ヨッシーこと吉岡進がルアー釣りを中心に色いろな釣り物を狙い、毎回釣りの楽しさを伝えていく「Enjoy Every Fishing(略してE2F)」。
第9回は外房のルアー青物。
目下は大原沖の水深15~50m前後にヒラマサ、ワラサ、カンパチなどが回遊しており、これらをジギングで狙いつつ、トリヤマやナブラに遭遇すれば、キャスティングで10kgを超える巨大なヒラマサを狙うこともできる。
Profile
◆よしおか すすむ
1982年生まれ。
ヨッシーの愛称で親しまれている。
一つテンヤマダイ、ライト系オフショアルアーを得意とする。
ジャッカルソルトプロスタッフ、シーガーインストラクター。
11月下旬に釣行したのは外房大原港のしあき丸。
当日は午後船で実釣時間も短いため、ヨッシーは少しでも釣れる可能性が高いジギングで勝負する。
松嵜好昭船長が向かったのは港から1時間ほどの大原沖の水深40m前後。
船はドテラ流しで根周りを広く探り底から10m上までをジギングで狙うが、ジグを投入すると群れが散ってしまう。
ここではヒラメが船中3枚上がり移動となる。
ジギングの釣り方 ワンピッチジャーク
リールを回さずに竿をシャクリ上げ、竿先を下げる間にリールを1回転させる。
リズミカルにできるようになったら、スピードに緩急をつけたりシャクリ幅を広くするなど様ざまなアクションを試してみよう。
続いて向かったのは水深15~25m前後の根周りでカケ上がりを流していく。
ヨッシーはジグを前方へキャストし、スローなワンピッチジャークで誘うと5シャクリ目にヒット!
ジギングロッドを曲げてファイト開始。
激しい突っ込みをかわして寄せてきて、3.1kgのサンパク(イナダとワラサの中間サイズ)を取り込んだ。
しばらくは潮回りを繰り返して根周りを探っていくがアタリは遠く、釣れるのはカサゴやサバフグなど。
やがて夕マヅメを迎えると同船者が2.2kgのヒレナガカンパチをキャッチし、船内が盛り上がる。
果たしてヨッシーはチャンスタイムをものにすることはできるのか!?
![釣行の写真]()
▲船中第一号は3.1kgのヒラメ
出典:
#Enjoy Every Fishing Tackle&Lure guide
ヨッシーの青物ジギングタックル
ワンピッチジャークに竿を小刻みに動かすジャカジャカ巻きを織り交ぜて緩急を付けたアクションでリアクションバイトを誘うときは663(やや硬め)のロッドにハイギアタイプのリール。
ワンピッチジャークだけで誘うときは632(やや軟らかめ)のロッドにパワーギアタイプのリールを組み合わせる。
![釣行の写真]()
▲100~180gがメイン。セミロングは潮切れがよく、潮が速いときにも扱いやすい。カラーは潮が澄んでいればシルバー系、濁っていればゴールド系。明るさにかかわらずグローが効くことも
出典:
#船宿インフォメーション
外房大原港
しあき丸
080・1326・0504
今年6月にあままさ丸から独立。
船長はルアー釣りを得意としていて、シャクリ方など分からないことがあればお手本を見せながら親切ていねいに教えてくれるのでビギナーにもおすすめ。
仲乗りだったときの経験を生かし、釣り上げた魚は血抜きをして神経絞めもしてもらえる。
備考=予約乗合、午前船5時半、午後船11時45分集合。
ヒラメ、一つテンヤ、タイラバ、SLJへも
![船長]()
▲松嵜好昭船長(写真左)
出典:
![釣行の写真]()
▲シャクリ方などお手本を見せてくれるので初めてでも安心して釣りが楽しめる
出典:
![釣行の写真]()
▲血抜きをして神経絞めまでしてくれるのでおいしく持ち帰ることができる
出典:
勇者である。
猛者とも言える。
賢者ではないけれど、間違いなく愛すべき存在だ。
11月21日、お昼前。
外房大原港・しあき丸の船着き場に集結した者たちは、だれもが一様にいいツラ構えをしていた。
間もなく始まる勝負に対して静かに意気込んでいる。
厳しい戦いになることなど、最初から分かり切っているのだ。
敵は外房の大海原を自由自在に泳ぎ回っている。
神出鬼没で、しかも、ひどく気まぐれだ。
昨日までの釣果は、ほとんどあてにならない。
明日の釣果もほとんど読めない。
今、このとき、この瞬間しかない。
ルアー青物は、そういう釣りだ。
きっと負け戦になるだろう。
それでもきたるべき大物に耐えるゴツいタックルと決して折れない心を携えた戦士たちは、果敢に船に乗り込み、海へと乗り出す。
いつ訪れるかもしれない、栄光のときを夢見て。
「この釣りが好きなんスよね」と微笑むのは、しあき丸の松嵜好昭船長だ。
名が「よしあき」で、ニックネームは「しあき」。
それがそのまま船名になった。
同じ大原港のあままさ丸で、仲乗りとして、そして船長として経験を積み重ね、今年6月に独立。
ルアー青物を中心に据えながら、ヒラメ、一つテンヤマダイ、そしてマダコなど多彩な釣り物で遊ばせてくれる。
「自分はもともとバスフィッシングが好きだから、ルアー釣りの魅力は十分に分かってます。船としてもルアー釣りを盛り上げていきたいと。でも、エサ釣りにはエサ釣りの面白さがあるんスよ。お客さんには、どっちも知ってほしい。ルアー釣りの人はルアーしかやらない、エサ釣りの人はエサ釣りしかやらない、という傾向が強いけど、オレとしてはすげぇもったいないな、と思うんスよ。ルアー釣りをすることでエサ釣りも上手になるしね」
戦いに挑む勇壮さと、午後船ならではののんびりとしたムードが入り交じる。
正午ちょうどに、しあき丸は港を離れた。
![釣行の写真]()
▲ゴールド系はヒラメの定番カラー。100gのセミロングジグで
出典:
短い実釣時間で答えを出すためジギングのみで勝負する
ドッドッドッド……。
外房にしては非常に珍しいベタナギの海を、しあき丸は進む。
快晴だが、しあき船長の表情はどんよりとシブい。
「4日前に南南西の爆風が吹いたんスよ。それですっかり水温が下がっちゃって……。24度ぐらいあったのが、見てくださいよ、今は20度ッスからね。仲間の船に聞いても、青物が全然口を使ってくれないって。なんでこんなときに取材なのかなって思ったッスよ……」
秒速30m近い南南西の風が、外洋の冷たい海水を灘へと押し込んできたのだ。
水温が下がると青物の活性も下がる。
苦笑いするしかない、しあき船長なのである。
しかし、この男はまったく諦めてはいなかった。
ジャッカルプロスタッフのヨッシーこと吉岡進さんである。
ルアー青物船へは、ジギングタックルとキャスティングタックルの両方を持ち込むことが多い。
ジギングでの縦の釣りを基本として、ナブラが湧いたり表層に雰囲気が出たときにはプラグを投げる。
しかしこの日のヨッシーはキャスティングタックルを持たず、ジギングタックルだけだった。
もちろん、諦めではない。
むしろ逆の、攻めの姿勢だった。
「なんとなくの雰囲気でしかないんだけどさ」とヨッシー。
「チャンスが少なそうなときほど、どっちかに絞ったほうがいい。そりゃあナブラがボカンボカンと湧きそうならキャスティングタックルも持ち込むよ。でもそういうときは、ジギングでも釣れるからね。ジギングにしてもキャスティングにしても、その釣りをやり切らないと、何が正解か分からない。だったら、少しでも釣れる可能性が高いほうに絞ったほうがいいでしょう」
港を離れてから1時間。
戦いが始まったのは、午後1時ちょうどだった。
水深は37m。
150g前後のジグを着底させ、素早く底を切って根掛かりを回避してから、ワンピッチジャークをする。
「反応はあるよ。底から10mぐらいまでかな」
指示どおり、底から10m付近までワンピッチジャークをしたら再びジグを着底させる。
ジギングの基本動作を何度か繰り返したE2F取材班は、黙って顔を見合わせた。
「ヤバイかも……」ヨッシーがつぶやいた。
金属の塊を上げ下げするジギングは、意外にも潮の様子が分かりやすい。
潮を受けると抵抗が増し、重みとして伝わってくるからだ。
「スカスカじゃない……?」
ワンピッチジャークを繰り広げながら、再びヨッシーがつぶやく。
潮の流れが感じられないのである。
神出鬼没で気まぐれな青物に勝負を挑むのは、もともとが不利だ。
そこに水温低下と潮の流れのなさが加わって、ますます不利である。
しかし、しあき丸に乗り込んだ戦士たちは、だれ一人として諦めてはいなかった。
ヒラメラッシュで盛り上がる中青物が口を使ってくれない !?
開始から35分。
ヨッシーが「さわった!」と小さく叫んだ。
ジグに魚がじゃれつくと、わずかな変化が生じる。ヨッシーはそれを感じたのだ。
その8分後、「食った!」と声を上げ、にんまりと笑いながらジギングロッドを誇らしげに曲げているのは、だれあろう、E2F取材班のイチロウこと鹿島一郎さんだった。
「なんだなんだ!?」船中が色めき立つ。
みんながイチロウのヤリトリに注目している。
そして、みんなが無事のネットインを祈っている。
これはルアー青物船の素晴らしき美点である。
チャンスが多い釣りではないが、だれかにそのチャンスが訪れたときには全力で応援したくなるのだ。
不思議なもので、悔しさは微み塵じんもない。
逆に、「自分にもチャンスがやってくるかもしれない」と希望が持てる。
ワンピッチジャークに今まで以上に力を込めつつ、イチロウのヤリトリに注目する。
しあき船長が差し出したネットに収まったのは、3.1kgの見事なヒラメだった。
「着底から1mは早巻きして、大きめのワンピッチジャークをしてたんです。2回目のジャークでロッドをリフトさせたときにズドン!いやあ、気持ちいいッスね!」
満面の笑みを浮かべるイチロウなのである。
イチロウの言う「ズドン」は、ルアー青物の魅力そのものである。
魚がジグに食らいついた瞬間の、根掛かりかと思うようなズドンという重おもしい手応えは、PEラインを通じて生命の力強さを感じさせてくれる。
物ならそこからさらに猛烈に走ってスリリングだし、ヒラメや根魚もズッシリとした抵抗感が楽しい。
ライン1本にジグを付けるだけ、という極めてシンプルなジギングは、魚の引きをダイレクトに伝えてくれる釣りだ。
「青くないな」「茶色だね」「平べったいし」
口さがない仲間たちがからかいながらも、船中の全員がホッとしていた。
とりあえず魚の顔が見られたのである。
チャンスはわれにあり……!
まさにイチロウに続けとばかりに、左ミヨシと左胴の間でヒラメが上がった。
「あ~、よかった」とひと息ついたしあき船長だったが、「青物がねぇ」と緊張を解かない。
「反応はあるんスよ。でも、ジグを嫌ってるみたいで、ジグを落とすとパアッと散っちゃうんスよね……」
ポイントを変える。ルアー青物は釣り人の戦いであり、船長の戦いでもある。
14時15分、船を止めた。
「水深は15~25m。浅場です。ここは最近、船長が大物をバラしたポイントですよ……」
しあき船長のアナウンスが、釣り人のモチベーションを沸き立たせる。
その8分後、「んっ!」と静かで力強い声を上げたのは、ヨッシーだった。
浅場に移動していい雰囲気 スローなジャークでズドン
しあき船長は、釣り人の様子を見ながら積極的に、そして優しく声をかける。
中でも「色いろやってみてくださいね」というアナウンスは印象的だ。
「釣れないときに、同じことをやり続けてるだけじゃ釣れないですからね。ジグを替えたり、ジャークのやり方を変えたり、色んなことにトライしてみてください」
工夫こそが、ルアー青物のだいご味だとしあき船長は言う。
「エサ釣りの人は、エサさえ付いてれば釣れるだろう、と思ってる人が多いんスよ。エサなら放っておいても魚は食うだろうって思ってるんでしょうね。でもルアーは、本来なら魚が食わない金属をどうにか魅力的に見せて、食いつかせないといけない。だから色んな工夫が必要なんスよ。そしてそういう工夫って、実はエサ釣りでもすごく大事。これはオレの個人的な意見だけど、ルアー釣りができる人はエサ釣りもうまい。それは、いつも工夫するという姿勢が身に付いてるから。だから状況に合わせて臨機応変に対応できるんスよね。その日ごとの変化を感じて、その日に合った釣り方を見つける。ルアーでもエサでも、そういう釣りを楽しんでほしいんス」
「……んっ!」と声を上げたヨッシーは、まさにしあき船長が言ったとおりに、様ざまな工夫を凝らしていた。
スリリングなヤリトリの末に上がってきたのは、丸まるとしたサンパク。ブリの中でもイナダ以上ワラサ以下のサイズを指す、外房の呼び方である。
「早めのワンピッチジャークでアピールしてから、フッとスピードを落として食わせの間を作ってたんだ。食ってこないから、落とし直してゆっくりめにトーン、トーンとワンピッチジャークをしていたら、5シャクリ目にズドンときたね。使ったジグは、ジャッカルバンブルズジグセミロングの120g。カラーはグローエッジマグマウェーブホロ。グロー入りを選んだのは、潮に若干緑がかった濁りが入っていたからなんだ」
ヨッシーは、青物との戦いに勝ったのである。
それはたゆまぬ工夫の賜物だった。
その後、深場にポイントを移動し、ヨッシーはカサゴを追加。お客さんがSLJ(スーパーライトジギング)で2.2kgのヒレナガカンパチを釣ったところでタイムアップとなった。
「シブい中でも魚に口を使わせられたのは、ジグの性能があってこそかな、と思う。そこにシャクリ方がパチッと合わさったんだろうね。今日の正解にたどり着けたのは、たまたま(笑)。タイミングがよかったんだと思うよ」
もちろん、それだけで勝者にはなれない。自分なりの戦略を立て、「今日はこの釣りでいく」と絞り込み、状況に合わせて臨機応変な工夫を繰り出す……。
17時過ぎに港に戻ると、すっかり暗くなっていた。
キッチリと結果を出したヨッシーは、お土産にいただいたダイコンをぶら下げて、颯爽と大原港を去って行った。
カッコいい……。
明日の自分はああでありたい……。
だれもがそう夢見て、また船に乗る。
ルアー青物の魔力だ。
![釣行の写真]()
▲底付近でカサゴが食ってきた
出典:
![釣行の写真]()
▲100gジグで2.2kgのヒレナガカンパチを釣り上げて笑顔が弾けた
出典:
ヨッシーのメモリアルショット
東京湾のキャスティングのサワラゲームやビッグベイトのシーバス釣りをボートキャプテンとして連日のようにガイドしているヨッシー。
忙しいときでも合間に食べられるゆでたまごがマイブームとか。
腹持ちがいいので空腹を満たすのに適しているし、タンパク質なども摂取でき栄養もある。
つまり、釣りでのエネルギーチャージにピッタリなのだ。
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隔週刊つり情報(2024年1月1号)※無断複製・転載禁止