相模湾のフグ船でトラフグが交じることは既報のとおりだが、まさか専門に狙うことになるとは思いもしなかった。
そのトラフグ船を開始したのが相模湾茅ケ崎港のちがさき丸。
藤田裕一郎船長によれば、昨年の好況ぶりから手応えは感じていたという。
釣り場は茅ケ崎沖一帯で、水深20m前後の浅場から80~100m前後の深場まで幅広く反応を探っている。
タナも底付近だったり宙層反応だったりと、トラフグ狙いならでは。
残念ながら魚影の濃さは昨年ほどではないようで今のところ釣果は船中5尾前後だが、乗っ込みらしき2.5kg級も上がっているし、昨年は5月になってからもトラフグがよく釣れたという。
今後の動向に要注目だ。
![釣行の写真]()
▲当日最大は1kg級だったが、今後大型の群れがやってくる可能性はある
出典:
ちがさき丸食堂とサバフグサービス
トラフグ専門船を開始したのは相模湾茅ケ崎港のちがさき丸。
4年前から周年のフグ乗合を開始(出船は基本的に木曜日と土日)、今では相模湾のフグファンにすっかり知られた宿になっている。
フグ船担当は元自衛隊の藤田裕一郎船長。
昨年取材したときはまだ仲乗りだったが、8月から正式に船長になったとのこと。
その藤田船長に専門船を始めた理由を聞いてみると、昨年の好況ぶりからある程度手応えを感じていたとのこと。
確かに昨年はショウサイ狙いでトラフグが交じり、いい日はトラフグだけでツ抜けするようなこともあった。
相模湾にトラフグが増えているのは間違いないところである。
そしてもう一つの理由が、今年はフグの調子があまりよくないこと。
ショウサイもトラも思ったほど数がのびないという。
それならいっそ、トラフグを専門に狙ってみようとなったそうだ。
しかし、いざ専門で狙おうとなったとしても、そう簡単に釣れるものなのか?ポイントはショウサイ狙いと違うのか?タナは底なのか宙なのか?気になる質問をぶつけてみた。
場合によってトラフグがよく交じるショウサイフグの実績ポイントを狙うこともあるが、基本的には宙層反応を探しているという。
ではどうやって宙層の反応を見つけるのか。
多数の専門船が出る東京湾と違って、相模湾でトラフグを狙っているのはちがさき丸だけ。
一隻で広大な海を探し切ることは難しいと思うのだが……。
これにはアマダイ船やコマセダイ船でトラフグが交じることがあり、それらの情報を元に周辺を捜索していると教えてくれた。
ただ、昨年はそこそこ反応が見られたものの、今年は見つけるのが大変だとも言っていた。
そして気になる釣れ具合だが、取材した2月29日までに5回出船して、おおよそ船中5尾前後。
2回目の出船で最大2.5kgを含み船中16尾ということがあったそうだが、今のところよかったのはその一日だけ。
これをもってどうこういうのは早計だが、相模湾の宙層にもトラフグはいて、専門乗合が成立していることだけは確かだ。
![釣行の写真]()
▲エサバリにガッチリ食っていることが多かった
出典:
相模湾のトラフグはどこからきたのか!?
神奈川県水産技術センター企画研究部資源管理課資源増殖担当加藤大棋技師に聞いた!
ここ数年、相模湾でもトラフグがよく釣れてますが、やっぱり増えてるんですか?
加藤 大棋技師(以下、加)増えている、というかたくさんいると思います。
実は相模湾ではトラフグの産卵が確認されていません。
相模湾で釣れているトラフグは、基本的には4月ごろに東京湾で生まれた個体だと考えられています。
え、てっきりトラフグの群れは西のほうからやってきて、相模湾を通って東京湾へくるものと思っていました。
加 東京湾で生まれたトラフグは、0歳のうちは東京湾内のおおむね水深50m以浅にいますが、水温が下がる冬期以降は25cm前後に達した個体から相模湾など東京湾外へ出ていくと想定されます(一部は湾内で越冬する)。
トラフグはけっこう大きく移動する魚で、過去には東京湾で放流した個体が相模湾はもちろん、房総半島や茨城県海域でも再捕されています。
なお、東海地方のトラフグ資源が豊富だった時期(2003年ごろ)は、その一部が相模湾に来遊したとの報告もあります。
では相模湾でトラフグが増えているというのは……。
加 2022年は東京湾でトラフグが多く生まれたので、0歳魚(25cm前後)が相模湾でも多く釣獲されました。
この世代が1歳になった2023年は、1歳魚(40cm前後)が多くいたと思われます。
それで昨シーズンは相模湾でもトラフグがよく釣れていたんですね。
船長に聞くと、今シーズンは去年ほどの魚影はない印象と言っていましたが。
加 2023年もトラフグは比較的多く生まれたと見ていますが、2022年ほどではなかったからかもしれません。
相模湾のトラフグ釣りが今後定着する可能性はありますか?
加 トラフグは産卵期には産卵場に集まる習性がありますが、それ以外の時期は海底(最大150m程度)から表層近くまでをとくに群れず回遊しています。
そのため、相模湾ではトラフグ自体は周年いますが、ポイントを見つけるのに苦労するかもしれません。
ただ、2022年と2023年生まれの世代はまだ相模湾にいると思いますし、ポイントの開拓次第などでは今後も相模湾でトラフグ乗合が成立する可能性はあります。
ですが、前述したように相模湾では産卵場が確認されていませんので、春の東京湾口のように大型がまとまって釣れるようなことはあまりないかもしれません。
仕掛けはシンプルなワイヤーカットウでOK
さて、当日は12名で7時に出船。
皆さんの道具立てを見ると、これまでフグ船を出していたこともあるからか、ほとんどの人が湾フグタックルを用意している。
道糸はPE1~2号で、この日はほとんど手巻きの両軸だったが、超小型電動を使う人も。
仕掛けはオモリは20号を基準に潮が速いときは30号を使用する。
ハリスにワイヤーを推奨する以外はとくにこれといった制限はないが、この日トラフグを釣った人は皆シンプルな1段カットウだった。
使用するハリの種類やスナップ接続するかなど多少の違いは見られたが、大型を警戒するあまり頑丈すぎる仕掛けにする必要はなさそうだ。
なおエサはアルゼンチンアカエビが主流で、これは船宿で5匹600円で購入できるし、数は限られるが船上で追加購入も可能だ。
最初のポイントは港を出てすぐの水深27m。
船長の指示は底から2~3mを探ってみてというもの。
ただし、どこで釣れるか分からないのでタナはある程度幅広く探って構わないとのこと。
しかしここではショウサイフグが1尾にサバフグが少々釣れただけで移動となる。
続いてのポイントは水深40m。
指示ダナは底から2~3mだったが、ここでは一時サバフグが入れ食いになる。
そんな中で左舷トモの人がヒョイッとトラフグを抜き上げた。
1kg級のまずまずサイズ。
まずは型が出て一安心だ。
聞くと、仕掛けを下ろしていく途中、上から20~30m辺りからアタリのようなものがあり、底まで落ち切る前に掛かっていたとのこと。
船中2尾目が上がったのはそれから1時間ほどたった午前9時ごろ。
水深27mで右舷トモの人にやや小ぶりの800g級がヒット。
聞くと底で食ったとのこと。
それを船長に伝えると、15mくらいに宙層反応が出ていたから、それが追っていって底で食ったのではないかと話してくれた。
この直後に左舷トモでまたヒット、同じく1kg弱が上がる。
これは底で食ったとも教えてくれた。
今思えば、9時前後のこの時間帯がこの日の時合だったのかもしれない。
ほどなくして左舷胴の間で600g級も上がる。
![釣行の写真]()
▲今年はサバフグが異常に多いという
出典:
今後の釣果アップに期待
その後は沈黙の時間が続く。潮が1ノット以上流れており、反応に当ててもすぐに通り越してしまうとか。
それでも船長は水深40~80mと幅広くトラフグの反応を探してくれ、時には30~50mの宙層反応だったり、あるいは底上2~3mの低層反応だったりしたが、たまに今年は非常に多いというサバフグの大群に遭遇するだけ。
エサの消耗が激しくなるのは厄介だが、何もないよりかはマシという考えもできる。
船長に潮の流れとかではなくトラフグが口を使う時間帯、いわゆる時合のようなものがあるのかと聞くと、だいたい昼過ぎ、午後に多い気がするという。
となれば、この後もうひと山あるかもしれない。
そして12時過ぎ、水深40m、海面からの指示ダナ20~25mを流していると、左舷トモの人が800g弱の3尾目をヒットさせた。
竿先を細かくチョンチョンさせながら止め、を1mごとに繰り返し、15mくらいでアタったとのこと。
実はこの方、前回釣行でも4尾釣っているとか。
仕掛けは極めてシンプルだし、誘いもとくに変わったところはない(底狙いではスーッと聞き上げ)。
船長は金のオモリがいいのかな?と言っていたが、常に誘い続けているのがよかったのかも。
どちらかといえば誘っているほうがアタる気がすると船長も言っていたし。
もちろんほかの人も一生懸命誘っているからそれだけが決め手とは思えないが……。
午後1時。
ラストはショウサイでトラ交じりを狙うときのポイントだという水深18~19mルへ。
やはり実績のある場所だからなのか、右舷トモ2番の人が1kg級を釣り上げ、この日は船中6尾で終了となった。
数的には物足りない感じもあるが、相模湾でトラフグ乗合が始まったということが何よりのニュース。
今後出船を重ねさらなるデータを蓄積、釣果アップにつながることを期待したい。
![釣行の写真]()
▲交じったショウサイフグはこの1尾だけ
出典:
INFORMATION
相模湾・茅ケ崎港
ちがさき丸
0467・86・1157
▼備考=予約乗合、出船7時(木土日のみ)。
別船はタイ五目、アマダイ、中深場五目などへ
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