最大で40kg以上に育つモロコは釣り師あこがれのビッグターゲット。
そのモロコを専門乗合で狙える希少なエリアが南伊豆だ。
モロコ狙いを看板にする南伊豆手石港の敬昇丸では、今年は4月下旬から神子元島周りで好調に釣れており、5月5日までに26・4kgを筆頭に6尾が取り込まれている。
5月12日の取材日は神子元島周りの水深40~60m前後を狙い、15・3kgが上がった。
「モロコは潮が気に入ったときしか口を使わない魚で簡単には釣れませんが、これから温かい潮が釣り場に差し込んで水温が上がると、活発にエサを追うためアタリも増えるはずです。夏に向けて数が出るので期待してください」とは肥田能研船長。
今後も南伊豆のモロコから目が離せない。
三大大型根魚といえば深海のアブラボウズ、中深場のイシナギ、そして浅場のモロコ(標準和名クエ)があげられる。
中でもモロコは釣れる確率の低さと、抜群の食味の評価からプレミアム度は根魚類のみならず、釣り・食用魚類の中で頂点に君臨するといっても過言ではない超の付く高級魚だ。
関東近郊では駿河湾御前崎沖や銭洲、伊豆諸島周り、南房エリアなどで狙うことができるが、聖地ともいえる代表的な釣り場は南伊豆エリアをおいてほかにないだろう。
モロコはほぼ周年狙えるが、水温が上昇する初夏~秋の期間は浅場に移動し、活発にエサを捕食。
文字どおりのトップシーズンとなる。
南伊豆エリアで釣れるモロコのアベレージサイズは20~30kg。
そんなプレミアムターゲットを追い求め、足しげく通う熱狂的なアングラーも多く、本誌船宿データベースでは手石港の敬昇丸と愛丸が乗合船を出船している。
釣り場は神子元島周辺をメインに手石~石廊崎沖にかけての水深30~60m。
今シーズン、ひと足早くモロコ狙いで出船している敬昇丸では4月29日に16kgと17・5kg、5月4日は23・5kg、翌5日は25・8kg、26・4kg、23・4kgとなんと一日で3尾の釣果を記録。
今回取材に訪れた12日にも15・3kgが上がり、オデコが当たり前ともいえるこの釣りの常識を覆す釣果が続いている。
エサ釣り(サバ)用と泳がせ用のタックルを用意
使用するエサはサバがメイン。
モロコ釣りの協定開始時間(9月30日までは6時)の1時間ほど前からサバを釣り、当日使用するエサを確保する現地調達が基本。
サバ釣りの仕掛けは6×8号または8×10号の6~8本バリのフラッシャーサビキを使用する。
オモリはそのときの水深や潮の速さによって使い分けるので、100~200号を用意。
タックルはワラサ釣りに使えるワンピースロッドにPE4号を200m以上巻いた電動リールの組み合わせが敬昇丸・肥田船長のおすすめ。
釣れたサバは船のイケスへ入れ生かしておく。
エサ用のサバは一人当たり15~20匹くらい確保できれば安心だ。
「生きのいいエサより、少し弱っているくらいのエサのほうが食いがいいよ。バケツで死なせてから使う人もいるくらいだからね」と船長が言うように、カンパチやヒラマサ、ブリなどの青物狙いの場合はエサには素手で直接触らないように扱いには神経を遣うが、モロコはスイッチさえ入れば生きエサ、死にエサ、種類に関係なく食ってくるので、さほどエサの扱いには気を遣わなくても大丈夫とのことだ。
モロコ釣りといえば以前はロッドキーパーに竿を固定したままリールを巻くウインチスタイルが主流だったが、タックルの進化もあり最近は手持ち竿でのガチンコ勝負、スタンディングスタイルでチャレンジする人が多い。
モロコのタックルは全長1.8m前後、竿を起こしやすいしっかりとした胴と、食い込みがいい軟らかい竿先を合わせ持った泳がせ用ワンピースロッドに20LBクラスのレバードラグ式の両軸リールがベストバランス。
体力に自信がない人はシマノ・ビーストマスター、ダイワ・シーボーグ800などパワーがある電動リールでもOKだ。
道糸はPE10~15号を200~300m巻いておく。
信頼できる国内メーカーのハイグレード品を選びたい。
仕掛けはリーダー80~100号3m、大物泳がせに対応する大型親子サルカンを介し、ハリス60~80号2m、ハリはクエ30~40号の胴つき1本バリ仕様。
20~30kgの魚に対し60~80号のハリスは大袈裟過ぎると思われるかもしれないが、遠征大物釣りに精通した人から聞いた話では、泳がせでヒラマサ、カンパチを狙っているときにモロコが食ってくることがあるが、ハリスが40号以下のときはほとんど切られてしまうとのこと。
底から離してさえしまえばおとなしく上がってくるが、ファーストバイトは尋常ではないトルクパワーで抵抗してくる。
その尋常ではないパワーこそがアングラーたちを熱狂的に引き付けるファクターでもあるのだ。
オモリは200号。
捨て糸は使わずダブルスナップサルカンなどで親子サルカンに直結する。
険しい岩礁帯を狙う釣りなので、根掛かりは付き物。
仕掛け、オモリは複数用意しておきたい。
船長、常連さんに教えていただいたオモリの根掛かり軽減策としてゴムホースを短く切ってオモリ先端に被せておくと効果があるとのこと。
![釣行の写真]()
(左)モロコ仕掛けはリーダー80~100号3m、ハリス60~80号2m、クエバリ30~40(右)サバ仕掛けはフラッシャーサビキ。オモリ100号で水深や潮流により200号まで使う
出典:
![釣行の写真]()
▲ドラグをフルロックにしてスタンディングでガチンコ
出典:
サバエサの付け方
![エサ]()
▲サバエサの付け方は下アゴ、もしくは口中から頭の中心に刺し通すか、第一背ビレの前辺りにハリを刺す背掛けが一般的。デッドベイトの場合も生きエサと同様の付け方でいい
出典:
![サバ]()
▲サバの尾ビレをカットし、身に切り込みを入れて中骨を半分取り除くと潮流によくなびき、エキスが流れ出ることで集魚効果もある。柔らかいのでくわえ込みもいい
出典:
30秒に1回のペースでタナを取り直す
釣り方は仕掛けを投入し、オモリが着底したら3~4m底を切ってアタリを待つだけと至ってシンプル。
しかし海底は険しい岩礁帯。
潮も流れていれば急激に水深が変わる崖のような地形のところも多々ある。
そのため底を切ったあと、竿先をジッと眺めているだけでは根掛かり必至だ。
アタリを待っている間の大事なポイントはこまめなタナの取り直しだ。
では、タナの取り直しはどのくらいのペースで行えばいいのか。
肥田船長に質問して返ってきた答えは30秒に1回だ。
当日も潮が緩い時間帯においても、30秒に1回のペースでのタナの取り直しで、水深が1~3m変わることは当たり前のようにあった。
根掛かり防止だけではなく、このタナの取り直しこそが仕掛けを新しい場所に歩かせ、モロコの目の前にエサを落とし込み、そして逃げていくかのような誘い効果を生み、モロコの食い気を掻き立てるといわれている。
実際にモロコのアタリはタナを取り直した直後にくることが多い。
アタリはいきなりズン、ズドーンと竿が引き込まれるケースが多い。
コツコツとした小さなアタリは小型のサメだが、しかしここで仕掛けを回収はするなと船長。
「サメがつついているエサをモロコが横取りしてくることがよくあるから、サメのアタリがきても無視してタナの取り直しを続けてごらん。頭だけになったエサでもモロコは食い付いてくることがあるからね」と船長。
いずれの場合も竿が大きく引き込まれたときが合わせどき。
モロコは巨体に似合わず警戒心が強く、身の危険を感じたときは即座に逃げ込める岩穴や隙間の近くにいる魚だ。
うまくハリ掛かりさせても根に潜られてしまえばまず再び出てくることはなく、ジ・エンドだ。
大きく合わせを入れたら、根に潜られないよう即座に、そして強引に巻き上げる。
そのためにドラグが滑らないようあらかじめドラグをフルロックに設定しておく。
とにかく最初の5mは渾身の力で巻き上げろ!というのがこの釣りの鉄則。
この一瞬のガチンコ勝負こそがモロコ釣りのだいご味でもある。
巻き上げは強引に、かつ一定のテンションで行うこともポイント。
モロコは水圧の変化に弱い魚だ。浮き袋が膨らみ、最後はボカンッと浮き上がってくる。
慌てずギャフを口に掛けて船中に取り込めばいいが、足の上に魚を落としてしまったりすると鋭いヒレのトゲでケガをしてしまう可能性もあるので気を付けて取り込もう。
南伊豆のモロコ好期到来値千金となる会心の1尾
モロコといえば真っ先に南伊豆手石港・敬昇丸の肥田能研船長を思い浮かべる人は私だけではないはず。
その敬昇丸、GWの連休中に3回出船し、なんと計6尾ものモロコを釣り上げているではないか。
取材時に釣れる確率はジャンボ宝くじ1等当選並みのターゲットではあるが、この釣果を見て行かないわけにはいかないでしょ。
5月12日、私を含む6名のチャレンジャーが乗り込んだ敬昇丸は4時半に青野川河口を出る。
まずはエサに使うサバを釣ることからスタート。
潮が速く、水深も深いのでオモリを200号にするよう指示。
当日はエサ釣りに苦戦。
正味1時間半ほどで一人当たり4~5匹のサバと10匹前後のハチビキを確保したところでモロコ狙いに転進となった。
私以外の方は泳がせ用ロッドに20LBクラスの両軸リールといったガチンコスタンディングタックルでのチャレンジだ。
私は竿こそ泳がせ用だが、体力に自信がないのでリールはPE15号を300m巻いた大型電動リールをセットした。
7時10分、神子元島周りのモロコ場に到着。
「ちょっと待ってね、潮見るから」としばしGPSとにらめっこ。
潮向きと速さを確かめたところで、「はい、やってみましょう。60mから浅くなっていきます。タナは底から3~4m。こまめにタナを取ってくださいね」とのアナウンスで開始。
モロコが食った!
オモリが着底したら4m底を切り、30秒カウントしたところで再びタナを取り直す。
潮はそれほど速くないようだが、底ダチを取り直すとけっこう水深の変化があるものだ。
流し変えたところで右舷ミヨシの澁谷さんにコツコツとつつくようなアタリ。
「サメのアタリがきても無視してタナ取りを繰り返してね。モロコがエサを横取りして掛かってくることがあるからね。55m。浅くなっていくよ。いい感じの潮だ。この潮なら食うよ」と船長。
そしてしばらくすると、「おっ、きたな!?そりゃモロコだぞ、モロコ!」
見ると竿尻を腹に当て、渾身の力でリールのハンドルを回す澁谷さん。
常連さんがギャフを持ってスタンバイ。
ところがあろうことか途中でハリ外れ。
残念、空のハリだけが手元に戻ってきた。モロコは口周りが硬い魚なので、ハリ外れはよくあること。
難易度高めとなる一因でもある。
「食った!」
気落ちした一同を奮い起こすかのように今度は左舷ミヨシの馬場さんの竿が突っ込んだ。
ロッドを起こし、渾身の力でリールを巻く。
モロコ釣りの経験を相当積んできている方とあって、華麗なポンピングさばきで魚を浮かせてくるさまは実に格好いい。
海面下に見えてきた灰色っぽい魚影。徐々に茶色みがかった色を増しながら、海面に近づくにつれその魚影は大きくなってきた。
ガバンッ!
そんな音が聞こえるかのように海面が割れ、茶斑模様の魚体が現れた。
「モロコだっ!」
大きく開いた口にギャフが掛けられ、船内に取り込まれると同時に歓声が沸き上がる。
敬昇丸で今シーズン7尾目となるモロコは15・3kg。
小ぶりではあるが、貴重な貴重な海のお宝だ。
私もライター歴40年近くになるが、ようやくモロコという魚を初めてカメラに収めることができた。
さあ、もう1尾。
だれもがそれを期待したが、その後は潮が飛ぶように速くになってしまい、サメのアタリのみでタイムアップとなった。
モロコは釣れる確率は極めて低い魚だが、だからこそ釣れたときの喜びが大きい。
チャレンジする価値は大いにありますぞ。
さあ、南伊豆へ!
![釣行の写真]()
▲船中ファーストヒットは無念のハリス切れ
出典:
![釣行の写真]()
▲口にギャフ打ちをして取り込む
出典:
船宿information
南伊豆手石港
敬昇丸
090・7026・1991
▼備考=予約乗合、8人限定。
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隔週刊つり情報(2024年6月15号)※無断複製・転載禁止