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[吉岡進の新世代沖釣り方程式(第11回)]外房のルアー青物(長栄丸/外房御宿岩和田港)

隔週刊つり情報編集部

一人が釣ると、全員が喜ぶ。

笑顔と喝采で「勝者」を称え、また海と向き合う。

何度もルアーをシャクリ、投げ続ける。

いつの日か、自分が勝者となるときのために。

ルアー青物は、まさにスポーツだ。

挑戦し続け、それがきっといつか報われる。

外房という比較的身近な海で、今日もドラマチックでスポーティーな釣りが展開されている。

プロフィール

先生◆よしおか すすむ

新型コロナウイルスの感染予防に最大限配慮しながらも、忙しく全国の船に乗り、多くの沖釣りファンたちとの交流を楽しむヨッシー。

船を下りてからもそのまま竿を担いで陸っぱり。

タックルさえあれば永遠に釣りし続けているのではないかという、夏休みの少年状態。

今日もどこかで竿を振っている。

生徒◆たかはし ごう

幼稚園のころから沖釣りをしているはずなのに、いつまでたっても上達しない「永遠の初心者」。

釣りそのものより海に浮かんでいることに喜びを感じている様子で、うまくなる気配なし・・・。

外房のルアー青物って何が釣れるの?

ジギングやプラグを使ったキャスティングで主に狙うのは青物御三家とされるヒラマサ、ワラサ、カンパチ。

いずれも「海のファイター」ぞろいで、パワフルな引きでアングラーを魅了する。

外房では20kg、30kgというモンスター級のヒラマサが釣れることもあり、油断できないスリリングさがたまらない。

剛竿がひん曲がる。

ドラグ音が響く。

魚と人との息詰まる攻防戦。

魚が走りたがるときは走らせ、弱った様子を見せたら巻く。

岡本明彦さんのファイトはとても落ち着いていて安心感はあるが、大物の予感に空気は張り詰めている。
 
ユラリ、と海面が青白く盛り上がる。

波を割って姿を見せたのは、18kgの巨体だ。

ネットに収まった瞬間、それまでの緊張感が一気に解き放たれ、船中に歓喜の声が響き渡った。
 
だれも彼も彼女もない。

全員が笑顔で雄叫びを上げる。

拍手。

喝采。

「すげえ!」の声。

岡本さんが釣った魚なのに、全員が自分のことのように喜んでいる。

その輪の中には、ヨッシーもいた。

「これこそ、ルアー青物のだいご味だよね!だれに出るか分からない。でも、出たときはみんなで喜び合う。この船はとくに雰囲気がいいからサイコーだよ。これはもう、心から素直に喜べる。ホントにおめでとう!」 

岡本さんが釣った18kgは、ヒラマサにしては丸まるとした体高で、その分走りはひときわトルクフルで、より長く、より強く、リールから糸を引き出したのだ。

それを見事に制した岡本さんは、まさにヒーローだった。
 
外房御宿岩和田・長栄丸の船上は、しばらくの間、興奮と明るさに包まれた。

岩瀬優船長はもちろん笑いが止まらない。

足取りも軽く操舵室に戻ると、すぐに真剣な表情に戻って海を見つめた。

ヤツらはまだ近くにいる──。
 
こういったドラマが、今日も起きているかもしれない。

あるいは明日、起こるかもしれない。

自分の握る竿に、いつ、大物が掛かってくるかも分からないのだ。
 
だからルアー青物は、「初心者大歓迎の釣り」とは言えない。

20kg、30kgのヒラマサが食ってくる可能性があるから、タックルには高いパフォーマンスが求められるし、掛けるため、獲るためのテクニックももちろん必要だ。
 
そして何よりも重要なのは、忍耐力である。
 
実はヨッシー&我われ取材班は、のべ3日にわたって長栄丸を訪れている。

その成果は、ヨッシーがワラサを1本、そして釣友である鹿島一郎さんがマハタ1尾だった。

筆者(タカハシゴー)にいたっては、150g前後のジグをシャクリ続け、15cm前後のプラグを投げ続け、肩や足腰に疲労をため込んで、完全オデコである。
 
何年もかけてようやくヒラマサを釣る人も少なくないから、「のべ3日」などまだまだ序の口だ。
 
ルアー青物は、決してラクな釣りではない。

各船ともブログなどでしばしば「明日も出船、チャレンジャー募集中!」という言葉を使っているが、これは文字どおり純粋にチャレンジである。
 
岡本さんが釣った18kgのような、あるいはもっとデカいヤツが釣れるかもしれない。

あの大物のためには、時間も労苦もコストも惜しまない。

ルアー青物に魅せられるのは、そういったロマンチストたちだ。
 
釣りは、釣りである。

どんな釣りにも優劣や貴賤はない。

ルアー青物はハードルが高い釣りではあるけれど、だからと言ってエライわけじゃない。

岩瀬優船長はその名のとおりとても優しく、初めてルアー青物に挑戦するなら長栄丸は間違いなくオススメの船だ。
 
だが、狙う獲物に対して真摯にチャレンジし、それをキッチリと釣り上げるための準備を考えると、どうしてもハードルが上がってしまうだけのことだ。

「この3日間、最高だったよ!」とヨッシーは笑った。

岡本さんの釣った18kgのヒラマサも、ヨッシーが釣った1本のワラサも、等しくチャレンジの成果なのだ。

釣行の写真

釣り場は御宿沖の水深60m後

タックルの方程式

ゴッツイ獲物=ゴッツイタックル

海や魚の状況に合わせて、バーチカル(垂直方向)な釣りであるジギング、ホリゾンタル(水平方向)な釣りであるキャスティングを織り交ぜるから、最低2タックル必要。

超ド級の大物に備えて、いずれもゴツい。

ロッドは専用品が必須で、スピニングリールはジギングなら8000番、キャスティングなら10000~14000番。

ラインシステムはジギング用がPE3号+リーダー50lb(フロロカーボン)、キャスティング用がpE4~6号+リーダー100lb(ナイロン)がメインとなる。

これがルアー青物の最初のハードルだが、長栄丸はレンタルタックルが充実している。

リールはなんとシマノの最高峰・ステラ!

まずはレンタルがオススメだ。

魚の写真

ヨッシーのジギングタックル。6ft前後の専用ロッドが使いやすい

竿の写真

長栄丸のレンタルタックルは、岩瀬船長がセレクトした専用ロッドにシマノ・ステラの組み合わせ。別途3000円が必要だが、それだけの価値アリ

ヨッシーのルアー青物タックル

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ルアーの方程式

マッチ・ザ・ベイトは船長から得た情報をもとにする

外房でのルアー青物では、150gのジグが主体的に使用される。

しかし、季節やポイント、さらに時間帯によって潮の動きが大きく変化する海域なので、120~250gのジグを多種用意しておくことが望ましい。

利用されるシルエットはセミロングを基本に、ショート、ロングタイプも効果的。

カラーについては多くの選択肢がありますが、それ以上に重要なのは、重さやシルエットのバリエーションに注意を払い、それに合わせて選ぶことです。

キャスティング用のプラグについては、16cm前後のフローティングペンシルが基本ですが、近年シンキングペンシルへの注目も増してきています。

多様なプラグが存在しますが、手に入りやすいものから試してみると良いでしょう。

ジグやプラグの選択は、その時の状況や青物がどのベイトを捕食しているかにより変わります。

ベイトにはイワシ、サンマ、トビウオといった多くの種類があり、マッチングしないと大きな失敗を招く可能性もあります。

ルアーの選択に困ったときは、直近の情報を得るために船長に問い合わせるのが最善の方法です。

ルアーの写真

(左)150gが中心だが、黒潮がぶつかる外房は潮がカッ飛ぶことも。200g以上も必須だ(中)潮が澄んでいればシルバー系、濁っていればゴールド系。明るさにかかわらずグローが効くことも(右)種類が豊富なプラグだが、入手が難しいマニアックなものも多い。ヤマリア、シマノなどは釣具店でも比較的買いやすくて実績もあるルアーだ

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ジギングの基本ジャークパターン

先生が教える基本釣法

基本を身に付けてから応用に挑戦しよう!

ジギングはワンピッチジャークが基本。

リールを回さずに竿をシャクリ上げ、竿先を下げる間にリールを1回転させる。

リズミカルにこなせるようになったら、スピードに緩急をつけたり、シャクリ幅を広くするなど、様ざまなアクションを試してみよう。

魚にじっくりとジグを見せるスロー、竿先をしっかり下げてジグをピュンピュンと飛ばすやり方など、周りの人たちのマネから始めればOKだ。

キャスティングはアンダーハンドでプラグを投げ、大きく竿先で払うようにしながら引いてくる。

アンダーハンドでのキャスティングは、揺れる船上ではなかなか難しい。

安全が確保できる場所でしっかり練習しておこう!

釣行の写真

(上)魚の頭をこちらへ向かせたらリールを巻いて寄せてくる(中)魚は船ベリを見ると驚いて再び走り出すので止まるまで待つ(下)魚を寄せて、頭からタモに誘導して取り込んでもらう

フローティングペンシルの操作法

釣行の写真

ロッドを水平に構え振り下ろし、元に戻すとフローティングペンシルが潜り、アクションしながら浮上する

生徒なりのお気付きポイント

いつか大物を獲るためにムダなことなんかない

のべ3日の釣行でアタリもなかったが、実はかなり充実していた。

不器用な自分でも回数を重ねるうちにジギングやキャスティングが上達してきた、という手応えを得られたからだ。

船長の状況説明アナウンスの理解度も増したように思う。

いつかズドンとやってくる大物のために、ムダなんかきっと一切ない。

釣行の写真

投げるときはアンダーハンドキャストが基本

SLJからのステップアップ

ハードルの高さが否めないルアー青物だけど、まずは今流行のSLJ(スーパーライトジギング)から始めるのがオススメだ。

ジグもタックルもライトながら、ジギングの基本動作であるジャーク(シャクリ)や、アンダーハンドキャストを覚えられる。

SLJで経験を重ねてからルアー青物に挑戦するのが最良の道筋だと思うよ!

釣行の写真

ジャークやキャストのやり方はSLJもほぼ同じ

ヨッシーの実釣レポート

チャレンジの先に待つ歓喜!次に味わうのは自分かも

落とした。

投げた。

巻いた。

さんざんやり尽くしたけど、自分としてはワラサ1本に終わった。

海鳥が集まってかなりテンションが上がったタイミングもあったんだけどね・・・。

青物は気まぐれ。

前日は爆釣していたのに翌日はサッパリ、なんてこともザラだ。

オレたち取材班は強力な呪いにかかっているのか!?

ちょうど谷間にばかり釣行してしまったようだ。

こういう激シブ日に当たりながらも、超ラッキーなことに岡本さんのファイトをすぐ隣で見ることができた! 

上がってきたのは18kgのヒラマサ。

自分のことのようにうれしかったなぁ! 

だれが釣っても船中が大盛り上がりになるのはルアー青物船ならではの気持ちよさだね。

釣り人の写真

ジギングで18kgのヒラマサをゲットした岡本昭彦さん

釣り人の写真

ワンピッチジャークで誘うジグにカンパチがヒット!

釣り人の写真

待望のワラサをキャッチしたヨッシー。岩瀬優船長と喜びを分かち合う

外房のルアー青物の解

正解=あきらめずに釣り続けること

ジギングでは、ワンピッチジャークをベースにした様ざまなアクションを試した。

キャスティングは、投げる方向や巻きスピード、プラグの種類を替えるなど色いろやってみた。

でも、正解が見つからなかった、というのが正直なところだ。

うまくいかなかったのは、魚のご機嫌としか・・・。

ただ、岡本さんを始めとしてポツポツとは釣っている人がいるので、何かうまくいく要素があったはずだ。

それがいったいなんなのかを探したくて、今日も釣り人たちはルアー青物船に乗り込むんだよね・・・。

釣り人の写真

少ないチャンスをモノにしたヨッシー。値千金の1本、この重量感が心地いい

【船宿インフォメーション】外房御宿岩和田港 長栄丸

090・1124・2150

激シブな状況でも、船長が明るければ釣行は楽しい! 

岩瀬優船長はそのことを改めて教えてくれた。

笑顔が絶えず、とにかく楽しく釣りができた。

操船もアドバイスも的確かつていねい。

なにしろ名前のとおりに優しいから、「もっと聞かせて!」と思うんだよね(笑)。

初めて挑戦する方には断然オススメできる・・・けど、文中にも書いたようにある程度の経験は必要なのがルアー青物。

自分のスキルが心配なら、電話して聞いてみるといいよ! 

レンタルタックルにステラを使ってしまうなど、「釣ってほしい」気持ちがあふれ出ちゃっている船長だから、いいアドバイスをしてくれるはずだ。

船長の写真

全力でサポートしてくれる岩瀬優船長(中央)

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