箸でつまんで、ふた口でモフモフと食べる小さなムギ&マルのイカ飯。
いや~うまかった。
ムギイカは濃厚な風味、マルイカは甘く軟らか。
例えればコクのあるコーヒーと甘い紅茶という感じ。
分かりにくい比喩はともかく、とびきりおいしい2種の小さなイカが水深30~50mの浅場で入り交じって釣れるのがこの時期。
とくに小雨そぼ降る薄暗い日はイカの活性も上がってバリバリ乗ることが多い。
また、近年すさまじくテクニカルな釣りと化したマルイカ釣りを敬遠している人も、素直に乗ってくるムギイカのおかげで気楽に遊ぶことができる。
いい日もあればダメな日も・それが釣りの魅力
5月に入って、すでに両種のイカは相模湾を中心に水深30~50mの浅場でよく釣れている。
マルイカとムギイカを合わせてトップ100杯を数えた船もあって、最高潮に達するだろう梅雨時は大いに期待できる。
今ならヘッポコな腕前の自分でもそこそこ釣れるだろう・・・5月中旬、そんなふうに皮算用して向かった先は小田原早川港の長谷川丸。
ちなみに先述の100杯を数えた釣り場は相模湾東部の葉山沖、亀城根周り、城ケ島沖などでマルイカ5~7割、残りはムギ。
一方、こちらの小田原船が攻めているのは相模湾西部の真鶴半島周辺~小田原沖となり、ムギイカ7割、残りはマルイカという比率でトップ50杯前後を記録する船も出てきたところだった。
しかし結論からいえば取材日は悲しき谷間。
10隻近くのムギ・マル乗合が出て、全船で0~10杯台に終わる。
長谷川丸はムギイカ8杯、マルイカ2杯の計10杯を釣り上げたベテランの田中さんがトップ、私はムギイカ1杯にマルイカ2杯・・・。
神出鬼没のイカ釣りは、かくもおそろしい。
しかし釣りという遊びは、こんな貧果が次への情熱を燃やすエネルギー源・・・ということでムギ・マル両狙いのピークに備えた、状況別攻略法の一例を記してみたい。
オモリは40~60号の間で船宿ごとに基準があるから事前確認していただきたいが、浅場のイカ釣りはオマツリさえしなければ道糸の太さや立ち具合に応じて好みの重さに交換OKという船が大半。
長谷川丸も60号を基準としながらも、釣り手の裁量に任せている。
タックルはオモリに見合った7:3調子のゲームロッドやマルイカ竿に、PE1号前後を巻いた小型両軸リール。
ムギイカ主体に宙層まで幅広く探る場合は小型電動リールで「電動シャクリ」という選択肢もある。
仕掛けと釣り方はあくまでも一例ながら、次の3パターンに分けてみた。
ムギイカ&マルイカ仕掛けの一例
好物のイワシ類に見えるのか、ムギイカはなぜかプラヅノを好む
出典:
ムギイカ狙いなら11㎝か14㎝のプラヅノが有効。カラーはケイムラ、ピンク、ブルーの3色が基本
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マルイカ用のスッテは3.5~5㎝のシンキングタイプ。人気カラーはケイムラ、レインボー、グリーンなど
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マルイカは小さなスッテが有効
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マルイカは底近く、ムギイカはその上の宙層を遊泳する。この基本を頭に入れ、状況に応じてスッテとプラヅノの配分を変えていく
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CHECK!スナップにプラヅノを付ける裏技
マルイカ仕掛けの幹糸は、専用スナップ(イカ用フック)でスッテを着脱できるところが長所。
ムギイカも同時に狙いたいときは、この幹糸を利用してプラヅノをセットする方法が最も手早い。
ところが問題はプラヅノの穴の位置。製品によっては穴の位置が深すぎで、スナップを付けようとしても穴に届かないのだ。
その解決策は単純。
写真のようにニッパーでプラヅノの端をカットすればいい。
断面は紙ヤスリをあてて角を取れば完了、スナップがスムースに着脱できる。
穴から4~5㎜くらいのところでカット
出典:
【A】ムギイカ主体にマルイカはお土産というパターン
ムギイカの大群が回り、それを釣りまくりたいという人向け。
また小田原の船宿は初夏からこの時期に回るムギイカを「季節物」として珍重する傾向が強く、マルイカよりもムギイカ狙いに重きを置く船宿が多い。
仕掛けはムギイカが好む11~14㎝のプラヅノを7本前後つないだ直結式がベース。
その下側にマルイカ用のスッテ2本を直ブラ式でプラスし、あわよくばマルイカというイメージで釣っていく。
ムギイカは宙層から下層まで幅広いレンジを遊泳するため、底から10mくらい上方まで70~100㎝刻みで誘い上げてアピールする。
キーポイントは竿でシャクらないこと。
軽いオモリを使う浅場の釣りは、竿でシャクった直後に直結仕掛けが上下にバウンドし、その反動でツノが下がってイカがスッポ抜けやすい。
手巻きの両軸リールであれば竿先を斜め下に構え、そのままハンドルを高速でクルッと1~2回転、そして一呼吸(0.5~1秒)ストップ。
この操作を繰り返せばオモリのバウンドを防止でき、スッ、スッ、スッとスムースに仕掛けが上昇していく。
楽をするなら小型電動リールで電動シャクリという手もあり、1秒1mのスピードで巻き上げながらキュッ、キュッと小さくシャクリを入れていく。
シャクった竿先を下げるときは道糸のマーカーが海面側へ下がらないように注意深くコントロール。
目印が海面側に下がると仕掛けも下がって、バラシの原因になるからだ。
なお、下側にプラスしたスッテ2本の直ブラ仕掛けは、マルイカの「着乗り」狙い。
右記した釣り方は底から10m巻いては落とすの繰り返し、当然のことムギイカの下にいるマルイカも刺激するからポツポツと乗る。
取材で釣れた貴重な2杯のマルイカも、このシステムで乗った。
ムギイカ主体の釣り方
【B】本命マルイカ、おまけでムギもというパターン
マルイカ人気の後押しもあり、現在はこちらのほうが一般的だろう。
仕掛けはマルイカ用のスッテを4~5本つないだ直結式がベース。
そして今度はその上側に11~14㎝のプラヅノを2本くらい直結でプラスし、宙層にいるムギイカを狙う。
食欲旺盛なムギイカはマルイカ用のスッテも抱いてくるけれど、やはりプラヅノのほうが乗りはいいようだ。
釣り方はゼロテンと宙のミックス。
前段のムギ狙いのように底上10mまで探るとマルイカが釣れなくなってしまうので、底から3mの低層を攻めていく。
オモリが着底したらタタキを入れてピタリと止め、ゼロテン状態でマルイカのアタリを数秒待つ。
続いて1m巻き上げ、宙の状態でタタキ&止め。
これを底から3mの間で繰り返していくと、ムギイカが宙層を通過した瞬間、上のプラヅノに抱き付いてくるという具合。
もちろん本命はマルイカだから、止めて待つ間に怪しいアタリが竿先に出たら即合わせ。
空振りでもいいから、小さな幅でシャープに掛けていく。
マルイカ主体の釣り方
【C】なんとか1杯乗ってくれ、という乗り渋りパターン
船長によれば反応はポツポツある。
それなのに前述の釣り方ではさっぱり乗らない・・・というケースもある。
まさに今回味わった、悲劇的な乗り渋りの日だ。
ムギイカ狙いのプラヅノ直結、お次はマルイカ用のスッテ直結と、仕掛けを取っ替え引っ替えする私。
その横でポツン・・・ポツン・・・と単発ながら堅実にムギイカの数を重ねていたのは長谷川丸に通う大ベテランの一人、田中さんだった。
仕掛けは11㎝のプラヅノを8本結んだブランコ式。
ここ数日釣況が下り坂と判断してか、終始このブランコ仕掛けでねちっこく、休むことなくシャクり続けていた。
探るレンジは底から10m。
着座したまま頭上までシャクって2秒待ち、1m巻いてまたシャクる。
そして10m上から反転して、段を付けながら誘い落とす。
冒頭に記したように、田中さんは結果10杯のムギ&マルイカを、このブランコ仕掛けで釣り上げた。
困ったときはブランコ仕掛けとはよく耳にするけれど、海中でツノが横になってフワリと漂うその様がヤル気のないイカに手を出させるのだろう。
マルイカと両狙いならプラヅノと5~7㎝のウキスッテを交互に配置してみてもOKだ。
ほか、デッドスロー釣法や置き竿釣法でもポツンと乗ることがあるので、極端に乗りが悪いときの最後の手段として試してみていただきたい。
乗り渋りのブランコ釣法
困ったときはブランコ仕掛け。シャクリ上げ&落とし込みでイカにアピール
出典:
ところで読者の皆さんは「食」という面で、ムギイカとマルイカのどちらがお好みだろうか。
私は10年くらい前までマルイカが一番ウマいと感じていたのだが、歳を重ねたせいなのか、ここ数年のうちにムギイカのほうが好きになってきた。
大人好みのちょっとした苦味があって、甘口のマルイカのように食べ飽きることがない。
イカ飯も奥深い味わいがあるし、ツボ抜きした内臓の小さな肝だけを胴の中に戻し、しょう油とバターを落としたホイル焼きもうまい。
両種が釣れる今のうちに出かけ、ぜひ食べ比べてほしい。
「スルメイカはね、日本の沿岸を南から北へとどんどん大移動するっていうでしょ。ムギイカもその子どもだから、時期がくるとやっぱりどこかへ消えちゃうんだよね。6月まで釣れる年もあれば、5月で終わることもあるから、ムギイカが釣りたい人は事前に確認して遊びに来てください」
谷川船長によると6月は沖合の深場に別群のスルメイカも回ってくるシーズン。
その釣況やお客さんの要望によってターゲットが日替わりメニューになる可能性が高いので、必ず確認して出かけたほうがいい。
マルイカのほうはこれから夏まで相模湾全域で楽しめそうな雰囲気。
ここにきて良型の群れも入ってきたようだから、梅雨時にピークを迎えるだろう。
料理用の食材を進呈してくれた田中さん。この場を借りて感謝いたします
出典:
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隔週刊つり情報(2021年6月15日号)※無断複製・転載禁止