東京タワーの高さよりも深い深海に生息する魚を狙えるのも船釣りならではのだいご味。
そしてこの時期にファンの注目を浴びる深海ターゲットはなんと言ってもメヌケ(アコウダイ)。
茨城~房総にかけて点在する釣り場の中から今回は外房大原港の鈴栄丸で取材した。
齋藤俊一郎船長によると今シーズンは模様がよく、出船さえできればほぼ確実にお土産以上は期待できるとのこと。
取材した4月中旬も片貝沖の水深550m前後を中心に狙い、メヌケの提灯行列、キンメの多点掛け、そして40kgのアブラボウズが登場と、まさに深海オールスターズといった釣果に恵まれた。
メヌケ、キンメ、アブラボウズとハットトリックを達成した田渕雅生さんに外房の深海釣りを楽しむためのコツを聞いてみた。
食味のよさから近年注目されているアブラボウズ。田渕さんが釣ったのは40kgジャスト
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One point advice グローブは必携
使用するオモリは500号。
加えてキンメは1kg前後、メヌケは3~5kgと良型主体なので、多点で掛かると仕掛けを取り込むだけでもその重量は相当なもの。
仕掛け回収時は滑り止めを兼ねて必ずフィッシンググローブを着用したい。
3kgメヌケを抜き上げるだけでも大変
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外房の深海釣りといっても釣り場は各地にあるが、今回は九十九里~外房のメヌケをメインに狙う深海釣りを取り上げたい。
本誌船宿データベース加入の船宿では片貝港の正一丸と大原港の鈴栄丸が出船しており、それぞれ独自のスタイルで狙っているが、今回は鈴栄丸の釣りをベースに紹介する。
直近の模様を齋藤俊一郎船長に聞くと、シケが多く週に1~2回しか出船できないことが多いものの、出られさえすれば毎回ほぼ十分な釣果に恵まれているという。
今回釣行したときの釣り場は片貝沖、いわゆる「溝」と呼ばれる片貝海底谷を狙ったが、もっと南側の太東~大原沖にも同じような海底谷があり、本来はそちらを攻めたいところだが、今のところ潮が速くて釣りにならないとか。
いずれにしろポイントの水深は300~650mほどで、550m前後を狙うことが多いそうだ。
メヌケ、アブラボウズ、キンメとも基本的には同じポイントで釣れ、メヌケは3~5kg級中心に2~7kg、アブラボウズは出れば30kg以上、キンメも1kg前後と良型主体なのがすごい。
鈴栄丸では毎週火曜日と金曜日は年間通して深場釣りを受け付けており、そのほかの日でもお客さんの希望があれば出船する。
レンタルタックルも3セットあり、10本バリ仕掛けやイカの切り身エサも販売。
船上では若船長がアシストしてくれるので、ビギナーでもチャレンジしやすいのはうれしい。
キンメもいい反応に当たるとズラズラと掛かってくる
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(左)キンメ、メヌケ、アブラボウズとも同じポイントで釣れる(右)メヌケは3~5kg前後が多い
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下バリはアブラボウズ狙い
さて、今回仕掛けや釣り方についてナビゲートしてくれたのはご存じダイワスタッフ・田渕雅生さん。
年間30回以上は当エリアの深海釣りに通うエキスパートだ。
使用しているタックルは、竿がダイワのマッドバイパー深海H195。
リールはシーボーグ1200MJで、道糸はPE10号を900m巻いている。
これで下田のキンメから外房の深海までをカバーできるという。
オモリは500号または鉄筋2kg。
ハリ数は10本が基本だが、このところはキンメがよく釣れているので15本まで増やしてもいい。
幹糸はナイロン35号、枝スは同18号。
枝ス長は70cm、枝間は150cmで、掛け枠の大きさに合わせて作っている。
ハリはムツ20号。
アブラボウズに期待するなら一番下にハリス35号、ムツバリ30号1mの枝スを出しておく。
35号のハリスで70キロ級まで取り込んだ実績があるそうだ。
なおアブラボウズ用のハリは鋭い歯から守るためチモトを強化チューブやケイムラパイプで補強、さらにアピールとしてタコベイトを2枚重ねで付けておく。
付けエサはスルメイカの切り身をメインにサバやアナゴの切り身、ほかアブラボウズ用で丸のままの小型のスルメイカも用意している。
アタリの見極めが大切
鈴栄丸では投入はトモから順番に行うことが多い。
ハリ数が多いため田渕さんなど慣れた人は掛け枠を使うが、初心者で10本以下のハリ数なら船ベリへ並べて投入するスタイルでもいい。
いずれにしろ船長から合図があったらオモリを海面へ落とし、投入が済んだら手を上げて合図を送る。
投入した直後はバックラッシュすることもあるのでリールのスプールに軽く手を添えておく。
それ以降は着底が近づくまでフリーで下ろしていく。
潮が速いと着底が分かりづらいこともあるが、田渕さんは竿先だけでなく、リールのスプールの動きも見ておくといいとアドバイスしてくれた。
ウネリによって竿先が上下して着底を見逃してしまうこともあるが、そんなときでも道糸の出は一瞬止まる。
着底を確認できたら、最初は道糸が払い出すことが多いので、少しずつ糸フケを巻き取り、なるべく道糸(仕掛け)を立てていく。
十分道糸が立ってきたら、船の流れとともに仕掛けを移動させていく。
いわゆる根歩きと呼ばれる動作で、最初は船の揺れでオモリがトントン底をたたく感触を感じながら釣っていったほうが分かりやすい。
田渕さんのように慣れてくると、ラインの張りをゼロテンション気味にしてオモリをズルズル引きずるように探っていく。
ただしこのやり方は、道糸がたるみすぎると根掛かりしやすくもなるから注意したい。
そのほかのコツを田渕さんに聞くと、アタリの見極めが大事だという。
上バリに食ったのか下バリに食ったのか、キンメなのかメヌケなのか、はたまたアブラボウズなのか……。
アタリが分かればその後の対処もしやすく、多点掛けも狙いやすくなるという。
例えばキンメの場合はクンクンクンと上品なアタリが続き、メヌケの場合は最初にガンガンガンッと竿先をたたいてから少しずつおとなしくなっていく。
アブラボウズの場合は着底してすぐにアタることが多く、きつめに締めたドラグを滑らせるように強烈に引き込むそうだ。
掛かったハリの位置の判断は、ざっくりいうとメヌケなら最初のアタリが強めなら上バリ、弱めなら下バリ。
上バリに掛かったと思ったらそのままの位置、もしくは2mくらい巻いて待つ。
アタリが続けばそのまま待ち、続かなければさらに2mずつ巻いて追い食いを狙う。
下バリに掛かったと思ったら枝間分、1.5~2mくらいずつ道糸を送り出していく。
キンメの場合は真ん中より上に掛かることが多いので、基本的にはタナをキープしたまま根歩きさせたほうが多点掛けする率は高いという。
アブラボウズの場合はキンメやメヌケも付けてやろうと欲張ると根掛かりしたりハリから外れてしまうので、速やかに巻き上げたほうがいいそうだ。
巻き上げは各自の判断で自由だが、田渕さんにコツを聞くと、ドラグはフルロックに近いくらいに締めて、ウネリで船が持ち上がったときでも巻き上げが止まらないようにしたほうがかえってバラしにくいという。
ちなみに田渕さんが使っているシーボーグ1200MJの場合、パワーモードなら24、スピードモードなら20が目安だそうだ。
深海釣りは潮次第なのでいつも思いどおりにいくとは限らないが、いい日に当たれば今回の田渕さんのように深海ご三家のハットトリックを決めることもできる、なんとも夢のある釣り。
未経験の人も、機会があれば一度チャレンジしてみてはいかがだろう。
船宿information
外房大原港 鈴栄丸
0470・62・0351
備考=予約乗合。
出船2時半。
貸し道具、仕掛け、エサの販売あり
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隔週刊つり情報(2023年6月1号)※無断複製・転載禁止