九十九里沖、いわゆる「ミゾ」と呼ばれる片貝海溝を攻めるアカムツは、良型が数釣れることで知られるアカムツの好釣り場。
ポイントは無数にあるが、遊漁で狙っているのは九十九里片貝港の正一丸だけで、出船も主に週末中心ということから魚影の濃さが保たれている面もあるのだろう。
1月中旬の取材日は、水深250~300m前後を狙い、40cm前後の良型主体に一人2~8尾。
このほかキンメやクロムツなども交じってアタリは頻繁。
外洋の釣り場だけに釣果は海のコンディションにも左右されるが、この日はまずまずのナギで潮の流れも緩く釣りやすい好条件。
いいポイントに差しかかると良型の一荷もたびたびあり、まさにアカムツの宝庫と言っていい釣れ具合だった。
春先3月ごろからは2kg級の大型が出るポイントでも釣れ始めるというから、この海の持つポテンシャルは計り知れない。
![釣行の写真]()
一荷も頻繁にあるほど片貝沖のアカムツは魚影が濃い
出典:
私が沖釣りを始めた40年近くも前の話、アカムツ釣りなんて乗合船はもちろん仕立船でもなかったように記憶する。
アラ釣り(これもマニアックな釣りでやる人は限られていた)やクロムツ釣りの折りに時たま交じって釣れる程度で、当時アカムツは幻扱いされていたものだ。
それが今や沖釣りの人気ターゲットの一つとして確立され、釣り場も数多く開拓されている。
周年釣れる魚ではあるが、夏の終わりごろから晩秋にかけてを最盛期とする釣り場が多い中、冬~春にかけて釣れ盛るのが犬吠埼沖や片貝沖。
今回は今期とくに模様のいい九十九里片貝沖のアカムツ釣りを紹介する。
![釣場の写真]()
釣り場は航程1時間半ほどの片貝沖、水深240~330m前後を狙う
出典:
ハリ数は3本までOK
エリアによってはハリ数は2本までに制限されているが、片貝沖では3本までOK。
オモリは250号、ホタルイカは船でも購入できるが持参がベスト。
バラシを減らすハリ選び
片貝沖のアカムツを狙うのは九十九里片貝港の正一丸。
釣り場は港から約18mile、航程1時間半ほどの片貝海溝で、そのカケ上がり付近の水深150~300m辺りを狙っている。
この海域でアカムツを狙うのは職漁船以外ではほぼ正一丸だけといった状態。
そのため場荒れが少なく、良型の数釣りを楽しめているが、「根絶やしにして自分の首を絞めることがないよう注意している」とは海老原正船長で、同じポイントをたたき過ぎないようにポイント選びをし、キープは一人8尾までの自主ルールも設けている。
今期は11月下旬より乗合を開始し、12月に入ると釣果が上向き、トップは規定数クリア、スソでもボウズなしなんて日が続いている。
また型もよく35cm以上がほとんどで、50cmに迫る大型も釣れている。
「そんなにいい日ばかりじゃないよ」と船長はクギを刺すが、顔を見られれば御の字のターゲットでこの釣果は夢のようなもの。
目下の敵は外洋ゆえ出船日が限られること、速潮などの海況不良だけといった状態に思えるほどだ。
竿はアカムツ専用や中深場用。
オモリは250号で置き竿も多くなることから、全長2m前後とやや長めで、グラス素材の胴に乗る調子の竿がよりベターな選択だ。
リールはPE3~4号が400m以上巻ける電動で、ダイワなら500番、シマノなら3000番クラスで問題ないが、高切れなどのトラブルに備え予備のリールや道糸の持参も忘れないようにしたい。
仕掛けは胴つき式で、3本バリまでが正一丸のルール。
幹糸8号1.3m、枝スは6号60センチが標準スペック。
捨て糸の長さは好みで0.5~1.5mほど。
「俺がやるときは50cmから1mかな」と船長。
短いとユメカサゴなどゲストが多くなるのでは?の問いには、「ユメカサゴの場所とアカムツの場所は近いけど違う。ユメカサゴが多いときには流す筋を変えるよ」とのことだ。
ハリはムツバリかホタバリでサイズは16~18号が標準。
アカムツは口がもろい部分や口膜の薄い部分があって、そんな部位にハリ掛かりすると巻き上げ中にバレることも多く、ハリ選びは重要だ。
筆者も一時期バラシが多く悩んだことがあり色いろハリを替え、現在は太地のホタバリ16号かムツバリなら18号で落ち着いた。
ホタバリは元もとバラシの少ないハリだが、細軸は口が裂けるように切れやすく思う。
ムツバリは小さいと口先に掛かることが多いため、少し大きめのハリで口奥のしっかりとした部分に掛けることを意識しての選択で、どこまで正しいかはアカムツに聞いてみないと分からないが、ゼロとはいかないまでもバラシは軽減したので、悩んでいる方は参考にしてほしい。
ハリのチモト付近をマシュマロボールやフロートパイプで装飾するのは今や常識。
この釣りから派生し、最近はムツ釣りやキンメ狙いでもマシュマロボールを見かけることもあるほどだ。
またフラッシャーバリが有効なこともあるようで、最近私もピンクや白を中心に気に入ったハリに自分で巻いて色いろと試行錯誤中だ。
エサは船にホタルイカの用意がある。
ホタルイカの使い方は1杯掛けか、胴体部分からゲソとワタ部分を抜き取って使用するツボ抜きの2通り。
1杯掛けの場合は先端部を縫い刺しに、ツボ抜き使用の場合は目と目の間にハリを刺し抜く。
ホタルイカだけでエサとしては十分ではあるが、エサ持ちをよくするのとアピール力アップ目的で、サバの切り身を持参して抱き合わせで使用する方が多い。
![ハリの写真]()
ハリ選びは人それぞれだが、太地のホタバリか大きめのムツバリがおすすめ
出典:
ONE POINT ADVICE マシュマロボールは定番アイテム
アカムツ釣りではハリのチモトをマシュマルボールやフロートパイプで装飾するのがトレンドというかもはや定番だ。
これは色や光でアピールするというのではなく(多少はその効果もあるかも?だが)、その浮力でエサの付いたハリを浮かせ、また潮の抵抗を受けて漂わせるのが主目的だ。
またマシュマロボールは発光しない「アカムツ用」とされるものがおすすめ。
発光タイプでもアカムツは食ってくるが、その前にサバやサメなど望まぬゲストが先に食ってきてしまう確率が上がるからだ。
基本は底狙い 巻き落としも効果的
掛けの投入はエサの付いたハリを船ベリに並べておきオモリを放り投げて行うか、オモリから順にハリ1本ずつを落とし込んでいってもいい。
後者の場合でもハリ数が3本と少ないので、オモリを放り投げるのとほとんど時間差はなく、投入時のエサの脱落の心配も減るので慣れない人にはおすすめだ。
仕掛けが着底したら糸フケを取り、オモリ底トントンでアタリを待つのが基本。
ポイントの海底は斜面のことも多くカケ上がり、カケ下がりに合わせて常にオモリ底トントン状態を保つようにする。
海底は泥地のことが多く根掛かりはほとんどないから、慣れた人ならオモリを引きずり気味にし、時にゼロテンションからややテンションを抜き、仕掛けをたるませ気味にしたほうが食い込みがいい場合もあるが、あまり長時間オモリを海底に着けっぱなしにしておくとオマツリの原因となる。
潮の速さにもよるが10~20秒に1回くらいは底を切るようにしたい。
またこの釣りでも巻き落としは有効だ。
ただイカ釣りのように30mも巻き上げる必要はなく、5mも巻き上げればOK。
イカ釣りの場合はイカヅノのリセット、新しい場所に仕掛けを入れるのが目的だが、アカムツ釣りでは落下するエサでアカムツにアピールするのが目的だからだ。
アタリは潮が素直ならば竿先にクッ!とハッキリ出る。
合わせは基本的に不要で、聞き上げるように竿を持ち上げ、文字どおりアタリを聞く程度でいい。
巻き上げは各自の判断で行ってOK。
アタってすぐに巻いてもいいし、い食いを待ってもいい。
私は300mも巻いて空っぽだったは嫌だし追い食いを待ちすぎてハリ外れも嫌なので、最初のアタリは見送り、2度目3度目のアタリでハリ掛かりを確信してから巻くようにしている。
アカムツは巻き上げ中にバレることも多い魚。
巻き上げが早過ぎると口切れ、遅過ぎてもハリ穴が広がったり船が波の谷間に入ったときに糸がたるんでバラシの原因となる。
私は巻き上げ表示30が最速のリールの場合、12~14の表示速度で、波の高さ、魚の重量感、潮の速さなどを加味して微調整しながら巻くようにしている。
ゆっくり巻いてもバレる魚はバレる、と強気くらいの巻き上げのほうが功を奏することが多いように思う。
キンメほどではないがアカムツも水圧変化に割と強く、海面でバレると海底に戻っていくことが多い。
仲乗りさんを呼ぶか、隣同士で声をかけ合ってタモのアシストをお願いしよう。
![釣行の写真]()
タナは底トントンが基本
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年明けの1月中旬、12月から好調が続く片貝沖のアカムツを狙って釣行した。
お世話になったのは片貝港の正一丸。
常時2隻で出船しアカムツのほかキンメ、アコウ、アブラボウズなどを看板にする深場釣り師ご用達の船宿で、この日は2隻ともアカムツで出船。
私は海老原正船長操船の1号船に乗船した。
![釣行の写真]()
良型は40cm1kg級。これ以上のサイズも潜んでいる
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アタリが多くて楽しい!
釣り場へは1時間半ほどで到着。
まだ薄暗い中、開始のブザーが鳴り「水深は150mちょっと」とアナウンスされる。
1投目からアタリが出たが、巻き上げた仕掛けは空っぽ。
一番下のハリスがチモトからスパッと切れていたからムツの歯に当たったか。
反対舷のトモ寄りではムツと本命のアカムツも上がったようだが、船長の見切りは早く、ほんの数分の場所移動となる。
流し変えと変わらぬような移動距離だったが、今度の場所は「水深260m」とのこと。
かなり傾斜のある斜面のようだ。
そして、ここでアカムツと久しぶりのご対面がかなった。
食っていたのは真ん中のハリで、自作フラッシャーバリにホタルイカの1杯掛けと持参したカツオのハラモの抱き合わせの組み合わせ。
35cm級のまずまずサイズだった。
次の流しでもいいアタリが出たが、これは巻き上げ途中でバラシ。
気を取り直して再投入した仕掛けにまたもクックッ!と竿を鋭く押さえ込むようないいアタリが出て40cm超とサイズアップだ。
ここまでの4投はほとんどが着底即アタリが出る状況。
片貝海溝のポテンシャルの高さには驚きだ。
もちろん私だけでなく周りでも順調にアカムツは釣れ上がっており、良型の一荷釣りもあったようだ。
その後は小キンメや良型のクロムツに邪魔をされたり(キロ超のクロムツ相手に邪魔というのもぜいたくな話だが)「これはデカイかも?」なんて思っていたらツノザメだったりもあったが、とにかく仕掛けを下ろすたびにアタリがあるのだからたまらなく楽しい。
あまり調子に乗って釣りばかりしていても……ということで船長に話を聞きに行く。
「いいポイントに当たりましたね」と話を向けると、「毎回流す場所を変えてるんだよ。根絶やしにするような釣りしたくないからね。あと狙っているアカムツも釣れてこないし」とのこと。
ポイントを変えながらこのアタリ具合とは驚きだが、狙っているアカムツというのも気になる。
突っ込んで話をうかがうと、「腹が黒っぽいアカムツを狙っている」という。
腹が黒光りするようなアカムツは群れていることが多く、しかも良型がそろうのでそれを狙っているそうだ。
顔を見られれば上等とも言えるアカムツなのに、そこまでこだわって狙っているとは恐れ入った。
操舵室を出て、ほかの方の釣りを拝見してから自席に戻る。
再投入した仕掛けにはまたも着底即アタリ。
余裕を見せてしばし追い食いを待ってからの巻き上げは重量感タップリだった。
上がってきた仕掛けをたぐるとアカムツの金属的なオレンジがかった紅色が浮かんでくるが、なんか寸足らず。
よく見ると下半身?をサメにかじられていた。
そして一番下のハリはハリス切れ。
切れ方からしてこちらもサメにウバ食いされたようだった。
その後も順調な食いっぷりは続き10時半に沖揚がりとなった。
1号船の釣果は一人2~8尾。
3号船も一人3~7尾釣っていて、両船合わせてボウズがないのだから、その食いっぷりを想像してほしい。
正一丸では5月くらいまでアカムツを狙っていくとのこと。
「3月くらいになるとちょっと南寄りのポイントでも食い出すと思う。そこのはデカイよ。2kg級が当たり前に顔を出すから」と船長。
これからますます楽しみな片貝沖のアカムツ釣りだ。
![釣行の写真]()
ダブルが2回あって定数の8尾を達成
出典:
![釣行の写真]()
結果は3尾でもこのサイズなら大満足
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ONE POINT ADVICE カツオのハラモも効果あり
アカムツ釣りではエサはホタルイカとサバの切り身の抱き合わせが定番だが、今回持参したカツオのハラモが意外なほどに食いがよかった。
最近スルメイカの高騰からキンメ釣りでも定番のエサとなっているが、サバの切り身のように光るわけでもヒラヒラするわけでもないので、きっと臭いと味?で誘うのだろうなと推察する。
機会があればぜひお試しを。
![エサの写真]()
(左)カツオのハラモとホタルイカ1杯掛けの組み合わせ (右)カツオのハラモも意外に食いがよかった
出典:
船宿information
九十九里片貝港 正一丸
0475・76・6024
備考=予約乗合、4時集合。希望でアコウへも出船
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隔週刊つり情報(2024年2月15号)※無断複製・転載禁止