ヨッシーこと吉岡進がエサ、ルアー釣りを問わず、様ざまな釣り物にガチでチャレンジしていく当連載。
第20回はヨッシーが得意とする東京湾のシーバスジギング。
12月中旬、シーバス乗合をスタートしたばかりの東京湾奥川崎つり幸より出船した。
水野聡船長が向かったのはシーバース周りの水深20m前後。
ヨッシーは開始早々に船下にジグを投入して1本目をキャッチする。
その後はアタリが遠のき、東京湾アクアラインの橋脚周り、風の塔などを転々とするが、潮が動いていないためか、魚探に反応があってもシーバスが口を使ってくれない。
続いて向かったのは羽田沖。
到着するとトリヤマに遭遇し、ベイトに着いたシーバスを狙い、船内でポツポツ釣れ上がる。
午後になると再び風の塔の水深25m前後へ移動。
開始の合図とともにアンダーハンドキャストでストラクチャーの際を狙う。
シーバスが掛かると捕食スイッチが入りダブル、トリプルヒットと盛り上がる。
ところがバラしてしまうとシーバスの警戒心が高まるのか、アタリが遠のいてしまった。
口を使わなくなったシーバスに対し、巻き速度を変えながら挑んだヨッシー。
Profile
よしおか すすむ
1982年生まれ。
ヨッシーの愛称で親しまれている。
一つテンヤマダイ、ライト系オフショアルアーを得意とする。
ジャッカルソルトプロスタッフ、シーガーインストラクター。
困ったときの、シーバス頼み。
東京湾における船でのルアーフィッシングの合い言葉だ。
ちょっとでも障害物があれば100%シーバスが着いているのではないかと思える、圧倒的な存在感。
細かいテクニックはともかく、ルアーが動いてさえいれば食ってきてくれるのではないかと思える、陽気なキャラクター。
東京湾には、シーバスがいる。
シーバスが、なんとかしてくれる……とは、しかし、ツリガチ取材班は思えなかった。
ツリガチ取材班は、シーバスに痛い目に遭わされている。
ビッグベイトを用いる、いわゆるコノシロパターンで、三人のうち二人が1本ずつ。
残る一人は、まさかのヨッシー。
信じがたい不発だった。
困ったときに頼れるはずのシーバスも、決してあなどってはいけないのである。
ちなみに、いつも楽しい珍道中になりガチなツリガチ取材班は、船中でのにぎやかさは随一とされている。
だが、釣りに関しては当然ながらガチであり、手抜きも甘えも一切ない。
それは相手がシーバスでも同じだ。
ヨッシーにいたっては百戦錬磨のプロフェッショナルである。
テクニックの確かさ、アイデアの豊富さは群を抜いている。
それでも、ときにはシーバスでさえ釣果は思うようにならないのだ。
だから飽きないし、続ける価値がある。
12月19日、我われツリガチ取材班は、「シーバスあなどれず」を、改めて痛感することになった。
東京湾奥川崎のつり幸から挑んだシーバスジギングでの出来事である。
シーバスジギングタックル
出典:
シーバスジギングの釣り方イメージ
ジグを投入し、着底したら糸フケを取る。
水深の半分ほど巻き上げてジグを追わせてフォールさせると、ジグがヒラッと落ちたときに食ってくる。
フォール中に道糸の出が止まったり、ジグが落ちなくなったらアタリなのでスプールを親指で押さえて合わせを入れる。
巻きで誘うときは巻き上げ速度を早くしたり遅くしたりして変化を付けよう。
東京湾のシーバスジギングは落として巻くだけで釣れるはず
ツリガチ!では以前、ビッグベイトでシーバスに挑戦した。
25cm近くあるルアーを投げ、トップウォーターで食いつかせるこの釣りには、一発狙いのギャンブル的要素がある。
一方、今回のシーバスジギングはグッとお気軽だと言われている。
冬を迎え、水温が下がるとベイト(シーバスがエサとするイワシなどの小魚)の群れが固まる。
すると、ベイトを狙うシーバスの居場所も固まる。
そのシーバスを釣ろうとする釣り人たちの狙いも、定まる。
つまり、釣りやすくなる。
しかも、シーバスは落ちてくるものに反応しやすい魚だ。
シーバスジギングの基本的な釣り方は、ジグを投入し、着底させ、高速で数m巻き上げ、ベイトリールのクラッチをフリーにしてまたジグを着底させる。
簡単に言えば、落として巻いて……の繰り返しだ。
通常のジギングのようなロッドアクションは不要で、本当に落として巻いて落とすだけ。
だからこそビギナーにもおすすめでき、まさに「困ったときの、シーバス頼み」なのだ。
模様はあまり芳しくなかった。
釣行前のつり幸の釣果は、12月17日が0~4本、前日の18日は0~5本。
出船前の船長いわく、潮が流れないことと、水温がまだ十分に下がっておらずベイトが固まっていないことが要因のようだ。
「1本取れればいいね。ハッハッハ」という船長の冗談が、まったく冗談に聞こえない。
落として巻いて落とせば釣れるのがシーバスジギングの魅力だが、裏を返せば、落として巻いて落として釣れない場合、やりようがない。
シンプルなだけに、工夫の余地は少なめ。
つまりは、シーバス任せという面が大きいのだ。
難しくないがゆえに、難しい。
それがシーバスジギングなのだ。
そして今回、シーバスジギングのワナにハマったのは、吉岡進その人であった。
6時50分に船着き場を離れ、35分ほどで最初のポイントに到着した。
東京湾シーバスジギングの超定番ポイント、東京湾アクアラインの風の塔周辺だ。
「水深27m。やってみてください」と船長。
すぐに、「ダ~メだ~コリャ。まるっきり潮が動いてないや」と、真っ正直である。
転々と移動する。
これはかなり厳しい戦いになりそうだ……。
移動の最中、ヨッシーが言う。
「東京湾ルアー釣り入門に最適なシーバスジギングだけど、7年ぐらい前からちょっとシブくなってきてるんだよね。シーバスが減っているのか、何か大きな変化が起きているのか分からないんだけど……。それにしても、今はまだ本格的シーズンには早いタイミング。シーバスは元気にあちこち動き回って散らばっている状態だ。2月中旬ぐらいになってグッと水温が落ちれば、群れが固まってくるよ」
シーバスが散らばっていても、群れが固まっても、釣り方そのものは変わらない。
落として、巻いて、落とすだけだ。
「ただ、拾い釣りという感じになるんだよね」とヨッシー。
「この時期は、1~2本釣ったらすぐ移動という、厳しい状況になることもあるんだ……」
アベレージは40~45cm前後
出典:
最初の1本が呼び水となるシーバスの捕食スイッチとは?
そんなヨッシーの言葉以上にタフなコンディションだった。
釣り開始から28分後に、ヨッシーが「食った」と叫ぶが、すぐに「あれ?」と首をかしげる。
「ん~、バレたかな。いや、付いてるな」と半信半疑でリールを巻く。
竿は……曲がっているような、曲がっていないような、微妙な雰囲気だ。
「ジグがエビってるのかもしれないな」と言いつつ、上がってきたのはセイゴ級のかわいいシーバスだった。
その直後、「んっ!」と大きく竿を曲げたのは、タカハシゴーだ。
そこそこサイズのシーバスを掛けた。
「……シーバススイッチを入れたのは、おれだからな……」
若干悔しそうなヨッシー。
「シーバススイッチ」。
1本がジグに食らいつくと、ほかのシーバスの捕食スイッチがオンになり、群れ全体の活性が爆上がりし、バタバタと釣れる。
ヨッシーが釣り、タカハシゴーが釣り、シーバススイッチオンか!?と思われたが、あとが続かない。
ツリガチ取材班の定番キャラクター、イチロウこと鹿島一郎さん、トモキこと板倉友基さんも「うーん……」「これは……」とうなるばかりだ。
それでも船長が「こりゃダ~メだ~」とすぐに見切りを付けてくれるから、釣り人たちはモチベーションを維持できる。
めぼしいポイントをいくつも回ってくれ、「船中だれも釣れずに移動」、さらには「ジグを投入せず移動」ということもしばしばだ。
あちこち移動して再び東京湾アクアラインに戻り、今度は橋脚周りを攻める。
シーバスが着いているとしか思えない一級ポイントも、不発……。
「シーバスは間違いなくいると思う。でも、ジグを追ってこない。食いつかない。 こうなると突破口を見つけにくいんだよね、シーバスは。シーバススイッチが入ってくれればいいんだけど……」
ヨッシーですらコレというパターンを見つけられない。
釣り開始から2時間40分ほど経過した10時ごろ、そのときは突然訪れた。
いくつかのポイントを巡ってから再びやってきた風の塔周辺で、シーバススイッチがガチでオンになったのである。
船中のそこかしこで竿が曲がる。
バラシも多いが、イチロウ&トモキもついにシーバスをキャッチし、胸をなで下ろす。
ヨッシーもヒットさせるが、キャッチにはいたらない。
バラシの多さもシーバスの特徴だ。
「こればっかりは仕方ないんだよね」とヨッシー。
それでもスイッチオンでヒットが続けば、かなりの確率でチャンスがやってくる釣りである。
だが、食い始めたときと同じぐらい唐突に、食いが止まった。
「パタリ」という音が聞こえてくるかのようだ。
11時過ぎ、船長は浅場のポイントへと船を走らせた。
水深は13m前後。
ヨッシーはテールスピンジグのバンブルズバイトビーンズTGやメタルバイブのビッグバッカー、さらにはソフトルアーのビッグバッカーソフトバイブも駆使。
スピニングタックルでロングキャストして巻いてくるという、横の釣りでガチ勝負を仕掛ける。
しかし、シーバスからの反応が返ってこない。
通常のジギングをしている人には、ポツリポツとヒットがあるのだが……。
ときおり、バタバタッと連発する時合が訪れる。
タカハシゴーは巻き上げの途中で、トモキはフォールで着底寸前に食わせることに成功している。
しかし、肝心のヨッシーにナイスヒットが出ない。
「浅場は横の釣りこそチャンスなんだけど……。今日は縦の動きにしか反応しないようだ。不思議なこともあるもんだ……」と、首を傾げるばかりだ。
釣り上げるたびにサイズアップし、最後は50cm級をキャッチ
出典:
羽田沖ではアンダーハンドでジグをキャストし、広く探るパターンで釣れた
出典:
巻き上げ速度が合うかどうかシビアな中で上げた会心の1本
確信を持っていたのは、意外にも永遠の初心者・タカハシゴーだった。
「今日のシーバスはフォールにあまり反応しない。ほとんど巻きで食ってくる」と、彼なりに見抜いていたのだ。
再び風の塔に戻る。
水深は27mほどあるが、タカハシゴーいわく、底から10m以上巻き上げたところでジグにアタックしてくるケースが多いとのこと。
海面直下までジグを追ってくるシーバスまでいる。
あちこちで竿が曲がる。
時合だ。
タカハシゴーが今日イチサイズの52cmを上げる。
そして……。
ついにヨッシーが「食った!」と声を上げた。
ナイスサイズのシーバスだ。
苦戦の果てにようやくたどり着いた、会心の1本となった。
ヨッシーが説明する。
「今日はSLJタックルがどこまで通用するか試そうと思ってね。いつもならベイトリールはハイギアなHGを使うんだけど、今日はローギアなPG縛りでトライしてたんだ。でも、PGではジグの動きが遅くて、見切られていたんだと思う。HGを使っているゴーさんが『巻きに反応する』と言ってたから、ここへきてHGのスピニングでジギングしてみた。そしたら一発(笑)。巻き上げからフォールさせた瞬間にドンとアタったよ。スピニングでシーバスジギングをやったのは初めてだけど、完全にギア比の合う・合わないが釣果に響いたね……」
沖揚がり間際には、やはりスピニングのシーバスジギングでズドンとビッグサイズを掛けたが、根に潜られて万事休す。
結局ヨッシーは、セイゴ1本とスピニングのシーバスジギングでの1本、計2本だった。
イチロウが8本、トモキが4本、そしてタカハシゴーも8本。
今日に限ってはヨッシーだけが外したということになる。
「もっとハイギアなXGを使ってみたけど、ダメでした。今日はHGの日だったと思います」とイチロウは振り返る。
「確かにシーバスジギングは、HGかXGを使うのが一般的。でも今日あえてPGを使ってみたことで、ギア比が釣果に影響することがよく分かったよ。いやあ、シーバス侮れないね。だから面白いんだけどね!」
負け惜しみ……ではないだろう。
シーバスジギングは落として巻いて落とすだけのシンプルなゲーム。
だからこそ、何かひとつ合わないと、徹底的に合わない……。
今回は、それがリールのギア比だった。
難しくないから、難しい。
シーバスジギングの奥深い魅力を改めて知ったヨッシーだった。
風の塔では巻き上げでもフォールでもよく釣れた
出典:
巻き上げからのフォー ルでバイトしてきた
出典:
終盤に50cm級のシーバスをキャッチ。ヒットルアーはシーバスアンチョビメタル80gのラメイワシカラー
出典:
船宿インフォメーション
東京湾奥川崎 つり幸
☎044・266・3189
備考=6時50分出船、木曜定休
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隔週刊つり情報(2023年2月1号)※無断複製・転載禁止