海はときに優しく、ときに厳しく、ときにシブい・・・。
2度にわたって冬の外房スーパーライトジギングに挑んだヨッシーこと吉岡進さんだったが、プロのテクニックと粘りをもってしても「まずまず」の成果しか得られなかった。
だが、これも現実。
これも経験だ!
先生◆よしおか すすむ
新型コロナウイルスの感染予防に最大限配慮しながらも、忙しく全国の船に乗り、多くの沖釣りファンたちとの交流を楽しむヨッシー。
船を下りてからもそのまま竿を担いで陸っぱり。
タックルさえあれば永遠に釣りし続けているのではないかという、夏休みの少年状態。
今日もどこかで竿を振っている。
生徒◆たかはし ごう
幼稚園のころから沖釣りをしているはずなのに、いつまでたっても上達しない「永遠の初心者」。
釣りそのものより海に浮かんでいることに喜びを感じている様子で、うまくなる気配なし・・・。
SLJってどんな魚が釣れるの?
「そのとき、その場所にいる魚を釣る」という自由さがSLJの魅力。
本命、外道という考え方はなく、どの魚を釣ってもうれしくなれる釣りだ。
糸の先にはジグだけというシンプルな仕掛けで竿もソフトだから、魚が掛かったときのダイレクト感は病みつきになる。
ジグを食ってくるのはマハタやカサゴなどの根魚、ワラサやヒラマサなどの青物で、食べてもうまい魚ばかりだ。
シブかった・・・。
そして本当にシブいときは、プロアングラーであるヨッシーの腕前をもってしても、太刀打ちできなかった・・・。
外房勝浦川津港の不動丸は、スーパーライトジギング(SLJ)に力を入れている。
吉清晃朗船長は「そのとき釣れる魚を釣る、というスタイルで、タックルもライト。手軽に多くの人に楽しんでもらえる新しい釣り物です。ウチでは午後船を中心にSLJへ出船。盛り上げていきますよ!」と気合十分だ。
が・・・。
釣りは自然が相手の趣味。
我われ人間の思惑どおりにいかないこともある。
だからこそ「どうにかしてやろう」とハマるのだ。
1月中旬、最初の釣行時は潮がほとんど動かなかった。
同行した釣り仲間の鹿島一郎さんが小型のアカヤガラを釣ったとき、ヨッシーは苦戦を覚悟したという。
「アカヤガラは潮が動かないときに釣れる魚。これは厳しいぞ、と思ったね・・・」とヨッシー。
どうにかカサゴを1尾釣ったが、それすらも「魚がいた所にちょうどジグが落ちただけかな。う~ん・・・」とうなるばかりだった。
そして2度目のチャレンジは、1月下旬だった。
太東から勝浦にかけて、死んだイワシが大量に漂っていた。
漁師の網が破けた、酸欠発生など色いろな情報が錯綜したが、理由ははっきりしない。
死んだイワシがコマセになって別のイワシを呼び、海は一見すると活気づいているようだったが、SLJのターゲットであるフィッシュイーターの気配がない。
ヨッシー、鹿島さん、そして筆者(タカハシゴー)は、あの手この手を繰り出す。
ジグの素材は鉛か、タングステンか。
重さはどうか。
色は?
アクションは・・・?
ありとあらゆる可能性に懸け、ありとあらゆる引き出しを開けてみたものの、魚からの返信はない。
ほんのわずかでもいいからなんらかの反応があれば、それを手がかりにして作戦を組み立て、魚を手にするのがヨッシーのすご味だが、何をやっても魚は応えない。
吉清船長もこまめに船を回し、どうにか成果を得てもらおうと懸命になっているのが分かる。
その意気込みに応えようと頑張るヨッシーと仲間たち。
と、その思いが届いたか、「SLJは初めて」というビギナーさんのジグにマハタが食ってきた。
いきなりのアタリに、どうしたらいいか分からない。
友人に竿を支えてもらってどうにかリールを巻き、マハタの取り込みに成功した。
「よかった!初めての人でもマハタが釣れちゃうんだよ?これぞSLJのだいご味だ。きっとあの人はハマるね(笑)」
午後4時近くになって、キントキの群れに当たったようだ。
鹿島さん、トモのお客さん、そしてヨッシーにもヒット!
さらに船中ではメバルも上がり、魚が姿を見せてくれたことで多少の盛り上がり感はあった。
だが、それまでだった。
取材メモには頻繁な流し変えの軌跡と、「不発」の文字が並んだ。
「このページは一応オレが先生、ゴーさんが生徒という役割になってる。それなりに魚が応えてくれるときなら差が出ると思うんだけど、今回ばかりは・・・。極端にシブいときは、どうにもならないね」
それでも、いや、それだからこそ、我われは全力を尽くした。
頭をフル回転させ、今までの経験や知識を総動員して、あらゆることをやり尽くした。
クーラーは軽かったけれど、下船したあとの足取りも軽かった。
「やったよな」
「やった」
「しょうがないよな」
「しょうがない」
肩をたたき合いながら船着き場から駐車場へ歩く取材班。
その視線は下ではなく前を向いていた。
釣り場は御宿~勝浦沖の水深20~40m前後
出典:
タックルの方程式
なんでもOKだが専用竿もオススメ
ズバリ、タックルはなんでもOK。
使うジグが40~60gと軽いので、ブラックバス用タックルでも対応できる。
でも最近はSLJ人気の高まりもあり、専用ロッドも増えてきた。
ジャッカルも3月にSLJ専用の「バンブルズエクストロSLJ」を発売予定。
ティップがしなやかなので軽いジグを不用意に飛ばすことがなく、ナチュラルなアクションを付けられる。
一方バットはパワフルで、不意の大物にも余裕で応える仕様だ。
スピニングリール用、ベイトリール用があり、浅場やキャストしての横引きで広く探りたいときにはスピニング、深場や根が荒いポイント、ドテラ流しでも有効なベイトと使い分けができるよ!
ヨッシーのSLJタックル
ヨッシーはバンブルズエクストロSLJプロトタイプを使用。しなやかな竿先でジグのアクションは自然
出典:
外房でも勝浦沖は根が荒い。タカハシゴーは底取りしやすいベイトリールを多用して根掛かりを回避。フォールのアタリも取りやすい
出典:
ルアーの方程式
タングステン=お値段以上の価値
オススメしたいのはジャッカル・バンブルズジグTG SLJのようなタングステン製のジグ。
比重が高いので、同じ重さでも鉛製よりコンパクトに作ることができ、潮に流されにくく、小粒なので食わせやすい。
1度目の釣行は風が強く、ドテラ流しでは底取りが難しかったこともあり、タングステンが強みを発揮していたね。
ちょっと高価なので、根掛かりのリスクがある場所でメインジグにするのは難しいけど、タングステンでなければ対応できないシチュエーションは結構ある。
左右非対称でエッジを効かせた形状だから、ジャーク(シャクリ)の仕方によってアクションを自在に変えられるのもメリット。
軽くシャクればフワッとした動きで魚に口を使わせることができ、強くシャクれば波動を効かせたハデな動きで魚を呼び寄せられる。
ルアーケースには絶対に忍ばせておきたいジグだね!
バンブルズジグ・Bambluz JIG TG SLJ・左右非対称でエッジが効いた形状で、シャクり方に応じてアクションが変わる。フロントフックのネクタイが揺らめいて魚にアピール
出典:
バンブルズジグTG SLJは30~80gをラインナップ。40~60gが中心となる
出典:
ナチュラルなシルバー系を基本に、潮が濁っていたり空が暗いときはゴールド系も効果的
出典:
一方鉛製ジグは安価で種類も豊富だ。タカハシゴーはスリム形状の鉛ジグでカサゴをキャッチ
出典:
先生が教える基本釣法
フォール&ただ巻きでもOK・慣れたらワンピッチジャークを
SLJはなんと言ってもイージーさが魅力。
最近のジグは性能がイイので、ただ落として巻き上げてくるだけでしっかり動き、魚にアピールしてくれる。
ビギナーの方なら「フォール~ただ巻き」の繰り返しでもOKだ。
経験を重ねてきたら、ワンピッチジャークなどジギングっぽいアクションを加えるとなおヨシ!
竿をシャクり上げ、竿先を下げる間にリール1回転というジギングの基本動作だね。
シャクリの強弱や速さの遅速によって様ざまなアクションを演出できるから、SLJは飽きがこないんだ。
ジグが軽いから疲れず、今回のようにシブい状況でも心が折れないのも美点だよ(笑)。
底から数mはネチネチとゆっくり誘って根魚を、底を10mほど切ったら早巻きにして青物を狙うという2段戦法がオススメ。
1度の着底で2度おいしいあたりが、ターゲットを限定しないSLJらしさかな。
ただ巻き
ワンピッチジャーク
リフト&フォール
生徒なりのお気付きポイント
もう少し安ければ全部TGにしたい!
シブいなりに色いろ試して分かったのは、タングステンジグの優位性!
ロッドアクションやリールの巻きスピードを変化させてキレ味鋭く動かすこともできるし、フワフワ舞わせることもできる。
オレみたいな不器用者も多彩なアクションを繰り出せたのだから、ヨッシーなんかもっとバリエーション豊かに動かしてるんだろうな・・・。
それでも思うように釣れないのは、もはや我われ釣り人側の問題じゃなく、自然のおぼしめしだよな・・・。
ヨッシーの実釣レポート
激シブでもそれなりに・・・これがSLJの底力だ!
手も足も出ませんでした・・・と言いつつ、それなりに色んな魚が顔を出してくれるのがSLJのよさ。
海はかなりシブかったけど、SLJのポテンシャルに救われたって感じかな・・・!
オレが釣った魚はほとんどがフォール。
食い気があればジャークしているときなど誘い上げ中にも食ってくるから、よほど魚たちにヤル気がなかったんだと思う。
こういうときはネチネチとゆっくり誘って、何度も魚の前をジグが通過するように心がけるといいよ。
良型のキントキをキャッチ
出典:
冬の外房SLJの解
諦めない心×シャクリ回数=未来の釣果
釣れる魚を釣るのがSLJだから、シーズンを問わず楽しめるのが魅力だ。
そんな中でも1~3月は気候の不安定さなどもあって、好不調の波が激しい。
我われの釣行した1月中旬と下旬は根魚さえなかなか口を使ってくれない厳しさだったけど、別の日にはウソのように釣れていたから、こればかりは海に出てみないと分からないね・・・。
釣れた魚は低水温に強いものばかりだったから、ちょうど水温がグッと下がってしまったのだと思う。
下がったところで安定してくれれば、魚たちも口を使うようになるはず。
オレは諦めずに竿をシャクり続けるよ!
外房のSLJではおなじみのキントキ。当日は群れに遭遇しあちこちでヒット
出典:
船宿インフォメーション
外房勝浦川津港・不動丸(0470・73・5538)
根が荒く、水深が激しく変化する勝浦沖。
それだけに本来は多彩な釣り物が楽しめるエリアだけど、根掛かりにも要注意。
その点、吉清晃朗船長は水深をこまめにアナウンスしてくれるからありがたい。
カケ上がりか、カケ下がりか、これから浅くなるのか深くなるのかをていねいに教えてくれるから、根掛かり回避はもちろん、釣りの戦略も立てやすい。
SLJに対してもすごく積極的で、レンタルロッドにはジャッカル・GSWを使ってくれるという気合の入れよう。
今回は我われの力不足でいい結果が出せなかったけど、次は船長の操船に応えます!
ギナーに優しく釣り方を教えてくれる吉清晃朗船長(中央)
出典:
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隔週刊つり情報(2021年3月1日号)※無断複製・転載禁止