今から約4億年前、魚は陸に上がった。
1種類だけが?いやいや、そんなはずはないだろう。
色いろな魚が、それぞれの理由で、色いろな場所から陸に上がったはずだ。
その中には当然、タチウオの祖先もいただろう(以下、科学的根拠のない強引な暴論です)。
鋭いキバとよく見える目、しなやかに動く体、そしてどう猛で気まぐれな性格だったタチウオの祖先。
陸に上がり、やがて哺乳類になった。
鋭いキバ、よく見える目、しなやかな体、どう猛で気まぐれな性格をそのまま受け継いだ哺乳類。
これはもう、どう考えても猫である。
そう、タチウオは猫の祖先。
海の中の猫なのである。
・・・としか思えないほど、タチウオと猫には共通点が多い。
タチウオも猫も、本当に気まぐれなのだ。
さんざんタチウオを釣っているヨッシーでさえ、振り回されることはしょっちゅう。
ネコジャラシで遊んでいたかと思ったら、プイといなくなってしまう猫と同じだ。
だから、タチウオはいくら釣っても飽きることがない。
「ドスンとリールを止めるパワフルな引き。そして食べてもおいしいこと。タチウオはとても魅力的なターゲットだ。でも一番惹かれるのは、猫みたいに気まぐれなところかな。一度の乗船の間でも、コロコロとパターンが変わる。それを探り出すのが最高に楽しい」
狙いどおりにタチウオを食わせることができれば、最高に楽しい。
でもそれが次回の釣行でうまくいくとは限らない。
それどころか、次の投入ではもう様子が変わっていることさえある。
目まぐるしいタチウオの変化は、まさに猫の瞳のよう。
6月25日、東京湾奥金沢八景・太田屋の第七太田丸に乗り込んだヨッシーは、気まぐれなタチウオをうまく食わせることができるだろうか・・・?
当日のルアータチウオ船は満船の大盛況。
出典:
出船前、初めての方にレクチャーする佐野一也船長。
出典:
考える時間を与えないジグのアクション
ここのところ、東京湾のタチウオは周年を通してグッドサイズが期待できる好ターゲットになっている。
だが、そこはやはり猫的な気まぐれ魚である。
ジグが釣れるときもあれば、テンビンでのエサ釣りに反応するとき、テンヤに食ってくるときなど、その時どきでどれが正解かがなかなか読めない。
夏タチ本番を迎えつつあるこの時期は、どうやら動きに反応がいいようで、ジグ好調との事前情報を得ていた。
「状況を調べてる感じでは、ほぼジグだと思う。それでも一応、ね」と、テンヤの準備も怠らないヨッシー。
気まぐれなタチウオを相手に、念には念を押している。
午前7時15分ごろ、船が岸を離れた。
ポイントに着くまでの間、佐野一也船長がこと細かく注意事項をアナウンスしてくれる。
金曜日、平日にもかかわらず16名で満船の賑わいを見せる船上にはルアータチウオが初めて、という方もいたが、これなら安心だ。
30分ほど走って第二海堡周りのポイントに着き、釣りが始まってからも、佐野船長のていねいなアナウンスが続く。
タナの取り方、誘い方、取り込みの注意事項まで、聞いているだけでも安心感があって、モチベーションが上がる。
「この時期のタチウオは産卵後でまだ体力的には完全に回復しきっていないから、そんなに食い気は立っていないと思う。だからテンビン+エサだとなかなか難しいんだ。その点ジグなら、『ちょっとつまんでみようかな』とやってきたタチウオを、高い確率でフッキングできるから有利。そして何かの拍子に食い気スイッチが入れば、ますますリアクションで食ってくるよ。テンヤもエサ釣りに似ていて、基本的には止めて待つ釣り。その分、タチウオにも『ん?』と考えるだけの時間的な猶予ができてしまう。その分、食いが浅いんだ」ジグを選びながら、ヨッシーが言う。
「実は数日前にテンヤタチウオをやってみたんだけど、コンッと触るぐらいで、口を開けていない感じだったんだ。今日もジグだと思うんだけどね」
水深は37m。
船長の指示ダナは上から20m前後。
釣りが始まって10分もすると、船中はドタバタと跳ね回るタチウオで賑わい出した。
ただし、それほどサイズは大きくない。
そんな中、ジャッカルのタチウオ定番人気ジグ、アンチョビメタルTYPE-Iの新色、ベイパープル/ピンクグローエッジを使っていたヨッシーに、ズドンというアタリが襲いかかってきた。良型だ!
新色のベイパープル/ピンクグロ ーエッジでタチウオを連発。
出典:
ジャッカルのアンチョビメタル
ヨッシーが愛用するジャッカルのアンチョビメタルは4タイプがある。
それぞれの特徴は下記のとおり。
TYPE-ZERO:フォール時は適度にヒラ打ちしながら沈み、ジャークでは強い波動でタチウオを誘う
TYPE-Ⅰ:フォール時は素早く沈み、ジャークではジグが跳ねにくく直線的な動きになる
TYPE-Ⅱ:ジャークではワイドな動きで誘い、フォール時はスライドでアピールする
TYPE-Ⅲ:TYPE-Ⅰよりもジグが跳ねにくくより直線的に泳ぐ。
フォール時はイレギュラーに沈む。
狙いどおりの組み立てにほくそ笑むヨッシー
「ふっふっふ」と不敵な笑いを浮かべるヨッシー。
実はベイパープル/ピンクグローエッジという今年の新色は、ヨッシーが「迷ったときはまずこのカラーから」と、自らセレクトしたものなのだ。
これは、多少鼻が高くなっても仕方あるまい・・・。
「シルエットが小さく見えるように配慮したカラーリングなんだ。マッチ・ザ・ベイトがハマったんだと思う。そしてTYPE-Iはフォールスピードが速くて、素早くタナをサーチできるジグ。相乗効果でうまくいったね!」と満面の笑みだ。
その後、15分ほどの間にタチウオを2連発したヨッシーだが、いつの間にかジグが替わっていた。
ほどよくヒラを打ちながらフォールする、TYPE-ZEROへのスイッチだ。
「TYPE-Iで少し続けてみたけど、どうもジグを見切られているような気がしたんだ。だからもう少し暴れるジグにして、食わせる作戦に変更した。これがうまくいったね。ふっふっふ」
狙いどおりの釣りを着実に進行しているヨッシー。
またしても不敵な笑みである。
そこからはもう、東京湾第二海堡タチウオ乱れ咲き、といった様相で、入れ掛かりに近い状態になった。
ライターのタカハシゴーなどは、「こうなりゃジグは何でもいんじゃね?」と、ヨッシーのマネをしてTYPEZEROのまま。
だがヨッシーはその先をいく。
45分ほど経過したところで、今度はTYPE-Ⅱにスイッチだ。
「ちょっと様子見しようかな、と。このジグもアクションが大きいのに加えて、スライドフォールするんだ。どうかな・・・」と、言っているまさにそのとき、ヨッシーの左隣の加藤哲治さんがTYPE-Ⅲで良型タチウオをキャッチした!
プロであるヨッシーが隣にいることに忖度して、アンチョビメタルを使っていた・・・わけではないらしい。
純粋に「釣れるから」という理由だった。
TYPE-Ⅲをガッツリ食ってきた良型タチウオを見て、ヨッシーは「うん、やっぱり。ふっふっふ・・・」と頷いている。
「お隣さんがTYPE-Ⅲを使っているのを見て、『デカイのが釣れるんじゃないかな』と思ってたんだ。ま、釣ったのはおれじゃないけど、読みどおりだなふっふっふ・・・」
TYPE-Ⅲはスリムでシンプルな形状で、ハデなアクションをしない。
「動きはおとなしいからタチウオからの反応は得にくいけど、食ってくればデカイはず」というヨッシーの読みは、確かに当たっていた。
ジグチェンジを面倒がらないマメさが釣果につながる
加藤さんはブラックバス釣りをしていたが、「あんまり釣れないから面白くなくなっちゃって」と、今年に入ってからタチウオ釣りを始めたそうだ。
「ズギューンという圧倒的な引きが最高に面白いッス!ゲーム性も高くて、ハマりますね。ジャッカルのタチウオロッド、アンチョビドライバーエクストロ、買っちゃおうかな~」
忖度の嵐が吹き荒れる。
ヨッシーは、「そうか、バス釣りをしてる人なのか」と、納得している様子だ。
「道理で上手だと思った。おれがやろうと思ってることを先回りされちゃうんだよね(笑)。バサーは釣りのアイデアや引き出しをたくさん持ってるんだよね。そして状況を見ながらのジグチェンジも早い。ジグの大きな動きに反応して食ってくるうちはいいけど、やがて見切られてしまうようになる。そこでTYPE-Ⅲのように動きの少ないジグに替えて、食わせる。展開を読み切ったパーフェクトな1本だね!釣ったのはおれじゃないけど(笑)」
釣ったのは確かにヨッシーじゃない。
でも、加藤さんの釣果はヨッシーの釣果(か?)。
だれが、どんなジグで釣っているのかを見極めることは、乗合船で釣果を上げるために重要だ。
実際、タカハシゴーは(彼としては珍しく)機敏にジグチェンジ。
TYPE-Ⅲにして加藤さんと同様に良型を釣った。
加藤さんの釣果はタカハシゴーの釣果になったのだった。
だが、ヨッシーはTYPE-Ⅲを選ばなかった。
左舷ミヨシからタカハシゴー、ヨッシー、加藤さんという並びだったのだが、「両隣の人たちがTYPE-Ⅲで釣ってくれていたから、おれは自由に色んなことが試せる」というわけである。
TYPE-Ⅰ、TYPE-Ⅱ、そしてTYPE-Ⅱの逆付けと、色いろと試してはタチウオの反応を探っているヨッシー。
ジグチェンジをまったく面倒がらないアグレッシブさ、この男はやはりタチウオにガチだ・・・。
プロトのタチウオテンヤロッドがブチ曲がる。
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ヘッドが交換できるプロトのタチウオテンヤ。
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[ヘッドの交換方法]①ストッパーを外す/②プライヤーでラインアイをはさむ/③ヘッドをつかんで引っ張ると外れる/④別色のヘッドを押し込み、ストッパーを押して完成。
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プロトのテンヤ40号でタチウオを立て続けに2本キャッチ。
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良型を釣り上げる加藤さん。
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当日のルアータチウオ船で見付けた「東京湾のタチウオで〇〇しがちなシーン」
(左)色やタイプなどをローテーションした結果がこれ!(左下)タチウオの歯はカミソリのように鋭いので、触らな いように気を付けましょう。(右)デカいと思ったら尻尾がなくて思いのほか短かった敬遠はありませんか?
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(上)一つのルアーで2尾のサバをキャッチ。(左下)タチウオが尻尾をかむとこうなる。(右)指幅6本級をゲット!
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(上)ドラゴンと呼ばれるだけについ。(下)カラーや重さ、タイプ別にそろえていくとルアーが増えていく。
出典:
どう猛な顔をしているのに意外とビビリなタチウオ
次第にアタリが遠のいた。
午前11時になると佐野船長は第二海堡を離れる決断を下し、走水沖へと向かった。
水深65m付近のポイントでヨッシーが手にしたのは、テンヤだった。
そして1投目からタチウオをキャッチ。
「底から探っていったらアタリがあったから、その10m前後を誘ったんだ。食ったのは海面から50mだったよ」
30分後に再びテンヤで1本を追加したヨッシー。
「数日前はテンヤにまったく食ってこなかったことを思えば、状況はだいぶ変わってきてるね。この後、ポイントによってはテンヤがジグを逆転するかもしれないな。その兆しが見えたよ」
納得できる成果が得られたヨッシーは、再びジグのタックルに持ち替え、次つぎにタチウオを抜き上げていく。
終わってみれば、26本。
不器用のカタマリとして有名なタカハシゴーも21本を釣り、太田屋の釣果情報には60~117cmのタチウオが10~41本と掲載された。
この日、隣で見ている限りではヨッシーの戦略はほぼ当たったと言えるだろう。
刻々と変化するタチウオの食いに合わせてTYPE-ZERO、Ⅰ、Ⅱを駆使し、そのつどのパターンを見つけ出した。
「加藤さんも言ってたけど、このゲーム性がたまらないよね。ホント、ネコジャラシでどうやって猫の気を惹くかと同じ。だからジャッカルのアンチョビメタルのようにタイプ別でハッキリとキャラクターが分かれてるジグは、作戦を立てられるのが面白いよね。今日のタチウオは割と素直だったから、読みどおりの釣りができたのが気持ちいいな。ひとつヒントを言っとくと、タチウオってああ見えて意外と臆病なんだ。だからすぐにビックリして逃げてしまうし、常にビビってるからミスバイトも多い。ジグを動かすときは、そのあたりを意識しておくといいよ」
ビビりながらもネコジャラシに寄ってくる猫の姿が思い浮かぶ。
タチウオと猫、やはり共通点が多すぎる。
血がつながっているとしか思えない・・・。
ルアーローテーションがハマったヨッシー。
出典:
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