワラは表層を泳いでいることも多い。
つまり、ビギナーでもチャンスがあるということだ。
「実際、『今日が初めて』なんていう人がサワラを釣ることも珍しくない。それでも、日によって釣れる人、釣れない人がどうしても出てくるのが、サワラゲームの面白いところかな。タックルバランスとか巻きスピード、ちょっとしたアクションなんかで釣果に差が出るんだ。あと、これを言っちゃナンだけど、運の要素も少なからずある」
また、タダ巻きとは言え、フッキングに持ち込むにはワザが必要だ。
ヨッシーは、「基本的には合わせないほうがいい」と言う。
「サワラはベイトを吸い込むのではなく、歯でかじってくる。だから、合わせるとスッポ抜けてしまうんだ。アタリがあるとドキッとするけど、慌てずにそのまま巻き続ける。巻き合わせのほうがフッキング率は高いよ」
手強い。そう簡単には釣れない。 だからこそサワラ釣りは面白い
「んあっ、キタッ!」と大きな声をあげたのは、ツリガチ取材班のトモキだ。
明らかにタチウオとは違う、強力な引き。サワラだ……とだれもが思った瞬間、フッと竿先が軽く戻った。
「リーダーから切られちゃいました……」と肩を落とすトモキ。
間違いなくサワラだっただけに、悔しさもひとしおだ。
続けてタカハシゴーが、PEから切られてしまった。
これは恐らくタチウオ。
PEラインのマーカーを狙ったのだろう。
金子船長はアグレッシブにポイントを変える。
「どうにか釣ってもらいたい」という意気込みが伝わってくる操船に、キャストする腕にも力がこもる。
午前8時40分、トモキに再びサワラらしきがヒット。
ジジジ……とドラグを引き出したが、すぐにバレてしまった。
手強い。
そう簡単には釣れない。
そして、だからこそ面白い。
イチロウはジャッカルのタングステン製ジグ、ラスパティーンにブレード付きフックを装着している。
これもアリだ。
ベイトによっては一般的なタングステン製ジグ+ブレード+フックという組み合わせが効果的なこともある。
だが、この日は潮の加減で「ラスパティーンは引きが安定しない感じ」とイチロウ。
「潮がみがスカッと抜けてしまうので、タダ巻きしていても安定しません。バイトビーンズのほうが安定してるかな」と、悩んでいる。
船は浅場のポイントに向かった。
水深15m前後。
ヨッシーが言っていた「ボトムからトップまで探りやすい」深さだ。
午前9時15分、右トモのお客さんがサワラをキャッチした。
その1時間15分後、右トモのお客さんが2尾目をキャッチ。
いる。
確実にサワラは、いる。
だが、バタバタッと続くことがなく単発だ。
一方、タチウオやイナダは、1本釣れるとバタバタッと元気よく続く。
船ににぎやかさと活性を与えてくれる大事な存在だ。
ヨッシーもバイトビーンズをキャストし続けるが、サワラは応えてくれない。
「船長も言ってたように、運要素が大きいのがサワラ。こればかないよね……」
アタリが遠のいた。
「上げ潮になるまで、ちょっと南下してワラサを狙ってみますね」と金子船長のアナウンス。
観音崎沖、水深50mのポイントで120g前後のジグを使う。
ジギングもドシンというアタリがくるか、これもワクワクだ。
残念なことに不発に終わり、小1時間ほどで第二海堡の沖まで戻ることになったが、一発勝負のスリリングさは楽しめた。
3.5kgと2.6kgのサワラを釣り上げた中村さん。ヒットルアーはいずれも40gのブレード付きジグ
出典:
釣り上げたサワラが吐き出した6~7.5cmほどのカタクチイワシ。 ベイトのサイズにルアーを合わせるのも有効
出典:
明日どうなるかはサワラ次第。 ムズ面白さを思い知らされた
第二海堡を横目に、約8mの浅場ではイナダが遊んでくれる。
サワラはなかなか姿を見せない。ポイントを変える。
時は過ぎる。
午後2時10分、中ノ瀬の水深18mのポイントで、左胴の間のお客さんが2.8kgのサワラをキャッチ。
その12分後、トモキもサワラと思しき魚をヒットさせたが、またしてもバラしてしまった。
「今のは怪しかったね~。バレるのはたいていサワラなんだよ」という金子船長のアナウンスに、悔しげに顔をゆがませるトモキなのであった。
午後3時半、沖揚がりとなった。
ツリガチ取材班は、ついにサワラをキャッチすることができなかった。
プロであるヨッシーにも、ヒットなし。
サワラゲームのムズ面白さを思い知らされた一日となった。
「でも、今日も平日だけど満船でしょう? 金子船長が言ったようにサワラゲームのハードルが下がって、人気の釣り物になったよね。 今日は残念だったけど、明日どうなるかはサワラ次第。これは、また来ちゃうよね~」とリベンジを誓うヨッシー。
「バイトビーンズTGサワラSpecialは、4色の専用カラー。スイベルアシストにはチューブを装着してあって、フックの絡みを防止してるんだ。 小さいけど強力な武器となってくれるコイツで、絶対にサワラを釣る──!」
秋の気配を感じさせる夕方の涼風に吹かれながら、熱く燃えるヨッシーであった。
テールスピンジグの早巻きで次つぎとタチウオがヒ ット
出典:
丸まると太ったイナダも釣れた
出典:
タチウオのアベレージは指幅4本級
出典:
イナダのアベレージは40~45cm前後
出典:
船宿インフォメーション
東京湾奥横浜 渡辺釣船店
045・622・8381
備考=予約乗合、7時出船。ルアータチウオ、ライトアジへも出船
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隔週刊つり情報(2022年11月1号)※無断複製・転載禁止