マダイの宝庫と呼んでも過言ではない東京湾。
その釣法は久里浜沖にあるアシカ島を境に分かれている。
湾口部ではコマセ釣りが盛んなのに対し、久里浜から横須賀沖にかけての海域はコマセによるマダイ釣りが禁止になっている。
ここでは古くからエビエサを使う伝統的なマダイ釣りが行われていたが、近年になって人気が上昇している釣りがタイラバで、乗合船の出船軒数も年々増えている(図1)。
エサを使わず、ライトなタックルとシンプルな仕掛けでマダイのスリリングな引きを楽しむ、ゲーム感覚があふれるタイラバを紹介したい。
エサ釣りに慣れた方は、「ルアー釣りはちょっとハードルが高くて・・・」と思われるかもしれないが、専用竿を持っていなくともライトアジ用のロッドでも代用できる。
1.8m前後で軟らかめの6:4調子が使いやすい。
リールは小型両軸にPE1号を150m以上巻いておけばよいが、この釣りはドラグ性能が重要なのでスムースにドラグが効くものを選びたい。
ヘッドからハリまでセットになっている仕掛けも市販されているので、それをリーダーに結ぶだけで準備は完了だ。
ヘッドの重さは、東京湾では80gと100gの2つを持っていれば足りるだろう。
タイラバの釣り方を4つのフェーズでイメージしよう!
タイラバの釣り方をひとことで言えば、「仕掛けを落としては巻いてを繰り返してアタリを待つ」となる。
実に簡単そうな釣りだが、細かい所にはこだわりの余地が見えてくる。ここでは、その釣り方を4つのフェーズ(局面)に分け、タイラバサイクルというものを描いてみた。
図2を見ていただきたい。
タイラバサイクルは、発見→興味→追跡→魚信(離脱)からなる。
それぞれの勘どころは次のようになる。
図2タイラバサイクル
発見フェーズ
仕掛けを底まで落とすことからタイラバは始まる。
リールをフリーにして落ちるままに任せておくのが基本だが、ここではオモリの形状を意識したい。
球形に近いヘッドは水中で真っすぐに落ちる、野球の球でいえばストレートだ。
平べったいヘッドは水を切って斜めの動きを含む、いわばスライダー。
変形ヘッドはユラユラと不規則な動きが考えられる、さしずめナックルか。
どんな落ち方がよいのかは明確に言えないので状況次第というほかはないが、船内でアタリが多い人が使っているヘッドが自分とは違っていたら、それを参考に交換してみるのもよいかもしれない。
興味フェーズ
仕掛けが底に着いたら巻き上げを開始するが、着底したら素早くハンドルを回して糸フケを取ることが大切。
ヘッドの重さが竿先に伝わるまでの動作を素早く行うことで、着底した仕掛けが瞬時に跳ね上がりマダイにアピールする。
昔の東京湾のテンヤ釣りでは、テンヤが底に着いたらすかさずたぐる、という繰り返しでマダイを誘っていた。
これには根掛かりを避けたりエサ取りをかわしたりする意味もあるが、マダイは海底からエビがピョンと跳ねるような動きに気をひかれるからだと言われていた。
タイラバにおいても、底に着いたら止めたままにせず、すぐに次の動作に移ろう。
アタリがきても合わせず、一定の速度で巻き続け、強く引き込むのを待つ。
出典:
追跡フェーズ
ここがタイラバで一番重要なところだろう。
巻く速度をどれくらいにするかは釣り人にとって常に気になるところだが、具体的にどの速度が正解なのか答えを出すのは難しい。
2秒でハンドル1回転くらいをベースに、ちょっと早くしたり、ちょっと遅くしたりと試行錯誤してみよう。
釣果を重ねるうちに、体がアタリが出るときのスピード感を覚えてくる。
もう一つのパラメータは海底から巻く距離だ。
乗っ込み時期は底から12~15mという高いタナでアタることも珍しくない。
かといって、常に20~25mの距離を上げ下げするのは、底近辺にいるマダイを狙うには効率が悪い。
春から夏は15~20m、秋から冬は10~12mと季節によって変えていく。
そしてこのフェーズで効くのがスカートの色、ヘッドの色、ネクタイの有無や色などだ。
タイラバは落として巻いてを繰り返すシンプルな釣りだけに、釣果に差が出る要因として、仕掛けの色は重要だ。
船長に聞くと鴨居沖で実績のあるヘッドは赤とオレンジとのこと。
スカートの色もオレンジの単色をベースに白、赤、赤白のしま模様などが基本だが、房丸常連の岩村さんに尋ねたところ、黒の単色スカートをすすめてくれた。
ネクタイは、ここ数年の傾向だと付けないのが主流だ。
私が最初に東京湾でタイラバをやったのは2007年だったが、当時はエビエサに比べてアタリは少ないが食えば大ダイというのがタイラバの特徴だった。
その当時はみなスカートを付けてボリューム感を出していた。
現在のタイラバでアタリが多く出るようになったのは、ネクタイのみのシンプルな仕掛けが小型も含めて広く有効だからかもしれない。
現在はスカートなしが主流だが、大型を狙ってボリューム感を出すために付けてみるのもよいだろう。
また、ネクタイの形状について、ストレートで幅広タイプは大型に効果があると岩村さんは言う。
カーリータイプは小刻みな動きを演出しやすく、活性の高いときにアピールがよいようだ。
ネクタイの色や形にこだわるのもタイラバの楽しみの一つだろう。
お気に入り、かつオリジナルの組み合わせで楽しんでいただきたい。
(左)東京湾のタイラバはヘッドが80~100g、スカートやネクタイはストレート系の実績が高い。(右)トレーラーと呼ばれる小さなソフトルアーをハリに付けるアレンジもおすすめ。
出典:
魚信フェーズ/離脱フェーズ
ガツガツ!とアタリがきた瞬間が、この釣りで最も興奮するときだ。
そのままリールを巻き続け、竿に十分に重みが出るのを待つ。
食い込まなかった場合は巻く速度を落としたり、意図的に巻くのを止めたりするが、基本は巻き続けることだ。
タイラバはハリにエサを付けるわけではない。
スカートやネクタイを口にしたマダイをハリに掛ける、フグのカットウ釣りに似た要素がある。
ハリの刺さる所は口の中だったり、アゴの外側だったり様ざまだ。
ドラグは手で容易に糸が引き出せるくらいに緩めに調節しておき、魚とのヤリトリでハンドルが空転して巻けなければ少しだけドラグを締めてやる。
ポンピングはせずに竿を水平からやや下向きに保ち、リールを巻き続けて魚を浮かせよう。
大ダイは一気に糸を引き出して海底に戻るが、魚の引きには逆らってはいけない。
巻いては引き出されを繰り返しながらじっくりと魚を浮かせよう。
もちろん、毎回魚信があるとは限らない。
マダイが離脱し、徒労に終わることもある。
以上、タイラバサイクルの説明だが、一日の釣りの多くは、魚信なしに仕掛けの上げ下げを繰り返す時間に費やされることになる。
それだけに1枚を釣り上げた喜びは大きい。
一見退屈にも見えるこの釣りに通うファンの多さこそが、タイラバの面白さを物語っているのかもしれない。
ハリは口の中だけでなく外側に掛かることもある。皮一枚ということも珍しくないので、一定の速度で慎重に巻き上げよう。
出典:
スピニングタックルで仕掛けをキャストし広範囲を探るのも一手。
図3はタイラバの誘いのイメージ。
東京湾のタイラバ船は、スパンカーで船を風上に向け、潮の流れによって船の速度を調整しながら糸を立てる流し方だ(他地区では横流しの船もある)。
仕掛けは同じ場所で上下しているわけではなく、船の流れと一緒に動いている。
流しているうちにマダイのいる場所に入っていくことになる。
基本は船下に仕掛けを落とし、バーチカルな誘いを繰り返しながら釣るが、スピニングタックルを使って仕掛けをキャストすることにより誘いの範囲を広げる方法も効果的だ。
キャスティングの場合は、船の流れに加えてキャストした分だけ広く誘えるので、マダイとの遭遇チャンスはより高いと言える。
キャスティングしてから着底直後は糸が斜めになっている。
上げ下げを繰り返すうちに、仕掛けは手前に引かれて船下にくる。
アタリが出るのは船下にきたときが多い。
遠くのマダイを船下に寄せてくる、というイメージだ。
近年のタイラバで注目されているアイテムに、トレーラーがあげられる。
トレーラーとは、ハリに装着するワーム状のアクセサリーの総称だ。
トレーラーの色や形は様ざまな物があり、臭いを付けてある製品もある。
トレーラーにはアピール効果のほかに、ハリとネクタイを同調させることにより、魚がハリを吸い込みやすくする効果もあるとされる。
筆者も取材時後半にはトレーラー付き仕掛けを用いて2枚のマダイを上げた。
以上、東京湾のタイラバを紹介したが、この釣り方は年々進歩しているのを感じる。
固定式から遊動式へ、スカートを付けたボリュームある仕掛けから、1本ネクタイのスリムな仕掛けへ、そして今回は触れなかったが、食いが浅いときの食い込ませ方もベテランの間では工夫が見られている。
新しい発見がまだまだ潜んでいる釣り、それが東京湾のタイラバの一番の魅力と言えるかもしれない。
図3タイラバの誘いイメージ
タイラバの釣り方はとっても簡単。仕掛けを落としては巻いてを繰り返すのが基本だ。
出典:
COLUMN『東京湾マダイ今昔物語』
東京湾のマダイ釣りといえば、エビエサを使った釣りが伝統的に行われている。
昭和60年代、マダイの一本釣り(立て釣り)の漁師がまだ多かったころ、鴨居では遊漁での竿を使ったテンビン釣りが行われていた。
30号の鋳込みテンビンと2号の豆テンヤを用い、生きたアカエビをエサに使う釣りは、内房にある手バネのシャクリ釣りに対して鴨居式シャクリ釣りと呼ばれていた。
この鴨居式シャクリの草分けが、鴨居大室港房丸の高橋房男船長だ。
もう30年以上前、私が初めて鴨居式シャクリを覚えたときからの現役船長。
鋭いアタリに合わせをくれると根に掛かったような重量感、そして先調子のカワハギ竿が折れんばかりにガンガンとたたかれる強烈な引きに魅せられ、鴨居沖に何度も通ったのは、まだ一つテンヤもタイラバもなかった時代のことだ。
そして時は流れ、東京湾に新たな釣法、タイラバが入ってきたのは2000年代半ばのこと。
マダイ狙いの遊漁船にもタイラバは広まり、房丸でも昨今は釣り人のほとんがタイラバアングラーだという。
久里浜アシカ島以北、横須賀沖まではコマセ釣りのマダイが禁止の海域だ。
従来のエビタイ釣りの流し方は、仕掛けを上下させながら次つぎに新し場所を探っていくタイラバとの相性がよい。
立て釣りの伝統から、現代的なタイラバへと変遷した鴨居沖のマダイ釣り。
当地のマダイは徳川幕府への献上品としてもてはやされた由緒ある魚だ。
そんな遠い昔へと思いを馳せながら、大ダイ狙いを楽しむのも一興だろう。
ちなみに、房丸では冷凍エビや時期になると生きエビも用意され、現在も鴨居式シャクリが楽しめる。
興味ある方は、高橋房男船長に手ほどきを受けてみるのもよいだろう。
(左)鴨居式シャクリや一つテンヤ用のエサは冷凍エビだが、時期になると生きエビも使われる。(右)鴨居式の仕掛けは鋳込みテンビン30号と豆テンヤ2号が標準。
出典:
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