初めて九十九里片貝港の二三丸へお邪魔したのは、かれこれ10年以上も前のこと。
その日の最後に教わったハナダイの味噌漬けの作り方は、今なお私の大切なレシピの一つになっている。
今回も釣魚料理をネタに船長とのトークが盛り上がり、「あんたたちいつまで話し続けるのよ?」と呆れるようなおかみさんの視線を感じて解散したのは、お客さんが帰ってからずいぶんとたったころだった。
【PROFILE】カマちゃん/釜井昌二(かまいしょうじ)
ヒラメの頭のアクアパッツァが好き。
アトリエぷらりおさかなイラストレーター。
A.T.LAB フィールドアドバイザー。
漁師と営業職、二つの経験が礎となる
乗船した釣り人全員に釣らせたい!
釣れたからにはおいしく食べてもらいたい!
そんな思いが前のめりになるくらい溢れ出ている小倉忠船長は、ここ片貝の漁師の家に生まれ、今年で62歳になる。
高校卒業と同時に自動車メーカーに入社。
「ゆくゆくは家業を継ぐから大学に行かせたつもりでしばらく好きなことをやらせてくれ!と両親にお願いして就職したんだ。機械いじりが好きだから自動車整備士志望だったけれど、高校が商業科だったこともあって、就いたのはディーラーの営業」と当時を振り返る。
漁師の父を手伝っていた叔父が体調を崩したのを機に、3年半ほどで退職。
父のもとで修業して、アカガイ漁を行う漁師となり独り立ちした。
正直なところ、貝を採っていた小倉船長の姿が想像できず、そんな過去を聞いて驚いた。
そして不漁が続いた折、釣り船の経営にも乗り出していた父からの依頼で土日だけ釣り人を受け入れたのが遊漁船を営むきっかけ。
釣り人を乗せて出船することが性に合っていると感じた小倉船長は、27年前に新船「第一二三丸」を進水。
以来、遊漁船一筋で生きてきた。
「振り返れば、ディーラーで営業だったことも功を奏したかな?そのとき学んだ接客が釣り船経営の礎になっている気がするよ」とボソリ。
頼りになるばかりでなく、優しさと思いやりのある小倉船長の船宿経営は、漁師と営業職という二つの経験によって実を結んだわけだ。
そんな小倉船長を支えるパートナーが妻の富美子さん。
現在船宿がある場所は富美子さんの実家で、酒井水産という水産物加工業を生業にしている。
船宿脇にある直売所は富美子さんのお姉さんが経営していて、九十九里名物のイワシの胡麻漬けを始め生姜煮や干物などを販売している。
直売所の店番もしつつ、朝の釣り船の受付や日中の電話番、昼の釣り船の出迎えや会計と忙しい毎日を送る富美子さん。
テキパキと、そしてにこやかに釣り人に応対する親しみやすさは、二三丸を訪れる釣り人をホッとさせる。
小倉船長夫妻の平和な日々を突然襲ったのが、2011年の東日本大震災。
片貝にも津波が押し寄せ、自宅や直売所は基礎から1m上くらいまで浸水。
釣り船はかろうじて被害を免れたものの、酒井水産は大きなダメージを受けた。
「当時大学生だった息子の同級生や大工の釣り人が手弁当で手伝いに来てくれて、思いのほか早く復旧できたんだ。店の冷凍庫や資材は全部パーになってしまったけど、フォークリフトは奇跡的に故障せず今も働いてくれているよ」と船長は当時を振り返る。
大型連発で予想を覆す好日に
震災後、少し高く築かれた護岸に停泊している第一二三丸に到着したのは早朝4時少し前。
すでにこの日の釣り人10名全員が集まっていて準備万端。
皆さんのやる気が伝わってくる朝だった。
買い付けてきた生きイワシを船長が船に積み込んだところで出船。
ポイント到着後、釣り方やエサの付け方のていねいなアナウンスがあって、竿入れ協定時間の5時半を迎えた。
2日前の釣況が今一つだったので今日はどうだろうか?と期待と不安の入り交じるスタートだったが、蓋を開けてみたらとんでもないことに。
6.2kgの特大ビラメを筆頭に4.4kg、3kg、2kgと大型交じりで一人1~5枚のオデコなし。
ほかに良型のカンパチやマハタ、マトウダイが顔を出し、またとないような好日に巡り合った。
「前回よりも多少潮が澄んだことがよかったのかな?釣れないと潮のせいにして言い訳するのが船頭だけど、今日は船頭のおかげで釣れたことにしてね」と小倉船長は笑う。
二三丸という名の由来は、「1番になっても、2番3番の気持ちを忘れずに」ということだと小倉船長は祖父から聞いたそうだ。
その姿勢は、今もしっかりと受け継がれていますよ・・・と天国のお爺さんに伝えたい。
ライトタックルだからヒラメの引きを存分に味わえる
出典:
魚がヒットすれば船長や仲乗りさんが駆け付けてすくってくれる
出典:
スタートダッシュのうれしい1枚
出典:
この髭が小倉船長のトレードマーク
出典:
エサが豊富なのか肉厚なヒラメがそろった
出典:
青物のような凄まじい引きで上がってきたのは4.4kgの大型
出典:
会心の3kg級をゲット
出典:
やったぜベイビー。キロオーバーの良型ゲット
出典:
やっときた1枚に笑顔が弾ける
出典:
激しい突っ込みで上がってきたのはカンパチ
出典:
一枚釣れるととにかくうれしい。それがヒラメという魚
出典:
仲乗りさんも2kg級。お見事
出典:
もはや片貝沖でも珍しくなくなったマハタ
出典:
【船宿information】二三丸(九十九里片貝港)
千葉県山武郡九十九里町小関2347
電話0475・76・9957
URL: fumimaru.blue.coocan.jp
●予約乗合。第2、第4金曜定休。4時に船着き場へ集合。
●釣り座は先着順で、船宿脇の席札を取る。
●船宿アクセス:
車/千葉東金道路「東金IC」を出て国道126号を直進。
「台方IC」から東金九十九里有料道路に入り、「九十九里IC」を出て(サンライズ九十九里があるところ)、最初の信号を左折。
そのまま4kgほど直進した右側に船宿(看板あり)。
船着き場は船宿のすぐ先を左折したところ。
船の前周辺の空きスペースに駐車する。
途中にコンビニあり。
受付から下船までの流れ
①船宿脇の席札を取り、船着き場へ移動②車は船着き場近辺の空いているスペースに停められる③乗船名簿に記入してから乗船④準備をしている間に船長が生きイワシを積み込んだら出船⑤着岸後は協力して荷物を手渡しして下船⑥船の前の軽トラで会計し、釣果報告
出典:
二三丸の設備とサービス
①船の乗り降りは昇降台があるから安心②各釣り座に散水ホース③小トイレは船の前後に2カ所。大は後部キャビン内④船体前後に広いキャビンあり⑤探見丸も搭載している⑥ゴミは中身を空にして分別、バケツにまとめる⑦帰港後は軽トラに用意された水タンクで手洗いできる⑧お茶と軽食のサービスあり⑨ポイントカードのサービスも
出典:
二三丸の釣り物とシーズン
二三丸のライトヒラメ仕掛け例
釣り船予約サイト「釣割」のスタッフがオススメする釣り船はこちら!
【九十九里・銚子(千葉県)ヒラメ船】人気ランキング
【九十九里・銚子(千葉県)ヒラメ船】価格ランキング
隔週刊つり情報(2021年8月15日号)※無断複製・転載禁止