良型主体のスタート　東京湾のマゴチ本格始動

ここ数年、好模様が続いている東京湾のマゴチ。

今シーズンも一部の船宿は冬の間も出船し、良型交じりで盛り上がりを見せていた。

例年どおり3月から乗合船を始めた各船宿も出足は順調。

そのうちの一軒である東京湾奥横浜新子安・だてまき丸は2日からマゴチ乗合をスタート。

初日は富岡沖の水深15～20m前後をメインに狙い、43～62cmのマゴチをトップ3本の釣れ具合だった。　

エビエサを使う東京湾のマゴチ釣りの一番のだいご味はアタリがきてから合わせるまでの期待と興奮、そしてスッポ抜けるかもしれないという不安も入り交じったドキドキ感だろう。

今ならそれを存分に味わえるはずだ。

マゴチ釣りであると便利なアイテムが二つある。

一つ目はプライヤー（ペンチ）。

マゴチの口は硬くなかなかハリが外せないことがあるからで、100均の物でもよいので持参を強くおすすめする。

二つ目はフィッシュグリップ（魚つかみ）。

マゴチはヌメリがあってつかみづらくエラにに鋭いトゲがあるから、絞めるときやバケツからクーラーへ移すときにもあったほうがいい。

アタリを待つ間は息を詰めるような緊張感、合わせが決まるとガツンと衝撃がきて、その後はガクガク、ギュンギュンの強い引きにハラハラドキドキ。

照りゴチと呼ばれることもあって夏のイメージが強い東京湾のマゴチ釣りだったが、今では早春から晩秋までのロングランの釣り物として定着している。

ここではこの釣りを大得意とし、今年も3月からマゴチ乗合を開始した東京湾奥横浜新子安のだてまき丸の東京湾マゴチ釣りを解説する。

「まだ寒いのにマゴチ？って思う人もいるようだけど、マゴチはこの時期でも食いますよ。12月に72cmを頭に60cmオーバーだけで6本釣ったこともありました」と話すのは、だてまき丸の宮地至人船長。

開幕当初は事前情報がないためポイント探しの側面もあるが、逆にポイントを休ませてもいたわけで、いきなりドカンと幕開け状態の大釣りなんてこともあるようだ。

だてまき丸が主に狙うのは根岸湾内、富岡沖、小柴沖といった所。

それぞれたくさんあるポイントの中から船長の経験やデータに基づいてピンポイントで狙っていく。

大貫沖など千葉県側にもマゴチ釣り場はあるが「最近は大きいのが釣れないからウチは滅多に行かないね」と船長。

図のとおりマゴチ釣りの道具立てはとてもシンプル。

竿とリールのほか、中オモリにハリスとハリを持参すれば釣りは成立する（中オモリと仕掛けは受付で購入可）。

中オモリは15号だから竿はライトゲーム用や硬調のシロギス用でも事足りるが、できれば専用竿を用意したい。

釣果だけでなく釣趣アップにもつながるからだ。

全長2～2.4m前後で小さなアタリをとらえることができ、かつ食い込みまで違和感を与えない繊細な穂先と、マゴチの硬い口にハリをガッチリと掛けるためのしっかりとした胴の強さを持つ竿がおすすめ。

リールは小型の両軸で、道糸はPE1.5～2号を100mも巻いてあれば十分だ。

中オモリは三日月型がこの釣りの代名詞でもあったが、最近はシャクリマダイやアオリイカで使われる棒状のオモリを使う方もいて、どちらでもとくに問題はない。

ハリスはフロロカーボン5号が標準で長さは1.5m。

タナ取りがシビアな釣りなのでしっかりと測っておくこと。

ハリは春先から夏場まではエサがサイマキ（小型のクルマエビ）なのでマゴチバリかスズキバリの17～18号を使う。

ちなみにエビエサのときによく使われるハリのチモトの糸オモリだが、だてまき丸では使用しない。

「あれは昔アカエビをエサにしていたときの名残みたいなもんですよ。アカエビが浮かないように使っていたんだけど、サイマキは普段砂に潜ったりしているエビでしょ。黙っていても底にいるから必要ないよ」とのことで、真偽のほどはだてまき丸の釣果が物語っている。

マゴチ釣りの勘所となるのは三つ。

「エサ付け」「タナ取り」「合わせどき」。

まずはエサ付けだが「エビはエサ付けで決まる」と船長が言うくらい大切なので上の手順を参照してしっかりマスターしたい。

①サイマキのケンは目の上あたりで折る。

②折ったケンの所にハリの軸を持っていくとハリ先がサイマキの口付近にくるので、ハリ先がスッと違和感なく刺さる所（口）を探る。

③ハリを押し込んでいく。このときハリ先を前（頭のほう）へ向けるとサイマキの急所を外して刺すことができる。

④ハリ先はケンの付け根付近にわずかに出し（カエシまで出たら出し過ぎ）

⑤エサ付けは完了。

しっかりとエサ付けができるとサイマキは魚に食われるまでいつまでも生きている。

自信がない方は、船長がていねいに分かりやすく教えてくれるので遠慮なく聞こう。

二つ目のタナ取りは底から1mが基本。

中オモリが着底したら糸フケを取り、道糸のマーカーできっちり1m巻く。

エサのサイマキが海底から時どきフワッと浮いて泳ぐ位置をイメージしてタナをしっかりキープするのが重要。

アタリを待つ姿勢で竿先が下がったり、ロッドキーパーに竿掛けたりするとタナが20～30cm変わってしまうことがあるので注意が必要だ。

なお潮の速い遅いで微調整は？の質問には、「それをやると迷いが生じるから、きっちり1mを守ること」と船長。

それよりもまめにタナを取り直すことが誘いにもなるので重要とのことだ。

三つ目の合わせどきについて。

「毎回アタリの出方は違うからね。合わせどきもその時どきで違うんだけど、そこがこの釣りの面白さだよね」と船長が言うように、今か今かとドキドキ緊張する場面だ。

最初のアタリはコツンとくる。

その後いきなりドーンと引き込むこともあるがそれはまれで、コツコツと竿先をノックするようなアタリが続くことが多い。

コツコツと引き込まれた分だけ竿先を送り、道糸は軽く張った状態で食い込みを待つ。

アタリが途絶えてしまったと感じたときは、そっと竿を立てて聞き上げてみる。

エサを放していなければまたコツコツとアタリが出始める。

胴に乗るような重みや、コツコツではなくゴンゴンゴンと断続的な引き込みがあったら合わせどきだ。

マゴチは勝手に飲み込んでくれるようなことはまれ。

どこかで勝負（合わせ）しないとエサを放してしまう。

合わせは、マゴチの硬い口にハリをしっかり貫通させるべく、大きく竿を持ち上げること。

「水深とか竿にもよるけど浅い所であまりビシッと合わせるとハリス切れも心配だからね。

強い合わせというよりは大きなストロークで合わせる感じだね」と船長。

合わせが決まったらマゴチの強引きを十分に楽しみ、取り込みは竿先まで中オモリを巻き、マゴチを海面に浮かせタモ取りしてもらう。

真冬を除き周年マゴチ狙いで出船する東京湾奥横浜新子安のだてまき丸。

年は3月1日がシケ休みで実質の開幕日となった2日にお邪魔した。

開幕を待ちわびた常連さんたちを中心に8名の釣り人が集まり6時半に出船。

最初に入った釣り場は根岸湾の本牧側の岸壁際。

水深16mで開始するもアタリはなく、すぐに移動の合図。

何カ所かの場所変えのあと、だてまき丸の今シーズン初物は左舷2番の北山さんで45cm級のまずまずサイズだった。

次のアタリは約30分後、左舷ミヨシの手バネの釣り師さんで、こちらも45cm級が無事タモに収まった。

この直後に右舷2番にもアタリが出てビシッと合わせも決まったかに見えたのだが、残念ながらこれは掛かりが浅かったようでバラシに終わった。

次のアタリはほぼ30分後。

今度は右舷ミヨシでアタリが出る。

なかなか食い込まないようだったが、あせらずじっくり食わせての大合わせ。

バッチリ決まって竿が大きく曲がる。

無事お隣さんにタモ取りされたのは先ほどまでとほぼ同サイズだった。

撮影を終え自席に戻ると、置き竿にしていた私の竿にもアタリがあったとのこと。

竿を手にしてゆっくり竿を聞き上げるとコンコンとアタリが出る。

しめしめまだエサを放していないようだ。

最初のアタリを取っていないので合わせ所がつかめず迷いに迷ったが、意を決して合わせた竿にガツンとハリ掛かりが伝わり、43cmを取り込んだ。

この間に右舷ミヨシ2番でもリベンジに成功していたようである。

9時半を回りやや風が落ちてきたのを見てか、船長は根岸湾を出て次なる釣り場を富岡沖に定める。

今度は竿を手で持ちアタリを待っていた自分にもコツンのあと、コツコツとマゴチらしいアタリ。

ここから合わせるまでの「放すなよ。食い込め！」のハラハラドキドキ感がたまらなくしびれる。

ようやく手元に近いところにゴンゴンと重量感のある引き込みが伝わったところで、バシッと合わせるとガツンとハリ掛かり。

ガクガクグングンとマゴチ特有の荒あらしい引き込みを竿でいなし、お隣さんのタモに収まったのは先ほどよりも少しサイズアップの46cmだった。

船長がラストに選んだ釣り場は朝も狙った根岸湾内。

しかし今度は湾の奥も奥のポイント。

ここまで入り込むと風もほとんどなく、海面も湖のように静か。

しばらくは海面同様釣況も静かなものだったのだが、最後の最後にドラマが待っていた。

主役はこれまでアタリに見放されていた常連の樋口さん。

船長からラスト30分コールがかかり、潮回りの「上げて～」の声と同時にアタリをとらえたようだ。

自分の仕掛けの回収後に駆け付けると「デカイよ！」の声が上がり、タモ取りされるところ。

そのあと取り込まれたのは62cmのマゴチ。

さすがにこのサイズになると迫力満点だ。

実は同じタイミングで仕掛けを巻き上げ始めた北山さんにもアタったらしく、こちらも55cmの良型が釣れ上がっていた。

これは大マゴチのマンション発見かと色めき立った流し変え。

右舷でアタリが連発するも両方ともスッポ抜け。

「何やってんだよ～（笑）」と常連さん同士のかけ合いがあってこの日の沖揚がりとなった。　

釣果は43～62cmのマゴチが一人0～3本。

8人中オデコは一人だけと平均して釣れ、サイズも40cm以下は交じらず良型中心だった。

「開幕当初はマゴチの着き場探し的なところもあって数はまとまらないこともありますが、当たれば一発ドカンの大型もいますからね」と船長。

今期も熱いシーズンになることは間違いないようだ。

東京湾奥横浜新子安　だてまき丸

080・6577・3742

▼備考＝6時半出船。エサの手配があるので可能なら予約を。仕掛け、オモリの販売あり