ヨッシーこと吉岡進がエサ、ルアー釣りを問わず、様ざまな釣り物にガチでチャレンジしていく連載「ツリガチ!」。
最終回は東京湾奥のバチコンアジング。
バチコンとはバーチカルコンタクトの略称で、軽量のジグヘッドに3インチ前後のソフトルアーを付けた胴つき1本バリ仕掛けを船下に投入してアジを狙う釣り方。
誘いがハマればエサ釣りと同じくらい釣れるときもあるし、ハマらなければアジがいるのにまったく釣れないこともある。
その奥深くて難しいところが面白くて近年、人気急上昇中の釣り。
東京湾ではライトアジ船に便乗して楽しむことができる2月下旬に釣行したのは東京湾奥金沢八景・太田屋のライトアジ乗合。
池田船長が向かった釣り場は港至近の八景沖水深25~30m前後。
ポイントに着するとエサ釣りの方が25~30cm前後のアジをポツポツと上げる。
ところがバチコンで狙うヨッシーにはアタリがない。
その後もソフトルアーを替えたり、誘い方を色いろ試してみるものの釣れたのはメバルのみ。
結局午前船はまさかの不発となり、午後船へ乗船するヨッシーの結果はいかに。
プロフィール
よしおか すすむ
1982年生まれ。
ヨッシーの愛称で親しまれている。
一つテンヤマダイ、ライト系オフショアルアーを得意とする。
ジャッカルソルトプロスタッフ、シーガーインストラクター。
バチコンアジングタックル
バチコンアジングの釣り方イメージ
#船宿インフォメーション
東京湾奥金沢八景
太田屋
045・782・4657
備考=予約乗合、午前船7時15分、午後船12時15分出船。
別船ルアータチウオ、マダイへも出船。
![釣行の写真]()
▲エサ釣りでは体高のあるアジがたくさん釣れた
出典:
「アジは怖い」
これはツリガチ取材班の本音である。
「まんじゅう怖い」的な、ウラの思惑がある話では、断じてない。
本当に怖いのだ。
東京湾の船釣りにおいてアジといえば、風のごとく、そして水のごとく、そこら辺にいて当たり前、と思われガチである。
実際、ライトアジ(以下LTアジ)は周年ほぼ安定して釣れることから、東京湾の定番釣り物になっている。
おいしいアジがよく釣れるとあって、船釣り入門としても人気だ。
しかし、そのアジを船からソフトルアーで釣ろうと思った瞬間に、話はかなり変わってくる。
専用の胴つき仕掛けにソフトルアーを装着し、垂直方向の釣りでアジに迫ることから「バーチカルコンタクト」と名付けられた、いわゆるバチコンである。
状況を読みながらソフトルアーやリグ(仕掛け)、そしてアクションをあれこれトライできるのは、ルアーフィッシングならではのだいご味だ。
このバチコン、でかいアジが釣れると評判だ。
東京湾ではLTアジ船への同船が基本だが、エサよりワンサイズでかい40cm級のギガアジが釣れることもある。
その実力を目の当たりにしたエサ釣り師が、「えっ!?ホントにソフトルアーでそんなにでかいアジが釣れるんだね!今度やってみようかな」と驚きの声を上げる場面も少なくない。
また、「ソフトルアー=でかアジ=数はエサ釣りの勝ち」と思われガチだが、ときには数釣りでエサ釣りを凌駕することもあるという。
「基本的に数釣りという点ではコマセが有利なのは確か。でも、ソフトルアーでしか釣れない、ということも経験してるよ」と、ジャッカルプロスタッフのヨッシーこと吉岡進さん。
ヨッシーが言うなら間違いない!そして今日はきっとそんな日だ!ヨッシャーヨッシー、行くぞ!と、鼻息荒く東京湾奥金沢八景の太田屋に乗り込んだヨッシー&ツリガチ取材班。
午前7時15分の出船段階では、元気いっぱいだった……。
![釣行の写真]()
▲当日はアジのタナが目まぐるしく変わり、うまく対応できるとこのとおり
出典:
面白さ10倍、釣果10分の1 東京湾のバチコンアジング
船着き場を離れて20分ほど。
金沢八景沖、水深25m前後の根周りで釣りが始まった。
ヨッシーは、東京湾バチコンアジングの定番ソフトルアー、ジャッカル・ペケリング3インチのイソメグロークラッシュからスタートし、「まずは1尾」を手堅く狙う。
だが、この日の東京湾はひどく手厳しかった。
「アジは怖い」を身上とし、決して手も気も抜くことがないツリガチ取材班だが、手痛い洗礼を浴びせられまくるのである。
ヨッシーは、首をかしげた。
イチロウこと鹿島一郎さんは、天を仰いだ。
ライターのタカハシゴーは、表情を強ばらせた。
ソフトルアーをどう操作しても、アジからの反応が得られないのである。
バチコンは、決して難しい釣りではない。
軽くキャストし、着底したらゼロテンでステイ。
数秒待ってアタリがなければ、チョンチョンと竿先を揺するようにして誘いをかける。
アタリは「これがあの元気いっぱいのアジ!?」と思うほど、微妙なことが多い。
モゾッという竿先のモタレや、コンッという小さなものがほとんど。
ほんのわずかな違和感を逃さず、必ずビシッと合わせを入れる。
グッと竿先に重みが乗る。
軟らかめのロッド、PE0.4~0.8号という細い道糸、シンプルな仕掛け、10~15号の軽いオモリ、そして元気で口切れしやすいアジ。
これらの要素によって、ヤリトリはかなりスリリングだ。
ドラグも緩めに設定するので、ジジッと道糸を引き出されることも珍しくない。
そう、「どうせアジだし」といった甘えや緩みは一切許されないのだ。1尾1尾に真摯に向き合い、慎重に、そして大切にヤリトリする。
ドキドキしながら1尾のアジをバチコンで釣り上げたとき、「アジってこんなに素晴らしい魚だったのか」と改めて見直すことになるだろう。
このあたりは、東京湾で主流のLTアジとはだいぶ雰囲気が違う。
コマセでテンションが上がったアジは、ほとんどオートマチックにハリ掛かりしてくれる。
もちろんLTアジでもタナの合わせ方や誘い方、手返しなど十分すぎるほど奥深く、ベテランとビギナーでは釣果に大きな差がつくものだ。
しかし基本的に数十尾は釣れて当たり前、束超えでクーラー満タンも決して珍しくない。
一方のバチコンは、ソフトルアー選びやアクション、積極的な合わせ、スリリングなヤリトリによって、1尾の価値が急騰する。
感覚的ではあるが、バチコンでの1尾はLTアジの10尾に匹敵するほどの面白さがある。
面白さ10倍。
ゲーム性が高い釣りだからこそ、東京湾でも浸透しつつあるのだ。
「だけどね」とヨッシー。
「完全にコマセに着いている東京湾のアジの場合、釣果はLTアジ10に対してバチコン1、とも言われているんだ。面白さは10倍だから、1尾の満足度は高いんだけど、その1尾がなかなか、ね」
![釣行の写真]()
▲ライトアジ初挑戦の板倉さんは開始早々にゲット
出典:
ソフトルアーをどう操作しても、アジからの反応が得られない !?
シブい。
LTアジでもなかなか釣れない。
今回、ツリガチ取材班のトモキこと板倉友基さんは、「絶対にアジを持って帰りたい!」と、一人LTアジで挑んでいた。
謀反である。
トモキはクロダイのヘチ釣りの名手であり、船釣り全般でその技量を発揮する。
彼の釣れっぷりは、よきベンチマークだ。
だが、そのトモキのLTアジでさえ、……ポツ……、といった具合。超がつくほどのスローペースでしか釣れていない。
ほかのお客さんも同様だ。
そうなると、「面白さ10倍、釣果10分の1」のバチコンにはかなり厳しい。
コマセへの反応自体が薄く、さらにソフトルアーにまったくリアクションしてこない状況では、正解の探しようがないのだ。
釣り開始から40分ほど経過した午前8時10分、ついにヨッシーがビシッと合わせた!
さすがはプロ、さすがはヨッシー。
これだけ厳しい状況でもしっかりと釣果を出す男。
「よっ、信頼と安心と実績の吉岡進。カッコいいよ!」と、盛り上がるツリガチ取材班。
竿がギュギュンと引き絞られる。
キタキタ、よーし、ここから反撃だ!
近ちゃんこと近田編集部員の、カメラを握る手にも力が入る。
そうして上がってきたのは、春を告げる魚、メバルであった。
東京湾バチコンの定番ゲストだ。
「とりあえず魚の顔を見られてよかったよ」と、ヨッシーはガチの笑顔を浮かべる。
「ちょっと波があってどっちみち揺れるから、ソフトルアーはほぼ止めて、タナだけ探ってるんだ。そこにちょうどメバルがいてくれたんだと思う。ありがたいねえ」としみじみ語った。
ライター・タカハシゴーのメモは、ここで途絶えている。
午前11時半、午前船の沖揚がりを迎え、ツリガチ取材班のバチコン釣果は、まさかのゼロに終わった。
LTアジのトップが11尾だったから、せめて1尾は釣りたかったところだ。
「途中、おれとゴーさんにアジらしきモニョッとしたアタリはあったんだけどね」とヨッシー。
フッキングするほどは、ソフトルアーを吸い込んでくれなかった。
港に戻ると、ツリガチ取材班は顔を見合わせた。
全員の目に力がこもっている。
「やるか」
「やろうぜ」
だれひとりとして、これで終わるつもりはなかった。
午後船、ゴー!
潮回りは大潮で、11時が干潮である。
午後は上げ潮で、午前中は少し吹いていた風も弱まる予報だ。
ヨッシーも「午前が不発でも、午後に大食い、なんてことも珍しくないからね」と、期待する。
太田屋は、午前・午後の通しだと乗船料が割り引かれるのもありがたい。
モチベーションの高さ。
潮回りのよさ。
ナギ。
そしてリーズナブル。
好条件がそろい、これはもうアジが釣れるとしか思えない午後船は、12時15分に船着き場を離れた。
午前とほぼ同じポイントでの釣りが始まると、LTアジで挑んでいるトモキがいきなりパタパタとアジを釣った。
キタ!
![釣行の写真]()
▲本牧沖ではエサ釣りで20cm前後のアジがよく釣れた
出典:
当日のLTアジ船で見付けた東京湾のバチコンアジングで〇〇ガチなシーン
午後船の下げ潮に高まる期待 しかしヨッシーが合わせない
午前船とはまるで違うオープニングに、期待が高まる。
釣り開始から15分、タカハシゴーがカサゴを釣る。
その5分後、イチロウにもカサゴがきた。
さらに15分後、タカハシゴーが再びカサゴを釣ると、ほぼ同時にヨッシーもカサゴをキャッチした。
「みんながカサゴを釣ってるのを見て、ソフトルアーを思いっ切り底にはわせちゃったよ」と苦笑いながらも、本日2尾目はさすがにうれしそうだ。
しかし、アジは食ってこない。
ヨッシーいわくアタリはあるが、ガチでソフトルアーを吸い込むほどの食い気はないようだ。
アジがほぼ入れ食い状態となったトモキの両脇を、ヨッシーとタカハシゴーが挟み、超接近戦を試みる。
トモキが振り出すコマセに、アジが寄っていることは間違いない。
コマセ煙幕のまっただ中にソフトルアーを漂わせるという、欲望ダイレクト釣法である。
だが、やはりモニョッというアジらしきアタリがあるものの、その頻度は極めて低く、吸い込みは極めて弱い。
常にアタリを鋭敏に察知するヨッシーでさえほとんど合わせないのだから、この日のアジはソフトルアーにはまったく興味を示していないと言っていいだろう。
本牧沖へと大きく移動したのは、午後3時のことだった。
居着きのアジを狙うポイントで、バチコンでも期待できる。
しかし、やはりヨッシーが合わせない。
アタリがないのだ。
業を煮やしたタカハシゴーが試しにサビキ仕掛けを落とすと、すぐに1尾掛かった。
続けてもう1尾。
2尾とも海面バラシに終わったが、確実にアジだ。
イチロウがアジの仕掛けにアカタンを付け、コマセを振るトモキの真隣に陣取ると、すぐにアジを1尾釣った。
サビキ仕掛けとアカタンへの反応を受け、イチロウはソフトルアーのサイズを1.5インチにまで下げたが、やはりアジは知らんぷりだ。
午後4時半、無念の釣り終了。
結局バチコンは、3人ともゼロと、大惨敗を喫してしまった。
午後船のLTアジは、トップが38尾。
バチコンで3尾は釣りたかったところだが……。
ヨッシーは、「コマセに着いてるアジが難しいのは確かだけど、ここまでアタリがないのも珍しいな……」と悔しがる。
「ソフトルアーを替え、オモリを変え、ハリスの長さを変え、アクションを変え、と、思いつくことは全部やってみたけど、まったく反応がなかった。こういう日もあるんだな……。アジはボーッとしてて、目の前に漂ってくるコマセを、ただ口を開けて取り込んでいるような感じだったんだろう。かと思えば、コマセに反応がなくてソフトルアーだけを食ってくるときもあるんだから、本当に分からない。やっぱり、アジは怖い。だからこそ、チャレンジのしがいがあるんだけどね」
![釣行の写真]()
▲オモリを底に着けてアタリを待つとカサゴがヒット
出典:
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隔週刊つり情報(2023年4月1号)※無断複製・転載禁止