ヨッシーこと吉岡進がエサ、ルアー釣りを問わず様ざまな釣り物にガチでチャレンジしていく連載「ツリガチ!」。
第18回は外房のスーパーライトジギング(以下SLJ)。
SLJは、40~60gの軽いジグとライトなタックルを使い、巻いたり、シャクったりして自由に楽しむことができる人気急上昇中の釣りだ。
10月下旬に釣行したのは外房勝浦川津港の不動丸。
吉清晃朗船長が向かった釣り場は御宿沖の水深20~30m前後。
ポイントに到着し、「バンブルズジグTGSLJ」40gをタダ巻きするヨッシーにアジがヒット!
これを皮切りに船内のあちこちでアジが上がる。
その後はマダイのフィーバータイムに突入し、0.5~1kg級のマダイが次つぎと釣れ上がる。
後半はイワシ団子を発見。
ソウダガツオやシイラが回遊し、チャンス到来。
キャスティングでルアーが届けば食ってくる活性の高さでトリプルヒットとなり、エキサイティングなゲームが繰り広げられる。
終盤になると勝浦沖の水深20~30mのポイントへ移動、これまで釣り上げていない根魚を狙って底をていねいに探るとカサゴやキジハタが釣れ、ラストはアカヤガラまで顔を見せ船上は大いに盛り上がった。
今回は、専用ロッドとジグのほかにテールスピンジグ「バンブルズ バイトビーンズTG」という新たな武器を携え、秋の外房でSLJを満喫したヨッシー。
詳しくはこのあと。
不動丸はタイラバもOK。45gのタイラバでマダイを4枚上げた
出典:
Profile
よしおか すすむ
1982年生まれ。
ヨッシーの愛称で親しまれている。
一つテンヤマダイ、ライト系オフショアルアーを得意とする。
ジャッカルソルトプロスタッフ、シーガーインストラクター。
バンブルズバイトビーンズTGのタダ巻きでマダイを手にした
出典:
SLJの釣り方イメージ
様ざまな魚を狙えるのがSLJ。
ハタ類やカサゴなどの根魚狙いは、底付近で魚にじっくりとジグを見せるイメージでスローに誘う。
反応がなければワンピッチジャークで宙層にいる青物狙いに切り換えたり、タダ巻きでマダイを狙ってもいい。
イサキはフォールで食ってくることもあるので投入時も集中しよう。
タダ巻きは1秒間にリールのハンドル1回転。ワンピッチジャークは1シャクリでハンドル1回転
出典:
SLJタックル
しっかりと曲げてファイトを楽しみたいのであればSLJ 専用ロッドが最適。
軽くて扱いやすく、ジグのコントロールも容易だ。
オープニングは、暗い音楽が流れている(頭の中で)。
短調の不吉な曲が、悲哀をかき立てる。
外房勝浦川津港の不動丸で、スーパーライトジギング(SLJ)に挑むツリガチ取材班だが、前日までは大シケだった。
外房の海には大きなウネリが残っている。
吉清晃朗船長も「昨日は船を出してないから、海の様子が分からなくて……」と、少しばかり弱気である。
澄み切った紅色の朝焼けが気持ちいい朝だったが、ヨッシーこと吉岡進プロを始め、釣友のイチロウこと鹿島一郎さん、トモキこと板倉友基さん、そしてライターのタカハシゴーは、重い足取りで不動丸に乗った。
10月27日午前6時、不動丸が港を離れる。
見送ってくれたおかみさんの元気な笑顔とは対照的に、ツリガチ取材班は不安いっぱいだった。
基本的に、SLJはよく釣れる釣りだ。
「船でのルアー釣りの中では、最もアタリが多いんじゃないかな」と、ヨッシーも言う。
「ターゲットを絞り込むことが多い船のルアー釣りだけど、SLJは、その場にいるフィッシュイーターをすべて狙うフリースタイル。根魚から青物まで幅広く狙うから、アタリが出やすいんだ」
ジグを落とし、着底させ、底付近はネチネチとゆっくり誘って根魚のアタックを待ち、宙層から表層にかけてはスピーディーなワンピッチジャークで青物をその気にさせる。
ジグは40~80gが中心と軽く、それに合わせて竿はライトでリールも小型だ。
シャクリの動作もラクチンで、ビギナーはもちろん、腕力に自信のないアングラーでも楽しめる。
当日の釣り場は御宿~勝浦沖の水深20~30m前後
出典:
バチコンじゃないよ SLJ 落として巻いてアジゲット
「ズバリ言ってしまえば、SLJならヘタッピでも釣れる。そのことを証明しているのが、だれあろう、このオレだ」と、タカハシゴーが力強く言う。
30分ほどで到着した御宿沖の水深20mほどのポイントは、海水がトロリとした緑色で、かなりの濁りだ。
やはり前日までのシケの影響は大きい。
匂いや味でアピールできないルアー釣りの場合、濁りは大敵だ。
魚がジグを目視できないことには、話が始まらないからだ。
もちろん、澄み過ぎてルアーを見切られるのも問題だが、とりあえず目の前の海水は濁り過ぎている。
「マズイ……」と焦り、しかめ面のヨッシーを横目に、濁りのヤバさにさえ気づかないタカハシゴーが、語り続けている。
「自他ともに認める『永遠の初心者』であるオレでさえ、SLJでは何かしら釣って帰ってるからね。ホント、ヘタッピにも優しい釣りなんだよ」
あまりの濁りから逃げるように吉清船長がポイントを変えた直後、「あっ」と短い叫び声をあげたのは、だれあろうタカハシゴーその人であった。
釣り開始から25分ほどたった午前6時55分、不吉な予感を打ち破る最初のアタリである。
(架空の)BGMが一転して明るい長調に変わる。
「お~っ! ゴーさん!! バラすなよ、バラすなよ~」とヨッシーが声をかける。
最初のアタリは、なんとしてもモノにしたい。
強ばった面持ちで慎重にヤリトリするタカハシゴー。
船長を含め総員が海面をのぞき込むなか、キラリとした輝きを放ちながら顔を見せてくれたのは、アジだった。
「やったじゃん!」と、タカハシゴー以上にガチで喜ぶヨッシー。
アタリがあり、魚が釣れるということは、かくもシアワセなことなのだ。
「着底して、ゆっくりと2~3回巻いたところで食ってきた」とタカハシゴー。
SLJならヘタッピでも釣れることを、身をもって再証明して見せた。
タカハシゴーの1尾目を皮切りに、不動丸はアジフィーバーに沸いた。
釣れる、釣れる!
外房でアジがこれほど豊かに釣れることにも驚きだが、それがなんとエサではなくジグなのである。
SLJのポテンシャルの高さを思い知らされる。
ヨッシーはSLJの本命と言ってもいいイサキを釣り、大満足……かと思いきや、意外にもその表情はやや曇りガチだった。
朝イチはアジのラッシュに突入
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アジを狙っているとイサキも釣れた
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アジがいなくなりチャンス到来 マダイタイムに確変突入
「考えてみてよ」とヨッシー。
「アジは、どちらかと言えばフィッシュイーターに食われる側の魚。そのアジがこれだけノビノビとジグを食いにくるということは……」
……ハッ!
アジが釣れて満面の笑みだったツリガチ取材班の表情が、一気に引き締まる。
そう、アジを狙うような根魚や青物がいない、ということだ。
もしくは存在していても、食い気がない、ということ。
つまり、我われツリガチ取材班のジグにアタックしてくる可能性は低い、ということだ。
「今はアジの『おやつタイム』。襲われる心配がないから、のんびりとジグを“おつまみ”にして楽しんでる状態だよ」
若干落胆の表情を見せるツリガチ取材班に、ヨッシーが明るく声をかける。
「でもさ、それはそれでいいじゃない。SLJはフリースタイルが楽しめる釣りなんだから、今釣れる魚を釣ろう!」
そうだそうだ!
感化されやすいツリガチ取材班の士気が高まる。
アジだって立派なターゲット。
釣り上げられるアジは黄金色で丸まるとしており、いかにもおいしそうじゃないか。
それに、SLJでのアジ攻略法を考えるのも楽しい。
「アジの捕食スタイルは、吸い込み系。だからジグが変な動きをしていると、うまく食いつくことができないんだ。できるだけ糸フケを出さないようにして、ゆっくりと直線的に動かしてやるといいよ」
ヨッシーのレクチャーどおりのアクションで、アジがバタバタと釣れる。楽しい……。
と、(架空の)BGMがいきなり緊張感の高い曲調に変わった。
映画「ジョーズ」の、あの音楽のようだ。
そう、パタリとアジが釣れなくなったのだ。
「これは……チャンスかもしれないよ」とヨッシー。
不意に静まり返った外房の海。
何かが起こる予感。
「キタッ!」
叫んだのは、トモキだ。
大きく曲がった竿が、カンカンカンッという硬い引きでたたかれる。
「おっ、マダイじゃないの!?」
ヨッシーの叫び声のとおり、上がってきたのはマダイだった。
トモキはこっそりとタイラバにスイッチしており、見事に釣果に結びつけた。
その直後、イチロウもビンビンメタルTG40gでマダイを上げる。
トモキもイチロウも、アクションはタダ巻き。
アジのアタリが遠ざかったことで、「マダイのチャンスあり」と読んでの作戦変更が功を奏した。
「よし、巻きか」と、ヨッシーもそれまでのバンブルズジグTGSLJから40gのバンブルズバイトビーンズTGに変更した。
ルアーのテールにブレードを装備した、新しいSLJ用ルアーだ。
そして2投目、「キタよ!」と顔をほころばせると、見事にマダイをゲットしてみせた。
40gのマダイ用ジグに交換し、タダ巻きで食わせた
出典:
イワシ団子でキャスティングゲーム エキサイティングな青物ラッシュへ
吉清船長のアグレッシブな操船で、まだウネリの残る外房の海を不動丸が駆ける。
ポイントを変えても、アジがよく釣れる。
そして再びパタリとアジの食いが止まった直後、トモキの竿が大きく曲がった。
「なんだこれ……!」
すさまじい引きだ。
ライトなタックルだから、大きく曲がった竿がワクワクさせてくれる。
これはガチファイトになるぞ!
パンッ!
竿が跳ね返った。
トモキが苦い表情になる。
ラインブレイクだ。リーダーがブッツリと切られてしまっていた。
「残念!たぶん良型のマハタかな……」とヨッシー。
それにしても見事なまでに、アジの食いと、そのアジを狙うフィッシュイーターたちの食いは連動している。
フィッシュイーターたちがいない、もしくは沈黙しているときはアジが元気で、アジが沈黙するとフィッシュイーターがジグにアタックしてくる。
海の中の様子が手に取るように分かり、それだけでも面白い。
「イワシ団子だ!」
だれともなく叫び声があがる。
海面には半畳ほどのイワシ団子が見え、そそくさといった様子で移動している。
「投げろ、投げろ!」
バシュッ!
ジグが飛ぶ。
ギュンッ!
竿が曲がる。
食ってきたのは、ソウダガツオとシイラだ。
ハデで元気なシイラが、夏の名残を感じさせてくれる。
ペンペンサイズだったが、SLJのライトタックルだとその引きは相当にダイナミックだ。
船の下をシイラ艦隊がハイスピードで通過していく。
イワシ団子が見えなくなるまで、ツリガチ取材班を楽しませてくれた。
アジ、イサキ、マダイ、イワシ団子、ソウダガツオ、シイラ、そしてトモキのリーダーをブッちぎっていった謎の大物……。
すでに出来過ぎだ。
SLJらしい豊かなバラエティで、十分に満足している。
だが、ぜいたくなツリガチ取材班には、若干の不満があった。
「根魚、釣れてないよね……」
トモのお客さんがカサゴを釣っていたが、ツリガチ取材班に根魚はゼロ。
SLJのメインターゲットと言ってもおかしくないのだが……
猛スピードでルアーにアタックしてきたシイラ。小型でも引きは強烈だ
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ジグで底をトントンたたいてカサゴをゲット
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あとは根魚がほしいところ 最後の流しで奇跡のドラマが!
「はい、そろそろ時間がきましたんでね。これで最後の流しにしましょうか」と、吉清船長がアナウンスしたのは、午前11時30分ちょうどのことだった。
「最後の流し」という言葉に人並み以上の反応をするのが、タカハシゴーである。
締め切りになると気合が入るライターの性さがか土壇場になって本気を出す。
「ぜってぇ根魚釣りたい」と、「底ネチネチ」に徹する。
彼のつたないイメージでは、底から2メートルあたりをジグが横に泳ぐようなアクション、を、しているつもりだ。
そして最後の流しという緊迫感は、奇跡によって打ち破られた。
タカハシゴーの竿がヒン曲がったのである!
「うおおっ、ゴーさんやっちゃったんじゃないの!?」
またしても本人以上に喜びの雄叫びをあげるヨッシー。
「う、うん……」
根元まで竿が曲がり、タカハシゴーに余裕はない。
最後も最後。そして、根魚っぽい引き。
これはバラせない……。
慎重に慎重を重ねたヤリトリをして、吉清船長のネットに収まったのは、まさかのキジハタだった。
大コーフンのルツボと化した不動丸であるが、その直後にトモキが再びタイラバでマダイを釣る。
さらにヨッシーの竿までもブチ曲がり、60gのバイトビーンズをスッポリと食ってきたのはアカヤガラだ。
「いやぁ、ものすごいフィナーレだったね」と、心から満足げなヨッシーである。
「SLJは、竿が曲がる瞬間が最高ですよ!」と、吉清船長も満面の笑みだ。
映画だとしても、こんなにも濃密で、こんなにもエキサイティングで、こんなハッピーエンドもそうはない。
外房の海が見せてくれた5時間半のドラマは、こうして実に劇的に幕を閉じたのだった。
最後の流しでアカヤガラを釣り上げて有終の美を飾る。ヒットルアーはバンブルズバイトビーンズTG60g
出典:
船宿インフォメーション
外房勝浦川津港 不動丸
0470・73・5538
◆備考=5時集合、集まり次第出船。ほかスルメイカへも出船。
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隔週刊つり情報(2022年12月1号)※無断複製・転載禁止