深海の巨大魚イシナギ。
普段は水深500m前後に生息するとされるが、産卵期に当たる初夏は水深50~100m前後の浅場に集まってきて、そのころが釣りでのシーズンとなる。
10年ほど前には外房勝浦で釣れ盛り一躍脚光を浴びたが、その後は徐々に魚影が減少、今では専門に狙う船はほとんどなくなっている。
そのイシナギが今、茨城県の日立沖で密かなブームになりつつある。
イシナギという魚
【標準和名】オオクチイシナギ
スズキ目 イシナギ科 イシナギ属
【分布と生息域】北海道以南~高知県・石川県。水深400~600mの岩礁域
【大きさ】170cm(魚拓寸での確認)
イシナギというのは通称で、日本近海に生息する硬骨魚類では最大級の魚の一つ。
体側の縞模様は小型ほどくっきり出るが、大型は薄れ、固定後は一様に褐色になる。
近似種にコクチイシナギがいるが、こちらは太平洋東部のカリフォルニアからメキシコ沿岸に生息。※「海の魚大図鑑」より
イシナギが日立の新しいご当地ターゲットになることを期待したい。
出典:
「イシナギ出船します」
茨城県日立久慈漁港、明進丸のSNSを見ていたら、見慣れぬワードが目に入った。
日立でイシナギって聞いたことないけどなあ・・・。
何はともあれさっそく船長に連絡すると、ほかのエリアほどの大型は釣れないけど、20kgクラスまでは上がっている。
オモリは80号で、ハリス20~30号、ヒラメ仕掛けをゴツくした感じで狙っている。
今年は遅れているのかまだ型を見る程度だが、6月以降は模様が上向くのではないか。
?疑問符だらけだったが、とにかく現場へ急行だ!と5月29日に取材させてもらうことにした。
タックルはキハダ用でOK
明進丸でイシナギ狙いを始めたのは3~4年ほど前だという。
釣れるイシナギは3~10kg級が中心で、多いのは5~6kg。
2kg以下の小型は放流するのがルール。
大型は20kg級まで実績があるが、ハリス切れで取り込めない魚もいるようなので、それ以上の大型が潜んでいる可能性も十分ある。
シーズンは水温が20度以上になる6月以降が本番で、いい日はトップ6~7尾、船中30~40尾釣れたこともあるという。
産卵が終わると食いが悪くなるので8月一杯が目安になる。
エサ釣りだけでなくルアー(スロジギ)でも狙え、当日はエサ釣り5人、ルアー4人。
人数によっては席を分けることもあるが、この日は左トモと右ミヨシから3人ルアーの人が入る。
皆さんにイシナギ狙いの経験はあるのか聞くと、ルアーの人は昨年やられており、船宿記録となる最大24kgを釣った人もいた。
エサ釣りの人は3人が初挑戦で、やはり分からないことだらけだという。
ということで、改めて船長に聞いた日立のイシナギ狙いのタックルと仕掛けについて整理しておく。
竿は強度のある青物用や深海用など。
リールは手巻きでもいいが、電動リールを使う人がほとんどで、PE3号以上を巻いておく。
ただしコンパクトサイズだと大型が食ったときにモーターやギアに負担がかかるのでおすすめしない。
ダイワなら500番以上、シマノなら400番以上が適している。
タックルは、分かりやすくいうと相模湾のキハダ用が一番無難なようだ。
仕掛けは胴つき式の1本バリ。
幹糸は30号で100cmほど、ハリスは20~30号で80~90cm前後。
捨て糸は根掛かりしたときに切れやすいよう5号と細くして100cmほど結んでおく。
ハリは環付きムツや泳がせバリなどの25~30号。
ハリは大きめのほうがエサが外れにくいという。
なお、ハリにはタコベイトなどアピールアイテムを付けておくと効果的なこともあるそうだ。
使用するエサは冷凍のスルメイカやイワシ。
明進丸では冷凍スルメ5杯が付いており、イワシや追加のイカは別途購入する。
イシナギ狙いというと最初に生きたイカを釣ってエサにするケースが多いが、日立ではこの時期イカが釣れないので死にエサを使う。
しかしそれでも十分食ってくるという。
エサの付け方は、スルメイカは胴の先端付近にチョン掛け、イワシの場合は背掛けにする。
生きエサのときのように掛けバリを結んだ親孫式にしても構わないが、小型もハリ掛かりしやすくなってしまうためチヌ5号など小さめのハリを使うのが船長のこだわり。
なるべく小さなイシナギは釣らないようにしたいという船長の配慮だ。
スロジギは底中心に探る
この日は5時過ぎに出船。
釣り場は日立沖で、水深は50~80m前後。
産卵で浅場に集まってきているイシナギを狙うとのことだが、ほかのエリアに比べてずいぶん水深が浅いのも日立沖の特徴。
今回狙ったポイントもほとんど水深45m前後だった。
どんな感じの釣りになるのかしばらく様子を見ていたが、エサ釣り組にはなかなかアタリがない。
ルアーのほうも宙層でサバが掛かってくる程度。
ポイント移動を繰り返すこと1時間半、左舷3番のエサ釣り初挑戦の人にアタリ。
グイグイ動いていた竿先がひときわ強く絞り込まれたところで合わせるもハリ掛かりせず。
直後にお隣、左舷2番の人にアタリ。
うまくハリ掛かりしたようだが、見ている限り引きはそれほど強くない。
上がったのは2kgちょっとのクロソイで、イワシエサに食っていた。
その後はルアー組にちょいちょいアタリがあり、オキメバルやホウボウ、イナダなどが釣れる。
釣り方を見ていると竿先をシャクリ上げてフワリと下ろすスロジギ流の誘い。
一定の場所で数回シャクってから少しずつ巻き上げていく人と、ひとシャクリで巻き上げていく人と様ざまだが、いずれも底から3~5mと海底付近を中心に探っているようだ。
アタリはシャクリ上げた直後にガツンときたり、フォールさせたジグが落ちずに糸フケが出たりするので、違和感があったら即合わせで掛けていく。
食ったらゴリ巻きで底から離す
その後もアタリのない流しが続いたが、しばらくして先ほどクロソイを釣った人に再びアタリ。
今度はイカエサで同サイズのクロソイが釣れる。
続いて左ミヨシの人に本命らしきアタリ。
うまくハリ掛かりしたかに思えたが残念、巻き上げ中にスッポ抜けてしまった。
普段はあまりこういうことはないというので、やはりまだ水温が低く活性が悪いのだろうと船長。
ちなみにエサ釣りでのタナ取りはオモリを底から1~2m上げた位置が基本。
根が近づいてくると船長からアナウンスがあるので4~5m巻き上げて根掛かりを回避。
また、イシナギの活性が高いとけっこう上までエサを追ってくることもあるそうで、初めから4~5mと高めのタナを狙う人もいるとか。
アタリは竿先をクンクン引き込むように明確に出るが、基本は向こう合わせなので竿先がグインと持ち込まれるまではそのまま待つ。
食いがよければ一気に竿先を絞り込まれることもあるとか。
いずれにしろ強く引き込まれたら竿を立ててしっかりハリ掛かりさせ、一気に巻き上げる。
この初動が肝心で、根に潜られるとバラシの元。
ドラグはガチ締めして、とにかく底から離すようにする。
イシナギは水圧変化に強く海面まで引きが弱らないと言われるが、日立沖はとくに水深が浅いこともあって最後までガンガン暴れまくるという。
エサにしろルアーにしろ、過去に当地でイシナギを釣ったことがある方は皆その引きの強さに魅了されているようだ。
とまあ釣り方自体は至ってシンプルなのだが、肝心のイシナギがなかなか口を使わない。
一度はルアーの人にそれらしき強い引き込みもあったのだが途中で外れてしまったり、右トモのエサ釣りの人にも強いアタリがあったが4kg級のクロソイだったり。
こりゃあダメかとあきらめかけた11時、右3番のルアーにヒット。
ヤリトリを見ていると、これまで掛かっていたゲストとは違う重おもしさがある。
やがて海面に浮上したのは値千金のイシナギ。
期待していたよりだいぶサイズは小さかったが、釣れると釣れないでは大違いだ。
結局イシナギはリリース1尾に終わってしまったが、魚は確実に浅場にきている様子。
水温上昇後の好転に期待したい。
イシナギ狙いはとてつもない大物で、経験のない人にはちょっと腰が引けてしまう印象だったが、今回の釣行で日立沖ならだれでも気軽にチャレンジできるという感触を得た。
まだイシナギを釣ったことがない人、大物釣りに入門してみたいという人におすすめだ。
取材日にエサ釣りで釣れたのはソイ類だけ。ほか10kg級のヒラメが釣れることもあるとか。
出典:
高活性時は船中ダブルヒットやトリプルヒットも珍しくないそうだ。
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日立のイシナギシーズンはこれからが本番。
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